雑談の時間
社会人1年目のとき、
高校生や学生と関わる機会が多い部署に所属していた。
本題の仕事はそっちのけで、10代の彼ら彼女らとたわいもない話をよくした。
最近、学校で流行っていること
将来への不安
進学や就職のことなど。
親や先生には言いにくい将来の夢を、その日たまたま会った第三者のわたしに話してくれる子も多かった。
身近な人と違って、現実を見て批判するわけでもないから、話しやすかったのかもしれない。
「かわいらしい人柄だ」「ピュアだな〜」なんて思いながら呑気に話を聞いていた。
23歳のわたしはアドバイスできるほど大人になりきれていなくて、質問を受けても大した回答は用意できなかった。
それでも仕事のあいまに交わす、自分より年下の子たちとの会話は楽しかった。
やりたいことがある人の目には力がこもっていて、これから何にだってなれるエネルギーが溢れている。
話を聞きながら、わたしのほうがパワーをもらっていた。
会社の先輩や上司にこう言うと怒られそうだけれど、仕事よりも彼らとの雑談に時間を割いていた。
その1年間に仕事で出会った学生の数は100人を超える。
部署が変わって学生と話す機会がなくなってからも、別の仕事で成長した彼らとたまたま再会することがあった。
たとえ名前を忘れていても、顔をみたら何の話をした子なのかすぐに思い出せる。
たった数十分、数時間しか会っていないというのに。
部活動に打ち込んでいた子が希望の学校に進学していたり、1年生の時に会ったと思っていたのにもう就職先が決まっていたりと、近況を聞くのは楽しかった。
教え子と再会する先生は、こういう気持ちなんだろうか。
仕事で大きな結果を残すことよりも、こうした再会の方が100倍うれしい。
図々しいけれど、教え子を持ったような、何にも変え難い貴重な時間を過ごさせてもらった。
すっかり忘れていた社会人1年目のことを思い出したのは、今年、ひょんなことから学生との再会があったから。
会社を辞め、引っ越しもしたというのに、どこに縁が転がっているか分からない。
古本市の運営を手伝うことになり、顔合わせのためにzoomで打ち合わせをした日、見覚えのある女の子が画面に写っていた。
顔を見たらすぐに「あの子だ!」と分かった。
社会人1年目で右も左もわからなかったころ、先輩社員に連れて行ってもらった団体で、当時大学生だった彼女はてきぱきと動いていた。
しっかりものだからメンバーからも頼りされていて、わたしも分からない点があるとついつい頼りにした。
一緒になにかをすることになるなんて当時は思いもしなかったから、zoomで見つけたときはびっくり。
「そうか、もう社会人なのか!立派になられて〜」
親戚のおばさんみたいなひとりごとを心の中で呟く。
あのときの仕事がこんなプレゼントになって返ってくるなんて。
23歳のわたしに教えてあげたい。
「仕事より、雑談を大切にしていいんだよ」って。
仕事のやり方も分からず、もがいていた自分が懐かしい。
そう思えるようになった。
高知暮らしの日々のつれづれを綴る #高知の歩き方
なんでもないわたしの日記エッセイです。
田舎を楽しむヒントをおすそ分け。
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