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【秋田の大学生が発信!R6.Vol.3】見て楽しい!作って楽しい!使って楽しい!曲げわっぱの魅力
私たち秋田大学地域連携ゼミの実習生が、ゼミ活動の一環として、学生の視点で気になる秋田の人やスポットなどを取材し、秋田暮らしの魅力について情報発信していきます!
令和6年度『秋田の大学生が発信』の記事は、今回が最終回となります。
最後の取材先は、秋田県大館市で曲げわっぱの製作、販売を行う有限会社柴田慶信商店わっぱビルヂング店です。
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皆さんは、『曲げわっぱ』を知っていますか?
曲げわっぱとは、薄く加工した木材を特殊な技法で曲げて作られる伝統的工芸品です。
伝統的工芸品と聞くと、なんだか敷居が高い感じがするな…という人もいるかもしれません。実は取材をする前まで私もそう思っていました。
しかし、曲げわっぱには毎日の生活を彩る素敵な魅力がたくさんあるんです!
普段から曲げわっぱを使う習慣がある人もない人も、地域の伝統的工芸品のすばらしさをあらためて実感してもらいたい!と考え、柴田慶信商店を取材させていただきました。
今回の取材を通して発見した、曲げわっぱの魅力を沢山お届けします。
秋田の伝統的工芸品 曲げわっぱ
取材に応じてくださったのは、柴田慶信商店 代表取締役・伝統工芸士の柴田昌正(しばたよしまさ)さんです。柴田さんの父である創業者の柴田慶信さんから技術を受け継ぎ、幅広く活躍されています。
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●柴田さんが考える曲げわっぱとは何ですか?
曲げわっぱは、コミュニケーションをとるツールのひとつだと思います。
たとえば、お弁当箱は、お弁当を作る人、食べる人、それぞれが言葉を介さずとも相手を思いやる気持ちを持つことができます。子供がお弁当を全部食べて帰ってくると「今日は調子が良かったのかな」と分かったり、お弁当を食べていた人が今度は自分が作る側になると、毎日お弁当を作ってくれた人への感謝の気持ちを持つことができたりと、言葉以外のコミュニケーションが生まれます。
また、「今日は何を食べたい?」、「今日のお弁当すごくおいしかった」など、お弁当箱がきっかけで会話が生まれ、毎日の暮らしが充実する道具だと考えています。
●曲げわっぱの特徴は何でしょうか?
曲げわっぱは食品の余分な水分を吸ってくれるので、ごはんが冷めてもおいしいですし、傷みにくくなるのが特徴です。また、曲げやすい木材の選定や材料の重なる部分の剥ぎ取りなど細かい工程を重ねて作られる工芸品であり、完成品を手にしてみると職人の手技を目や肌で実感できます。最近は、弁当箱やタンブラー、コーヒーカップなど、曲げわっぱの熱しにくく冷めにくい特徴を生かした商品が人気です。
●商品のPRはどのように行っていますか?
最近ではSNSが普及し、誰もが簡単に自分の暮らしを発信できるようになったことで、道具にこだわりを持つ人が曲げわっぱを暮らしの中に取り入れてくれることが増えたと感じています。
そこで、商品のPRや曲げわっぱの魅力をSNSで発信する活動にも力を入れています。
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製作体験での学び
今回の取材では、弁当箱、パン皿の曲げわっぱ製作を体験させていただきました。木槌(きづち)、鉋(かんな)など本格的な道具を使用したり、曲げわっぱ製作に欠かせない「曲げ」や「樺綴じ(かばとじ)」を行ったりと、職人の手技を実際に体験することができました!
こっちゃけ公式インスタグラム(@kocchake_akita)では、製作体験の様子をリール動画でご紹介しているので、ぜひ併せてご覧ください!
細かい作業が多く、苦戦した場面もありましたが、ひとつひとつの工程に先人の知恵が詰まっており、柴田社長からアドバイスやコツを教えていただき、自分の手で曲げわっぱを完成させることができました。
実際に使用してみると、お弁当箱はごはんが冷めても固くならずおいしままで感動しました。また、パン皿にトーストを乗せると、蒸気を皿が吸収して最後まで焼きたてのサクッとした食感を楽しめました!
使うたびにこの体験を思い出して感慨深くなりますし、これからもっと使い込んでいくことが楽しみです。
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実際に出来上がった作品がこちら↓
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●柴田慶信商店で製作体験を始めたきっかけは何ですか?
以前は大館曲げわっぱ協同組合で一般の方向けの製作体験を実施していましたが、職人の数も減り次第に組合に所属する各社で行うようになりました。そこで、大館駅前で空きビルになっていたこの場所で、曲げわっぱの魅力を伝えたい、誰でも製作体験ができる場所を作りたいと思ったのがきっかけです。
なお、大館市では、地元の小学生が曲げわっぱのお弁当箱を作り給食に使うなど、郷土の工芸品を自分で作り使うことで、郷土愛を育む取り組みを行っており、その取り組みへの協力などもしています。
●製作体験は、どのようなお客様が多いですか?
製作体験を行う時期や場所によって、お客様の特徴に違いがあります。
秋田での製作体験は、県内の観光を兼ねて来てくださる方が多いですが、東京で製作体験を行ったときは、夏休み期間ということもあり、夏休みの宿題にしようとするお子様連れのお客様が多く来てくれました。関東、関西の催事場での実演販売では、自社商品のリピーターや、実際に曲げわっぱを使っている人が多く来てくれており、キッチン用具の質を高めたいと感じる人、暮らしにこだわりを持っている人などが多いのではないかと考えております。
●製作体験活動で印象に残っている出来事があれば教えてください。
以前、大阪で曲げわっぱ製作のワークショップを開いた際に、関西のお客さんの笑いツボを探るのが難しいと感じました(笑)一人で黙々と曲げわっぱを作るのではなく、作り方を教えるために作業を言語化することは、自分自身の成長にもつながります。「コミュニケーション」は伝統工芸士にとって非常に大切な要素だと感じます。
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人をつなげる曲げわっぱ
●伝統工芸士を目指したきっかけは何ですか?
父が伝統工芸士であったこともあり、私は幼いころからモノ作りに触れて育ってきました。いつもニコニコと楽しそうに曲げわっぱを製作する父の姿を間近で見てきたことで、「大人になったら柴田慶信商店を継ぎたい」という気持ちが自然と生まれていました。
●柴田さんの今後の目標を教えてください。
わっぱビルヂングでは、海外からのお客さんが来てくれたり、国内からもたくさんのお客さんが製作体験に訪れてくれたりと、多くの人たちに曲げわっぱに触れていただいています。これからは曲げわっぱのために多くの人が秋田県まで来てくれる、という状況をつくっていくことがとても重要なことであり、ここにしかないものをいかに磨いて、訪れてもらえるようにするのか、ということが今後の課題です。
そのために、伝統的工芸に関する情報を積極的に発信したり、他の工芸品とのコラボを企画したり、新たな挑戦をしていき、日本にとどまらず、海外にも広く展開していきたいと考えています。
若者へのメッセージ
●最後に、これからの秋田を担う若者へのメッセージをお願いします。
限られた時間を大切に、様々なことに挑戦して豊かな時間を過ごしてほしいですね。
社会に出ていくうえで都会とのつながりは欠かせないものですが、生まれ育った場所である秋田県を大切に思う気持ちを忘れずに、楽しみ方を模索してほしいと思います。
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今回は、柴田慶信商店代表取締役の柴田昌正さんにお話を伺い、秋田の伝統的工芸品である曲げわっぱの魅力に触れることができました!
インタビュー取材で訪れたわっぱビルヂングには、柴田慶信商店のほか、コーヒーや季節のスイーツを楽しめるS.witch café、シェアオフィスやコワーキングスペースとして利用できるMARUWWAの3つのテナントが入っており、「伝統」×「食」×「交流」の3つの機能を掛け合わせた地域のにぎわい創出の場となっています。
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大館市を訪れた際は、わっぱビルヂングで曲げわっぱの魅力に触れてみてはいかがでしょうか?(製作体験は要予約)
〇3回の取材・発信をしての感想・学び
【秋田の大学生が発信!】の令和6年度の取材・発信はこの投稿が最後です。実際に取材を行った地域連携ゼミのメンバーから、取り組んでみた感想や感じたことなどを聞きました。
「この活動を通して、20年以上ずっと秋田で生活していた自分でも知らなかった秋田の魅力をたくさん発見することができました。もっと秋田を知りたいと思うきっかけになった活動でした。」(N.F)
「秋田のために頑張っている方々にインタビューさせていただいたことで、刺激をもらいました。私も今後、秋田の魅力を発信し、大好きな秋田のために働きたいと強く思いました。」(M.K)
「秋田の魅力を深堀りし、より多くの人に秋田っていいなと思ってもらえるように活動できたと思います。これからも秋田のことをたくさん知って、魅力を発信していきたいです。」(R.S)