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アウトプットが下手な人間の少しの挑戦の話

 何度目かの転職活動中だが、今回の転職は本当にうまくいっていない。休んでいる期間が長くなりすぎたことによって働きたくない気持ちがどんどん大きくなっていて、それがスケスケなんだろうなと思う。
 今回の転職期間に入ってから3社面接を受けた。書類審査は通る。でも面接がダメ。昔からそうだったけれど、アウトプットが下手すぎると感じる。特にしゃべって言葉にすることが本当に苦手だ。
 そうは言っていても、失業給付の終わりは見えかけている。どんどん導火線が短くなって爆弾に着火する日が近づいている気分だ。そう思う一方で、求人票を眺めては選り好みしている自分がいる。

 無職で時間はたくさんある。
 図書館に頻繁に通うようになった。今までどこか恥ずかしい気がして手に取らなかった自己啓発系やハウツー系の本など、気になったものをどんどん借りている。自分の家の本棚に並べたくはないけど知識は得たい。

 で、面接落ちまくりの現状を変えなければいけない、自分のアウトプット力を向上させなければいけないと思い、『アウトプット大全』なる本を手に取って読み始めた。
 まだ第2章を読んでいる最中だけれど、アウトプットがいかに大切かが書いてある。(そりゃそうだ)
 人は大体インプット過多で、特に日本人はアウトプットするのが苦手らしい。
 確かになあ。
 アウトプットが苦手だから避ける→経験を積めない→経験が少ないから上手くならない→上手くないから自信が持てない→苦手! なんてことは本を読まなくても自明の理だ。

 そんな折、好きな本を持ち寄って紹介し合う催しが知っている本屋で開催されるとの情報を得た。
 行ってみたい。本が好きで好きな本について話をする知り合いが欲しい。
 でも読んだ本の内容を紹介するなんてやったことがないし、そもそも読んだ本は内容をどんどん忘れてしまうし、人前で話するの苦手だし、でも本好きの人と出会ってみたい……
 数日間悩んだのち、本屋に予約の連絡を入れた。

 当日は時間が迫るにつれて緊張が幕を張り、少しずつ頭が痛くなってくる。空で紹介できるはずもないから(そんなことをしたらもっと緊張して頭が爆発してしまう)、何を話したいかまとめてみる。紹介する本はすぐに決まった。昔読んだ本は一から読み直さないといけないくらい覚えていないから、今まさに読んでいる本にするしかない。(『アウトプット大全』ではない)
 あの内容も面白かったよな、この言葉印象的だったな、ここ読んだときこう感じたよな。本をペラペラ振り返りながら、どんどん増えていきそうなあんちょこをなんとか納得いく内容に収め、本屋へ向かった。

 会はつつがなく進行し、結果、読みたい本に選んでもらうことができた。

 自分の番が回ってくるまで、緊張で頭が痛いし、まばたきは増えるし、手の置き場が定まらないし。他の人が紹介している本の内容を理解しようとする力と、自分が持ってきた本をどう紹介するか最終調整する力が押したり引いたりしているのが分かってクラクラした。
 いざ自分の番。話そうと準備したあんちょこの全部は話せなかった。案の定声は震えた。

 でも、自分が面白いと思った本を、目の前で興味を持って聞いてくれている人がいる。
 今まで、人前で話したら声が震えて終いには泣いてしまうぐらいにぐちゃぐちゃになってばっかりだったけれど、今日は自分でも及第点だと思える発表ができた。
 しかも選んでもらえたのだから、本だけでなく自分までも認めてもらえたような気分だ。これはいわゆる「成功体験」というやつだろうか。

 帰り道、静かな興奮と、ピークを超えて少しずつ晴れていく緊張を感じた。

 自分が紹介した本を一層好きになったし、これから先、また次に紹介する本を探しなが読書していける楽しみができた。
 もちろん、『アウトプット大全』の残りも読みます。

 同じものが好きな人と知り合いたいという目標も達成されて、一歩踏み出した自分を褒めたい。これが次の職探しに繋がっていけばなおいいんだけどな。

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