染みついた習慣
一人暮らしが長くなっても、抜けない習慣がある。
自分で「これは実家にいた頃に染みついた習慣だな」と身に覚えがあることが2つあって、1つは、着なくなった服のボタンを全て取ってから捨てること。もう1つはベルマークがついていたら切り取ること。
着なくなった服を捨てる前に、ボタンを全て取りはずす。白っぽいものと、黒っぽいあるいは色付きのものとを分けて小瓶に集めている。
このボタンを取る習慣は母がやっていたことで、5人分の家族の服を修繕したりするときに役立っていたのだと思う。
一人暮らしの部屋で小瓶に集められたボタンはどんどん窮屈になっていく一方で、そこから何かに使われることは年に一度あるかどうか。それなのに、この先ずっと瓶の中に詰まっているだけかもしれないのに、切り取らずに捨てることができない。
ベルマークも同じように、食品のパッケージなどから切り取られて小箱に収まっていく。はじめの小箱では入らなくなって一回り大きな小箱に移し替えられた。不定期に増えていくベルマークをどうする予定もない。
実家にいた頃は家族全員が、ベルマークを見つけたら切りとるべしという暗黙のルールになっていた。しかし、やっぱりどこかに寄付する目的で集められていた訳ではなかったのでどんどんと貯まっていき、箱にぎゅうぎゅうと押し込められ続けていた。
そうそう。
こうしてベルマークを切り取る習慣について書いていて思い出した。
あるとき、生徒会の発案でクラスごとにベルマークを集めるという取り組みが始まったことがあった。
「今こそは!」と自宅で寿司詰め状態になっていたベルマークを持参したときには、その圧倒的な量にざわつかれてクラス内でちょっとしたスターになれたし、結果、全学年の中からぶっちぎりで優勝クラスに選ばれることとなった。(賞品として金のちりとりが贈呈された気がする)
実家から離れて暮らして長くなるのに、ボタンとベルマークを切り取る習慣は抜けない。
小瓶と小箱の中に少しずつ貯まっていき、部屋の少しのスペースを占拠しているそれらが、いつかどこかで役に立つ日は来るのだろうか。