これだけは知っておいて欲しい「マインドのカラクリ」
前回の記事では、
認知科学に基づくコーチングとは何か?
実際にどんなことをするのか?について、その概要を説明しました。
この記事では、”これだけは知っておいて欲しい”「マインドのカラクリ」(人間の認知の振る舞い)について、5つ解説していきます。
これらの基本的な考え方に触れることで、認知科学に基づくコーチングについて、より深く理解いただけるはずです。
エフィカシー:ゴール達成に最も重要なもの
まず1つ目は「エフィカシー」です。
エフィカシーとは一言でいうと、「設定したゴールを達成する能力の、自己評価」のことです。
少し立ち止まって考えてみていただきたいのですが、何かゴールを設定した時、普通なら、いま持っている様々なリソースに着目して、できるかどうかを考えますよね。
でも、実はこれ、「エフィカシー」が低い状態なのです。
逆に、「エフィカシー」が高い状態というのは、何かゴールを設定した時に、現状のリソースに一切縛られず、「やり方は分からないけど、やれる気がする!」という状態のことです。
もう少し掘り下げて、どういう状態かというと、注目する先が「現状のリソース」ではなく「未来のゴール世界」の方に向いている、ということです。
これは、ゴール世界の”臨場感”が高い状態とも言えます。
成功している起業家を思い浮かべていただきたいのですが、その多くは、何も手元にない状態からビジョンを描いて、スタートしていますよね。それがまさに、「エフィカシー」が高い状態です。
そして、コーチングでは、コーチと一緒にゴール設定をして、その”臨場感”を高めていくので、結果として「エフィカシー」が高まる、ということになります。
RASとスコトーマ:ゴールへの道筋が見える脳の仕組み
次に、2つ目の「RASとスコトーマ」です。まず「RAS」から説明します。
「RAS」というのは、”Reticular Activating System”の略で、日本語では「脳幹網様体賦活系(のうかんもうようたいふかつけい)」という小難しい名前が付いているのですが、簡単に言うと、「脳のフィルタリング機能」のことです。
人間の脳は、外界の情報/刺激によって情報処理の計算量が爆発しないようにするため、自分の興味ある情報だけをフィルタリングする機能をもっているのです。
たとえば、
身の回りの赤い色だけに注目しようと決めると、赤いものだけが目に飛び込んでくる
筋トレを始めると、筋肉質な体型の人たちが目に飛び込んでくる
気になる商品があると、街の中でその広告が目に飛び込んでくる
などが、「RAS」が働いている例です。
次に「スコトーマ」ですが、これは「RAS」の働きによって、逆に捨てられてしまった情報(実際には存在するのに見えていない情報:心理的な盲点)のことを指します。
先ほどの色の例だと、赤色に注目している間は、普通、青色は目に入らない、ということですね。
これを現状とゴールの話に置き換えると、コーチングを通じて、本音の欲求に基づいたゴールを設定することで、「RAS」が書き換わって作用し、ゴールに関係する情報が飛び込んでくる、ということになります。
つまり、現状では「スコトーマ」で見えていなった、ゴールに関係する情報が、どんどん見えてくるようになる、ということです。
コンフォートゾーン:パフォーマンスの”限界”を決める
次に、3つ目の「コンフォートゾーン」について説明します。
言葉としては聞いたことがある方も多いのではないでしょうか?
我々の身体の特徴として、「ホメオスタシス」と呼ばれる恒常性維持機能があります。
これは、我々の生存に必要な、一定の安定した状態を、無意識で身体が維持しようとする、という働きです。
たとえば、体温を例にとると分かり易いのですが、平熱が36.5度の人が、サウナなどの高温環境に行けば、高熱にならないように汗を出して平熱を維持しようとしますよね。
逆に、寒冷地などの低温環境に行けば、鳥肌や震えによって平熱を維持しようとします。
これが「ホメオスタシス」であり、それによって維持される安定状態のことを、「コンフォートゾーン」と呼びます。
そして、この「ホメオスタシス」と「コンフォートゾーン」は、身体だけでなく、我々のマインドにも存在しているのです。
つまり、我々のマインドにも、「できるだけ現状の安定した状態を維持したい!」という、強い力が働いているということです。
この現状維持の力は実に強力で、これが我々が変わりたくても、なかなか変われない理由であるとも言えます。
コーチングでは、セッションを通じて、ゴール側の”臨場感”を高めることで、「コンフォートゾーン」を未来側にずらす、ということをやっていきます。
そして実は、これが「モチベーション」の正体なのです。
「モチベーション」って、いかに高めるか?みたいなことがよく言われますよね。
しかし、認知科学の考えでは、「モチベーション」とは、この「ホメオスタシス」の働きのことを指します。
つまり、「コンフォートゾーン」がゴール側にずれていれば、現状とのGAPから「モチベーション」が生まれる、ということです。
セルフトーク:自己イメージを通じてコンフォートゾーンを形成する
次に、4つ目の「セルフトーク」について説明します。
「セルフトーク」というのは、簡単に言うと、脳内での独り言のことです。
少し内省していただくと分かると思うのですが、人は一日中、自分の中で自分に対して何かを話しています。
その回数は、1日3~5万回とも言われます。そして、この膨大な数の自分自身への語りが、自己のイメージを決めており、先ほど説明した「コンフォートゾーン」を作り上げています。
そして「セルフトーク」によって形成された「コンフォートゾーン」は、その人の行動を決め、人生を決めています。
つまり、この「セルフトーク」をうまくコントロールすることで、人生変わっていくということですね。
そのためにもゴール設定が必須なのですが、コーチングでは、ゴールに向けて、ネガティブな「セルフトーク」はカットするようにしていきます。
さらにポジティブな「セルフトーク」でも、特に未来のゴールに向けたものにフォーカスできるようにしていきます。
バランスホイール:ゴール世界の臨場感を高める
そこで重要になってくるのが、最後の5つ目に紹介する「バランスホイールでのゴール設定」です。
コーチングでのゴール設定というのは、この図のように、趣味や仕事だけでなく、人間関係や社会貢献、学習、家族、健康/美容、ファイナンスのことまで、オールライフで設定していきます。
それぞれの定義は、以下の通りです。
仕事:誰かの役に立つこと。お金を払ってでもやりたいこと。
趣味:誰の役に立たないこと。自らの本音の欲求そのもの。
人間関係:友人になりたい人々。仕事で関係を築きたい人々。
社会貢献:自らの当事者意識の外側に貢献すること。
知性:仕事あるいはその他の領域における生涯学習。
家族:家族に対するあり方。自らの家族に対してどのような存在でありたいか。
健康/美容:バランスホイール全体に必要な健康/美容の状態。
ファイナンス:バランスホイール全体に必要なお金を稼ぎだすこと。
これらを満遍なく設定することで、24時間365日生きる中での、全ての時間についてゴールが設定できるということです。それによってゴール世界の”臨場感”を持つことができます。
コーチングセッションではまず、趣味や仕事の領域についてゴール設定をしていき、その他の領域も順にゴールを設定していくことで、バランスホイールを完成させていきます。
こうすることで、
ゴール世界の「コンフォートゾーン」が形成され、
「モチベーション」が生まれ、
「RAS」が働くことで現状の「スコトーマ」が外れ、
「エフィカシー」が高まって、
どんどんゴールに向けて行動して、人生が変わっていくのです。
最後に
いかがでしたでしょうか?
「マインドのカラクリ」を通じて、コーチングについての理解が深まったのではないでしょうか。
コーチングを受けてみたいと思った方は、ぜひ以下のフォームからお気軽にお問い合わせいただければ幸いです!
参考記事
コーチングセッションを通じて、どう変わるのか?
実際の体験や、Before/ Afterが綴られた記事を紹介します。
LayerX 代表取締役CTOの松本勇気さんと、プロコーチの海野慧さん(Mindset Coaching School 卒業生)の、対談記事です。
認知科学に基づくコーチングは、個人の最も深い部分を取り扱うこともあり、こういった実体験の記事が世の中に出ることは殆どありません。
その意味でも、貴重な記事ですので、ぜひご覧になってみてください。