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民族衣装 -異文化へのまなざしと探求、受容- /文化学園服飾博物館

 初台の東京オペラシティから徒歩で10分とかからずに、西新宿の文化学園服飾博物館へ到着。

 日本でもそう多くない服飾専門の博物館、さらには文化学園という斯界の名門の力を存分に活かして、この館には古今東西の染織の優品が収蔵されている。
 開催中の「民族衣装 -異文化へのまなざしと探求、受容-」は、そのなかからアジアの民族衣装をずらり展示するのみならず、西洋からのオリエンタリズムのまなざし、そしてモードに与えた影響までを通観するもの。

(1)異文化へのまなざし

 まずは、西洋の人びとがはるか遠くのアジアの人びととその服飾を認知していくさまを、洋書などの印刷物を併用しつつ追う。おぼろげなイメージが具体性を帯びていく過程が、視覚的に把握できた。
 反対側のケースでは、日本が西洋の諸外国をどう認識していたかを、合わせ鏡のように紹介。南蛮人、紅毛人を描いた浮世絵など。今回のメインはあくまで「西洋からの」視点だが、このような「日本からの」視点を主とした展示も見てみたい。
 今も昔も、遠方の出来事を知る手段の大半は、自分の五感や足ではなく「報道」だ。当時の人びとがいだいた遠方のイメージを探るには、メディアの様相を知ることが大きな手掛かりとなる。本展では、原住民を写した絵はがきや、研究者による雑誌のスクラップも多数展示されていた。

(2)探求

 アジアの民族衣装が並ぶパートは、寄贈者の顕彰も兼ねている。
 コレクターたちは現地を訪れ、衣食住の時間・空間を共有しながら警戒心をといてもらい、一着一着、その土地の衣装を譲り受けていったのだという。
 本章に登場した誰もが、コレクターであると同時に研究者でもあった。
 その探究心と執念に胸が躍ったし、集めたものがこうしてまとまって収蔵されることになって本当によかったなと、感慨がひとしおであった(自由が丘の岩立さんのコレクションは、今後どうなるのだろうか)。

(3)受容

 アジアの民族衣装にインスピレーションを受けてデザインされた西洋のコスチュームを、もととなった民族衣装とともに展示。
 龍の刺繍が全面に施された、黒地のシルクの服が2着。片方は中国製で、清朝の官吏が着用したもの。もういっぽうはなんと、1910年代のフランス製のガウン。じつによく似ていて、明らかな影響関係がみてとれる。
 有名デザイナーたちも、アジアの民族衣装からの影響が色濃い作品を数多く残していた。

 アジア、アジアと連呼してきたけれど、その指し示す範囲は広い。中東からインドのあたり、東南アジア、そして中国・朝鮮・日本の東アジアまでが含まれる。
 いま、千葉市美術館ではちょうどジャポニスムに関する展示が開催中だ。
 わたしも近々行こうと思っているが、今回の文化学園の展示はいみじくも、このためのよい予習となった。
 わたしを含め、日本に生まれてずっと日本に暮らしてきた人は、ジャポニスムという西洋世界で自発的に起こった現象を声高に、誇らしげに語ってしまうものだ。ところが、西洋中心の視点から見た「東側の世界」のイメージはもっと混濁したものであり、個々の国々の姿はごっちゃで、おぼろげなのだ。
 「日本、すごい!」といたずらに盛り上がる前に、少々心を落ち着かせて臨まねば……そういう意味での「予習」ができたなと思うのである。


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