夭折の画家たち —青春群像—:1 /笠間日動美術館
「夭折の画家」。
不謹慎かもしれないが、妙に魅かれるワードである。
この展覧会タイトルからは、どのような作家が出ているのか、おおよそ見当をつけることができる。日本の近代美術史で、この列に加えられる作家はかぎられてくるのだ。
中公新書に『早世の天才画家—日本近代洋画の十二人』(酒井忠康著)という、たいへんおもしろい一冊が入っている。書名の「十二人」とは、次に挙げる顔触れ(生没年のうしろは享年)。
本展「夭折の画家たち」は、このうち古賀春江をのぞく11名を主体として、本ではなぜか外されていた青木繁(1882~1911=享年38歳)、彫刻の荻原碌山(守衛。1879~1910=享年30歳)、また夭折とはいいがたいが彼らと同種のカテゴリとしてみられることの多い長谷川利行(1891~1940=享年49歳)、そのほか彼らをとりまく作家たちの作品から構成されている。
笠間日動美術館は、銀座の老舗画廊・日動画廊が創業家の父祖代々の地・茨城県笠間市につくった美術館。
そのため、館蔵品だけでなく日動画廊の豊富な所蔵品も動員できる強みがあるけれど、今回はさらに岩手県立美術館から萬鉄五郎と松本竣介、福島県立美術館から関根正二の代表作を多数迎えた充実のラインナップとなっていた。
出品作家たちには、みなそれぞれに熱烈なファンがついており、いずれ劣らぬ人気作家といえる。
ギラギラとした個性をみせつける若き作家たちの作品群を、どうまとめあげるか。この点は、本展のポイントになるだろうなと思われた。アンソロジー的な独立性の高い構成で、順不同かもしれない。生年の古い順、享年の若い順などもありか……
展示にうかがってみると、彼らの先生にあたる黒田清輝や藤島武二から入って、まずは青木繁を取り上げ、その他の作家は「新宿中村屋サロン」「池袋モンパルナス」「田端文士村」といった活動圏・生活圏ごとにおおむね分けられており、なるほどそうきたかと思わされた。
同じ圏内の作家どうしは、人的なつながりや作風の類似はかならずしもないけれど、東京の地理に通じていれば、彼らの存在が少しだけ近いものとして感じられるのだ。(つづく)