酒気帯び美術鑑賞 :2
(承前)
さすがにこの筆者(吉野秀雄)たちは酩酊に近い状態とみえるけれど、この文字が「音楽と化す」ような状態、わからなくもない。わたし自身、同じような体験をしたことがあるからだ。
美術品をもっているのは、美術館ばかりではない。個人のお宅にだってたくさんある。
えてして美術好きはグルメ、健啖家を兼ねていることが多く、酒を愛する人もまた多い。そんなコレクターのもとでは夜な夜な(という頻度でもなかろうが)、自慢の作品を持ち寄った、飲酒をともなう会合がおこなわれている。そこでは酒は大いに勧められども、禁じられることはない。作品の前にガラスケースなどなく、立体物は手にとって拝見でき、酒器は古いうつわだ。
わたしも末席を汚すことが時折あり、そんなときに、似たような体験をしたのだった。
おそらく、同種の体験に味を占めた……でなく「着想を得た」のであろう、京都は嵐山の福田美術館では「シャンパン&解説付・貸切ナイトミュージアム」というなんとも伊達で酔狂なイベントが先日おこなわれたそうだ。
こんなイベントが増えてくれないものか。
だいたい、ガラスケース越しであれば、酒気帯びだろうとそう大した危険もないと思われる。美術展のレセプションでも、堂々とお酒が振る舞われるではないか……
酒造を生業とする会社やその創業家がつくった美術館は各地にあるから、まずは自社製品を使って細々とでもはじめてみてはどうだろうか。ミッドタウンのサ〇トリーさん、大山崎のア〇ヒビールさん、芦屋の白〇さん、天童の出〇桜さん、大分のいい〇こさんなどなど……(「もうやってますよ」ということであれば、情報をお寄せください。参戦します)。
――吉野秀雄を読んでいてあのような一節に共感を覚え、木島櫻谷の展示のことを調べようと福田美術館のページを開いたらこのような素敵なイベントを知り、今回の投稿内容と相成った。
思いのほか筆がするするっと走って長くなってしまったが、わたしはいま、れっきとした「しらふ」である。
※「東洋美術と酒」というテーマで今秋開催されていたのが奈良の大和文華館「天之美禄(てんのびろく) 酒の美術」展。行きたかった……