近江商人の発祥地・五個荘の町並み 秋の近江路を往く:5
(承前)
白洲正子さんがこのように書いている、五個荘の町並み。
平日だったこともあるが、町内を歩きまわっているあいだ、ほとんど人に会わなかった。狙わずとも、人っ子ひとり写っていない写真が撮れたのだった。
五個荘金堂地区は、東海道新幹線の車窓から遠望することができる。
もちろん、細かくは見えないものの、「近江商人のまち・五個荘」などと書かれた大きな看板は、ばっちり認識できる。
この看板が目に入ると「もう繖山(きぬがさやま)のあたりか」「次は安土城の看板だな」「そろそろ準備しておこう」といったことを、通り過ぎる一瞬のうちに思い浮かべるのが常であった。
このとき同時に浮かんでくるのが、繖山やその周辺にある観音正寺、桑実寺、石馬寺での美しい思い出。いずれも、白洲さんの随筆に登場する古刹だ。
これに、五個荘の町並みの記憶が新たに加わる。
次に上洛するとき、新幹線の席は、かならず進行方向右・窓際にしよう。
楽しみがひとつ、増えた。
——秋の近江路をめぐる日帰り旅は、これにて完結。
時間が許せば、近江鉄道で2駅先の豊郷まで行き、ヴォーリズ設計の豊郷小学校を観ていきたかったけれど……五個荘をじっくりまわった結果、1時間に1本の電車を逃してしまい、間に合わなかった(そもそも、山で遭難しなければよかった)。
でも、きょうのところは満足。
近江には、すばらしい場所が、まわりきれないほどたくさんある。またいつか、来ればいいさ。
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