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神護寺 空海と真言密教のはじまり:3 /東京国立博物館
(承前)
全体の3分の2ほどを過ぎた段階で、じつは、仏像はまだあまり登場していなかった。文書に経典、仏画など、紙ものが中心だったのだ。冒頭にお大師さん(鎌倉時代・13世紀 神護寺 重文)がおわしたが、板彫の像であり、平面に近い。
終盤の残り3分の1をたっぷり使って、第5章「神護寺の彫刻」がいよいよ展開されていく。
国宝《五大虚空蔵菩薩坐像》(平安時代・9世紀 神護寺)。
現在の堂内では横並びに安置されているけれど、本展では法界虚空蔵菩薩を中尊、ほか4体を東西南北に放射状に配置、曼荼羅上の位置関係が立体的に再現されていた。すばらしい!
展示台を軸とした円形の空間をぐるっと周りながら、各像を拝見していった。
【#神護寺展🍁展示作品③】
— 創建1200年記念 特別展「神護寺ー空海と真言密教のはじまり」 (@jingoji2024) May 7, 2024
神護寺にある密教像のうち最も古く、また日本でつくられた作例のうち五体が揃う現存最古の国宝「五大虚空蔵菩薩坐像」。
空海の弟子、真済が発願した立体曼荼羅です。
品の良い顔立ちと均整の取れた造形にご注目ください🔍✨
寺外で揃って公開されるのは初めてのことです! pic.twitter.com/knbxzkQHuJ
私事で恐縮ながら、虚空蔵菩薩は生まれた干支の守り本尊。京都の現地へ、改めてお詣りしたいなと思った。
続いて、奥まったスペースに《二天王立像》(平安時代・12世紀 神護寺)。
【#神護寺展🍁 撮影スポット】
— 創建1200年記念 特別展「神護寺ー空海と真言密教のはじまり」 (@jingoji2024) July 28, 2024
本展では写真撮影スポットを設けています📸
立ち姿が凛々しい「二天王立像」(平安時代・12世紀)は普段は神護寺の楼門に安置されています!
ぜひポーズを撮って記念撮影してみてくださいね♪#神護寺 #ジンゴジ #空海の寺 #東博 pic.twitter.com/BQVHTWmgVr
ここのみ撮影可能とあって、みな一様にスマホを向けていた。大物芸能人カップルの婚約会見に群がる記者たちのように、バシバシ撮影……誰も、お像をちゃんと観ていないのでは?とすら思われた。
わたしとて、ふだんから撮影可能の恩恵にあずかりまくっているわけで、同じ穴の狢には違いないけれど、この種の光景に出くわしてしまうと反骨精神がまさり、スマホをポケットに入れたままにしてしまう。
いまの時代、会場のどこかにこういった「ガス抜き」の撮影コーナーを入れないとSNSに不平不満を書かれてしまうし、なにより拡散してもらえなくなるだろうから、致し方はあるまい……
最後の大広間に、神護寺金堂の御本尊・国宝《薬師如来立像》(平安時代・8~9世紀)が鎮座。脇侍として、少し制作年代の下る《日光・月光菩薩立像》(平安時代・9世紀)を従える。
【#神護寺展 展示作品①】#神護寺 のご本尊です。もとは神護寺の前身寺院にまつられていた国宝「#薬師如来立像」を、空海が本尊として迎えました。
— 創建1200年記念 特別展「神護寺ー空海と真言密教のはじまり」 (@jingoji2024) April 24, 2024
日本彫刻史上の最高傑作✨厳しい眼差し、どっしりとした頼もしいお姿です。
神護寺からお出ましになるのは、初めてのこととなります👏 pic.twitter.com/Yc0CZUDpv9
このお像が高雄の山を下りることじたい、今回が初めてだというから、たいへんなことだ。
わたしが高雄の神護寺にうかがったのは2011年の1回きりで、そのときに、金堂の内部でこのお像を拝観している。つまり今回が2度めの拝観となった。
静かに、こちら側を見下ろす薬師如来。金堂の薄暗い堂内に比べれば、東博の展示室は明るく、より明瞭に拝見できるけども、おいそれとは近寄りがたい、きわめて重厚な存在感はなんら変わりがない。
厄災や邪念なぞ、いともたやすくはねのけてくれそうな、厳めしい顔つき。衣文線の深い彫りやがっしりとした体躯、さらに手や腕の肉厚な造形も、表情によく呼応している。
一度観たら、忘れがたいお像である。
三尊の島を取り囲むように、江戸初期の四天王と、室町・近世の入り交じる十二神将をずらーっと展示。
\#神護寺展🍁閉幕まであと3日📣/
— 創建1200年記念 特別展「神護寺ー空海と真言密教のはじまり」 (@jingoji2024) September 6, 2024
本尊と日光・月光菩薩、十二神将との一体感を感じられる空間をご覧いただける貴重な機会です!
本日・明日は夜間開館日のため、19時まで開館しています!(入場は18:30まで)
17時以降に神護寺展へ入場された方先着200名様にもんちゃんうちわをお配りします✨ pic.twitter.com/pKzdXsVeHK
薬師如来と同じく金堂内陣を飾っているお像で、発願者の半井瑞雪なる人物は、神護寺の前身・高雄山寺を創建した和気氏の末裔という。和気氏といえば清麻呂・広虫以後はほとんど名を聞かず、古代にいた有力豪族のイメージが強いけれど、近世初頭まで続いていたとは。
調べると、和気氏とその後裔・半井氏は、近世どころか大正期まで、代々の当主が医業に従事したとのこと。家業を医術とした由来は、神護寺の本尊・薬師如来の霊験に求められるという。
そういった点を意識したうえで、改めて本尊やその眷属たちを見わたすと、時代を超えて繋がれてきたバトンの重みが痛感されるのであった。
大きな余韻を感じつつ、会場を後にした。
——じつのところ、本展を観に行くか否かは、ちょっと迷っていた。
高雄曼荼羅は奈良博で6月に拝見したばかりであるし、神護寺では毎年5月頃に「虫払い」(いわゆる虫干し、曝涼)がおこなわれていて、紙ものの宝物の多くは、そのときにガラスケースなしで拝見できる。そもそも仏像というものは、お堂のなかで観るのがいちばんよい……などといった理由からである。
だが、こうして展示室で、じっくり細部まで鑑賞するのもまたよく、お堂のなかとは違った表情がみられる利点もある。なにより、展示室を出れば、現地を訪ねたい気持ちがさらに高まるのである。
秋口に高雄観楓としゃれこむもよし、GWの虫払いを狙うもよし。再訪したい場所が、また増えてしまった。
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(いずれも2011年7月撮影)