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夕焼け小焼けの 龍野さんぽ:1

 兵庫県太子町の斑鳩寺から国道179号を車で北上すれば、ものの10分ほどで、たつの市のJR本竜野駅に到着する。
 自治体名はひらがな、駅名は略字となってしまった「龍野(たつの)」は、龍野藩五万石の城下町。旧市街では、醤油の醸造で栄えた商家の街並みが生活感ある雰囲気のまま保たれている。詩人・三木露風の生地であり、童謡『赤とんぼ』の着想の源になった地だともいう。

 駅のある町のはずれからレンタルサイクルをしゃーっと飛ばしていると、右手に銀色の大きな物体が。近づくほどに、香ばしいにおいが鼻をかすめる。
 ここは、食品メーカー・ヒガシマル醤油の第一工場。工場の隣接地には本社が置かれている。ヒガシマルは、醤油の街・龍野が生んだ醸造業者の代表格なのだ。

タンクの中には、醤油やそばつゆがぎっしり入っているのだろう

 もう少し直進すると、ぱっと視界が開けて、太い川と長い橋が見えてきた。向こう岸には山並みと、その手前にお碗を伏せたような形の山を遠望。お碗こと鶏籠山(けいろうざん)の麓にあるのが龍野城で、その下に瓦屋根の連なりが形成されている。
 山々を背に揖保川(いぼがわ)に面した龍野の地は、築城に適した天然の要害であり、水運に恵まれた商業の栄えうる土地でもあった。

揖保川を渡る
後方にみえる煉瓦積みの煙突は、醤油工場のもの

 橋を渡り、いよいよ龍野の市街地へ。
 城下町探訪の定石に従って、まずはお城へ討ち入ることとした。
 見晴らしはすこぶるよく、龍野の街全体はおろか、そのずっと向こうまで見わたすことができた。
 お城のまわりを武家屋敷で固め、その外周に市街地が広がる。空襲を免れたために、こうした江戸時代の城下町の構造がそのまま残されているのだ。(つづく

いざ
本丸御殿。この奥に資料館がある
武家地の趣を残すあたりから、隅櫓を望む。この右手には、龍野藩士の血を引く三木露風の生家がある



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