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カラーフィールド 色の海を泳ぐ:1 /DIC川村記念美術館
「カラーフィールド」とは「1950年代後半から60年代にかけてアメリカを中心に発展した抽象絵画の傾向」(展覧会公式サイトより)。見上げるような大画面に、少ない色数を面のように広く使って展開するものをいう。単色や、円などの単純な形態を示すもの、立体造形も含まれる。
画派=schoolといえるような師弟関係はみられず、団体・組織・結社の類=groupを形成したわけでもない。同時代の作家どうしがもっとゆるやかにつながりをもち、造形意識を共有しあっていた。
「カラーフィールド」をテーマとした展示は、日本では今回が初となる。
国内の他館で取り上げられることの少ない、あるいはまったくないようなテーマに果敢に挑んでいくのが、このDIC川村記念美術館(以下「川村」)のすごいところ。そういった意味で、「カラーフィールド」展はじつに「川村らしい」企画といえるものだった。
併設の所蔵品展でも、サイ・トゥオンブリーだとか、ヴォルスだとか、ジョセフ・コーネルといった作家の「とんがっていて」よい作を多々拝見することができた。
なかでも極めつけが、マーク・ロスコの大壁画に四方を囲まれる “ロスコ・ルーム” で、わたしが川村を年に1、2度は訪れるのも、この空間に身を置くためというのが大きい。
“ロスコ・ルーム” については、語りはじめたら止まらないので稿を改めるとして――ロスコと同じように「川村らしさ」を感じる作家のひとりに、フランク・ステラがいる。
川村に行けば、いつだってステラの作品が展示されている。ステラに関しては、国内最大規模のコレクションといわれているのだ。
ステラの作品に接するたびに、色とかたちのミニマルな取り合わせに目を驚かされる。淀みのない均質化された色面、既存のなにかに似ているようで、なににも似ないかたち。つかめそうでつかめない、大きななにかが目の前にあるふしぎ。この感覚はまさに、現物に接しなければ味わえない……
本展は、カナダのマーヴィッシュ夫妻のコレクションを迎え、川村の所蔵品をまじえて、ステラを含む「カラーフィールド」の作家9名を紹介するもの。
会場に赴けば、存分に「色の海を泳ぐ」ことができる。
これほどぜいたくな時間はない。
その所感を、次回は述べていきたい。(つづく)