新規オープンのあいさつ回りはどこまですればいいのか in ローカルタウン
もう昨年の話になるんですが、ある晩うちの店に、アラフィフのご夫婦2組が連れだって来店されました。
お酒もすすんできたところで、話題は、近所に新しくオープンした居酒屋さんについて。当時、繁華街で営んでいたお店の2号店が、近くにできたばかりだったのです。
接客に当たっていた私は、4人のうちの一人の女性から「あそこの店、ちゃんとここへあいさつにきた?」と聞かれました。
「来られてません」と言えば、このあとどんな話の展開になるのかなんとなく予想はついていたのですが、嘘をつくわけにはいかず、正直に「来られてません」と答えました。
すると、あぁ予想どおり。
「なんだあの店は!なってない」「非常識よね。私がこんど行って言ってやるわ!」なんて話になってしまって。
いやーやめてーうちの近所でモメないで〜って感じになってしまったのです。
そしてそのとき、私はとっさに、まさか自分まで文句を言ったひとりにされてしまったらたまらないな、と思いました。
「あなた、小保下さんのところにあいさつに行かなかったんですって?小保下さんも怒ってたわよ!」なんて言われたら、大変です。
それだけは否定しておきたかったので、思い切って言いました。
「1号店のある繁華街のほうってお店の入れ替わりが激しいから、いちいち周りにあいさつをする習慣がないんじゃないですかねぇ?お若い方だし、そういう商習慣があるのを知らないだけなのかもしれないですよ?」と。
女性は「あらぁ、グミちゃんは寛容なのねぇ〜」と。
私はとにかく、文句も批判も言ってません!ということを伝えられてひと安心でした。
実は私ハタチのときに、マンションの一室から始めた美容系サロンを、アメリカ村という大阪随一の繁華街でオープンしたんですよね。
ただ、恥ずかしくも無知だったために、同じビルに入っているよそのお店に全くあいさつをしなかったのです。
言い訳をすると、都会暮らしに慣れてしまったせいか、ご近所さんとうまくやるっていう発想がまったくなくて。
何年も経ってから「やっておけばよかったなぁ」と後悔したものです。
その、新しくオープンした居酒屋のオーナーさんが、当時の私と同じ感覚でいるのかどうかはわかりません。
少なくとも彼は、もう何年も前から飲食店の経営をしていますから、世の中にそういう商習慣があることじたいは知っている可能性もあります。
もしそうなら、人付き合いしたい・したくないは人それぞれなんだから、よそ様のことは放っといて差し上げたら?という気も、しなくもありません。
まぁでもうちが商売をするエリアでは、それは通用しないないんですよね。東京のベッドタウン。それなりに田舎の、ムラ社会なのです。
じゃあ一体あいさつまわりって、どのぐらいやれば文句や陰口を言われないで済むのでしょう。
*
その日の仕事が終わったあと、旦那に聞いてみました。うちの店が10年ほど前に今の場所へ移転してきたときは、あいさつ回りをどうしたのかと。
聞くに、当時あいさつまわりを買って出たのは、すでに代を引き継いでいた2代目、いまは亡き彼の母。
亡くなったあとも「すごくいい方だった」「気遣いの素晴らしい方だった」と惜しむお客さまからの声は、なんども耳にはしていました。
なんでも、その義母は移転してきた際、うちの店を中心として両隣り5軒ずつ、道路を渡ってさらに左右に5軒ずつ、合計20個の菓子折りを配ったそうです。
ちょっとびっくりしました。これが普通なんでしょうか。私の知る限り、そこまでする人ってなかなかいません。
さすが義母。用意周到です。ぬかりないです。
息子である彼は「新しく店を出すときはさ、これぐらいしなくちゃいけないんだよ」と言います。
地域で「うまいことやる」って、こういうことなんでしょうね。
わかってはいましたが、この街では、新参者があいさつしないなんて許されないことだし、放っておいてもくれないものなのだと改めて痛感しました。
しかしやって得することはあっても、損することはありません。
デメリットは菓子代ぐらいですから、知らぬうちに陰口を叩かれるぐらいなら、きっちりやっておいたほうが良さそうですよね。
うちの店は、今年また移転することが決まっています。
近所に移る予定なのですでに知り合いだらけですが、敵を増やさず、ならばなるべく多くの人を味方にできるよう、あいさつ回りはぬかりなく務めるつもりです。
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