【ショートショート】不器用な彼の1日
ケンタは、周囲から「不器用な男」と言われていた。何かにつけてドジを踏むのだ。彼は努力家で、何事にも真面目に取り組むのだが、その分だけ失敗も多い。何をするにしても、手元が狂ってしまったり、ちょっとしたタイミングが合わなかったりして、最終的にはややこしい状況に陥る。
朝の始まりは決まって同じだ。アラームが鳴ると、ケンタは反射的に手を伸ばしてアラームを止めようとする。しかし、手が滑ってアラームのスヌーズボタンではなく、寝床の脇に置かれた水の入ったコップに当たってしまう。毎朝これが繰り返され、結果として布団はびしょびしょになるのが常だった。今日もそのルーチンから始まった。
「くそ、またやってしまった…」
ケンタはため息をつきながら布団を拭き、そのまま朝食の準備に向かった。トースターに食パンを入れてスイッチを押すが、ここでも小さな事件が起きる。トーストが焼けたと思った瞬間、何故か勢いよく飛び出したパンが床に落ちてしまう。
「え?こんなに飛び出ることある?」
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