【ショートショート】自由
未来の街には、猫の隠れ場所が減ってしまった。高層ビルと輝くネオン、無数の監視カメラが行き交う車や人々を常に見張っている。人々は、動物の自由な動きすら「管理」するべきものと見なしていたが、そんな街でのびのびと生きようとする存在がいた。
月夜の晩、輝く光を反射して目がまばゆく光る。ビルの影に身を潜め、黒い毛が月の光を受けて艶めいていた。暗がりに溶け込むように動き、監視カメラの赤いランプが見えない場所へ静かに進む。都市の片隅に潜むこの猫は、自由を求め、毎夜この街を駆け巡っていた。
ある晩、不思議な装置が転がっているのを見つけた。小さな円筒形で、青く微かに光っていた。鼻を近づけて様子をうかがっていると、その装置がふわりと浮き上がり、周囲を漂うように動き出した。光る物体に興味を惹かれながらも警戒しつつ、猫はじっと観察を続けた。
装置はしばらく浮かんでいたが、突然青い光が強くなり、地面に街のホログラムを投影し始めた。そこには監視カメラの配置が示され、その視線を避けるためのルートが細かく描かれていた。監視されない自由な動きのための情報。猫はそれを瞬時に理解し、装置を後ろに引き連れて動き始めた。
夜の街を歩きながら、装置が示す安全なルートを辿る。黒く光る毛皮を持つ猫は、監視の目を巧みに避け、食べ物のありかへと迷いなく進む。装置の情報は完璧で、ドローンの巡回すら予測し、事前に隠れる場所を教えてくれた。人間たちが厳しく管理するこの未来都市で、装置は猫にとってかけがえのない存在となりつつあった。
ある夜、装置は新しいルートを示し始めた。街の中枢に位置する、都市管理センターへの道。そこは全ての監視システムを統括する施設で、もしそこに入れば街中の監視を止めることができると示している。月の光が反射して光る目で装置を見つめ、猫はそのままセンターへ向かうことに決めた。
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