【ショートショート】超能力を持つ男の日常
ケンジは特別な能力を持っていた。彼は他人の心を読むことができる。その能力を手に入れたのは思春期の頃で、最初は頭の中に他人の考えが流れ込んでくることに混乱し、恐怖すら感じた。しかし、今ではそれが彼の日常となり、まるで耳に背景の音が入るようなものになっていた。
毎朝、ケンジは通勤ラッシュの中で人々の思考を聞き流す。疲れた顔で電車に乗るサラリーマン、スマホを見つめる学生、隣の席で化粧をしている女性。それぞれの頭の中で、愚痴、悩み、希望、そして些細な考えが入り混じり、彼の意識に流れ込んでくる。
「今日もまた会議か…うんざりだな。」
「彼から返事が来ない…どうして?」
「上司の顔、ほんとムカつくんだよな。」
これらの声を、ケンジは特に気にすることなく聞き流していた。心を読むことは一見便利そうだが、実際にはただの雑音に過ぎなかった。誰もが抱える不満や不安が、何のフィルターもなく流れ込んでくることで、ケンジは他人との距離を保つことがますます難しくなっていた。
ある日、ケンジはオフィスで部長に呼ばれた。どうやら新しいプロジェクトのリーダーに任命されたらしい。部長が微笑みながら彼に話す間も、ケンジの頭の中には部長の心の声が聞こえてきた。
「ケンジは仕事ができるからな…いや、ただ他に適任者がいないんだよ。断られても困るし、まぁ無難にやってくれればいい。」
部長の口からは「期待しているよ」と言葉が出てきたが、心の声は全く違っていた。ケンジは笑顔で頷いたものの、心の中でため息をついた。仕事での評価も、他人の思考を通して見てしまうと、表面的な言葉がどれほど軽いものかが分かりすぎてしまった。
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