見出し画像

工事編_天空風呂を作る!

このビルの工事のハイライトといえば、以前の記事で何度もお伝えした屋上の浴室の工事です!

前回の荷揚げが第一関門。
そしてもちろん荷揚げだけでなく浴室を作る工事も難関だらけでした。


ユニットバスvs在来浴室


浴室の工事というと、今では多くの家がいわゆるユニットバスを採用しています。
ユニットバスとは、リクシルやTOTOなどのメーカーの工場で大部分を製作したものを、現場に運んで、現場では組み立てて水道管などと接続するだけ、というなんとも画期的な方法。
私なりに考える主なユニットバスの良し悪しを書いてみます。

○メリット
>工事が簡単(工場生産のものを現場では組み立てるだけ)
>工期が短い
>価格が安い傾向にある(グレード次第なので必ずではない)
>防水へのリスク(水漏れ等)が低い

✖︎デメリット
>決められたデザインしか選べない
>サイズが決められているので、当てはまらないと使用できない
>サイズ以外にも細かい制約がある
(床の懐高さや配管の位置など)

ユニットバス以外で浴室を作る場合は、昔の実家などを想像してもらえるとわかりやすいかもですが、いわゆるタイル貼りの空間に、浴槽がドンと置いてある浴室。
これをユニットに対して、在来浴室と言ったりします。
一からその場に合わせて、各職人さんが各工程ごとに入り、浴室を作っていく、いわばオーダーメイドの浴室。

在来浴室のメリットデメリットも参考までに。
○メリット
>好きなデザインにできる
>好きな大きさ、形にできる

✖︎デメリット
>工期が長い
>価格が高い傾向にある(デザイン、グレード次第なので全てではない)
>防水上のリスク(水漏れなど)が高いとされている(これも設計や職人の腕次第。言い換えるとすると品質にムラが出る可能性があるということ)

今回私たちの浴室を作ろうとしている場所は、屋上の斜め天井のスペースなため、もちろんユニットバスは適用不可。
また浴室に性能だけでなく、快適性やデザインも求めているので、ユニットバスは選択肢にありませんでした。

天空風呂の作り方


前置きが長くなりましたがいよいよ工事スタート。

工程①浴室のベースを作る:大工工事
工程②配管関係のルートを作る:設備工事
工程③防水工事:左官工事、防水工事
工程④浴槽設置:大工工事、左官工事
工程⑤仕上げ工事:左官工事、防水工事、ガラス工事、大工工事、設備工事

ざっくりこんな工程で進んでいきます。
上記を見ただけでも様々な職種の職人さんが関わっていることがわかるかと思います。

工程①>
まずは浴室の形を作っていきます。
在来浴室ならでは、大きさも形もオールフリー!!
今回は屋上の階段室の上りあがりのいわゆる塔屋の部分を浴室にすることにしたので(詳しいプランはプラン紹介の記事参照↓)、天井が屋根なりに斜めになっており、その部分を浴槽とする予定。

階段の踊り場=脱衣室という激しめなプラン(それしかスペースがなかったw)のため、圧迫感が出ないように階段側の壁を一部ガラス張りとしました。
しかも現場の形の関係で、浴室に扉はありません!

ここまでくれば、徹底的にミニマムに削ぎ落とします。

左側の腰壁より右が浴室、左は階段
腰壁の上はガラス張りの予定
天井の斜めに沿って浴室も作ります

工程②>
浴室に必要な、給水、排水、給湯、電気など設備の配管ルートを慎重に決めて、作っていきます。厳密には①と同時進行でやります。

隙間を見つけて配管ルートを作っていきます
ルートができたら合板で塞いで形を完成させていきます
シャワー水栓がくる部分

工程③>
ここからようやく、最重要の防水工事。
まずは防水の下地となるモルタルを敷きます。
水が変なところに溜まらないようにこの時点で床に勾配を作っていきます。
実はここでプチトラブル。
下地が完成したところで確認しに行ったところ、どう考えても勾配が指示した通りに取れていない、、、、。むしろ逆勾配。。。
完成して職人さんもはけた後だったのですが、ここは重要なところ。
説明をし、きちんとやり直してもらいました。

脱衣室(右側)との境界
扉が無いので立ち上がりをつけます

今回採用したのは、防水兼そのまま仕上げにもなるFRP防水という種類の防水。
ヨットの甲板などに使われる防水だそうです。下地のモルタルの上を、防水していきます。(何層かに分けて施工する。塗っては乾かしを何日も繰り返す。)

シームレスに防水していくことが重要
何層も塗り重ねます
仕上げの塗装作業

防水が綺麗に仕上がりました!
最後に、きちんと漏れなく施工されているかの試験=水張り試験を行います。


分かりにくいですが2〜3㎝全面に水を溜めています
水の位置に印をつけておおよそ24時間程度、水が極端に減らないかを確認する
案外アナログな方法

工程④>
荷揚げ後、屋上に仮置きしておいた重量級、ホーロー製の浴槽をいよいよ設置します。高さや位置を慎重に調整して固定。

いよいよこれを本来の場所に戻す


高さや位置を慎重に決める

工程⑤>
浴槽の横の壁(エプロン)を作る。その上から、仕上げの防水工事を行い、水栓や換気扇などの器具付をして、とうとう完成!!


ブロックでエプロンを作ります
再度モルタルで仕上げ
これでほぼ完成!
あとはシャワー水栓や鏡、タオル掛けなどの小物を設置するだけ

天空風呂を作ってみて

浴室を最上階に計画するというのは、以上のように様々な工程があり、正直リスクが高く、設計をやっている身からするとなかなかお客さんにはお勧めはできませんw
しかし、きちんと計画して慎重に設計すること、そしてそれぞれの工事を確実に行うことで、リスクを減らすことは十分に可能だと思います。
そして、その不安の先に最高な浴室が手に入りましたw

安心安全、性能の快適さを最重要視するのか、それとも、ある程度のリスクを承知の上で、丁寧に物作りを重ね、プライスレスな快適さを重要視するのか、最後の選択はやはり住む人自身の決断になります。

建築は家電製品ではなく、実際の人間が長い時間を過ごす器だからです。
浴室だけに関わらず、建築の空間のもつ意味みたいなものを再確認させてもらえた浴室工事でした。(やや大袈裟w)


いいなと思ったら応援しよう!