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人魚あれこれ


世界中にある人魚譚

僕が人魚に思い入れがあるというお話は、お話会でも何度もしてきました。
どうしてこんなに惹かれるのかは自分でも良く分かっていないのですが、きっと海の近くで生まれ育ったからと言うのもあるのかも知れません。

人魚姫や紅いろうそくと人魚。
人魚の話と言えば、なんとなく女性の姿をした人魚が思い浮かびます。
儚い恋物語、悲恋が多くなる異類婚姻譚では、多くが男性側が妖精で、女性側が人間というのが収まりが良いのでしょうか。
もちろん「それしかない」ということはなく、欧州には人魚の王子様と結婚する娘のお話や、ヒゲ面の人魚が活躍するお話も伝わっています。
(それにギリシア神話のトリトンも男性型人魚ですよね)

それと同じように、エジプトにも、中国にも人魚譚は伝わっているばかりか、内陸の海に面していないところでも、舞台を川や湖に移して人魚譚は伝わっています。
イエイツやクローカーが発表したアイルランド南西部に伝わる人魚婚姻譚である「ゴルラスの夫人(漁師が人魚を娶り子を成すが、後に人魚は海に帰ってしまうお話。天人女房と酷似している)」と似た話が、ある川の上流を舞台にして伝わっていたりします。
水の擬人化とも言われている人魚ですから、人の営みのある所には必ず現れるのかも知れませんね。

人魚の魔力

人魚の魔法の力といえば、その美しい歌声かもしれません。
パイレーツオブカリビアン・命の泉でもその場面が見られますが、人魚譚では、魔法の歌を歌うというよりも、魔法の道具をたくさん持っているというイメージが強いです。
例えば、アイルランドやウェールズに伝わっている人魚譚では、彼女らは海の王さまの愛娘で、海に語りかければあらゆる願いが聞き届けられるそうです。
他にも、海の生き物の言葉が分かったり、彼らに命令出来たりと、人魚が海の中でも特別な存在なんだなと分かるお話も多多あります。
またアンデルセンの人魚姫に登場する海の魔女のように、たくさんの秘術を会得している老人魚も。
僕が大好きなのは、彼女らが持っている櫛で、髪を梳ると真珠が溢れ零れたり、波を鎮めたり出来るそうです。(男の人魚だと、手にした三叉の矛がその役割を果たします)
どんな形にせよ、人魚たちは魚や真珠、珊瑚などの海の富や、沈没船の隠された宝などを秘密をすべて知っているようです。
中には、海で命を落とした人たちの魂さえ捕らえているというお話もあるのですから。

狐弾亭の1冊

世界の民話館 人魚の本  ルース・マニング=サンダーズ 著 / 西本鶏介 訳

名前の通り世界各国の人魚のお話を集めた本です。
意地悪な人魚から、滑稽な人魚。
年老いた人魚など、様々な形で語られています。
先だってご紹介した人魚の本と比べて、子どもに語るために再話された本なので、どのお話も平易で読みやすく、それが豊かで、その土地の人たちが水や海とどう関わっていたかがちゃんと伝わる良い本だと思います。
狐弾亭の書棚にもありますので、開店、お越しの際には是非。

狐弾亭亭主・高畑吉男🦊

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