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古文「栄花物語」訳と解釈/2025年度 東洋大学 学校推薦型選抜 基礎学力テスト

受験した生徒から古文の問題が送られてきたので、ざっくり訳を打っていきます。※入試で聞かれている部分については太字にしています。
スマホで入力しながら打っているので、「~申し上げる」などの細かい訳までは面倒で打っていません。どんな話だったのかが分かってくれればという感じです。

栄花物語の訳

(中宮定子が兄の帥殿の起こした政変をきっかけに内裏を退出して、出産した後に続くものである。)

1段落目

こうしているうちに、(帝は)内裏で退屈にお感じになり、この機会にどうにかして一の宮(一の御子=今宮)を拝見したいとお思いになるが、さまざまなことが遠慮されるべき状況で、なかなかそれを口に出されることができないでいるところに、殿(藤原道長=大殿)が「この頃こそ、一の御子を拝見していただこう」と奏上させなさったので、(帝は)とてもとても嬉しくお感じになり、院(帝の母=女院)にもお知らせ申し上げなさると、中宮(定子)が参内なさるべき旨が何度もあったけれど、(中宮は)ただただ遠慮するばかりにお思いになるが、本気で院もお申し出なさるので、ようやく決意をお固めになられた。帥殿(藤原伊周)なども、「どうして宮を拝見していただかないのか。そのようなことがあれば、いっそう帝のご厚意が増すだろうし、軽々しいものとなることなどあろうはずがない」とお決めになり、急ぎ準備をして二月の晦日に参内なさる。御輿なども立派で、一の宮を参内させる迎えのために、大殿の唐車を引き連れて進ませた。それに宮も姫君もそのままお乗りになられる。ふさわしい人々をみな迎えに加えさせて参内させなさる。殿のご配慮が驚くほど素晴らしくおありになることを、世間ではめでたいことだと申し上げるべきである。帥殿も、自分の心がどうしたというのか、「本当に思いがけないことだ、殿のお心遣いというものは。女御(道長の娘の彰子)が参内された後には、まさかここまでの厚意があるとは思いもしなかった。一の宮を迎えるための様子は、本当に素晴らしいものだった。そのお心遣いというものは、全く驚くべきものだ。我々には到底このようにはできないだろう」と、内心でお聞きしておられた。

2段落目

さて、(中宮が)参内なさると、姫君(女一の宮)は愛らしい年頃になっていらっしゃった。また、今宮は言葉に尽くしがたいほど美しく輝いていらっしゃるので、帝は涙を拭われるような感動を覚えられるはずである。女一の宮も四、五歳ほどでいらっしゃるので、言葉などを大変上手に話される。女院も「良い夜だ」として、今宮を拝見なさると、上の御子の幼い頃に非常によく似ていらっしゃる。その姿をご覧になって感慨深く、また愛おしいとお感じになった。さらに、今宮が非常に尊く捨てがたい存在だとお感じになり、それが当然だともお考えになるのだった。

3段落目

さて、数日間滞在なさると、殿の御前で今宮をご覧になり、抱きしめて大変可愛がられた。今宮が歩かれる姿を見るまでには至らなかったことと、誰もが御子への愛しさをお感じになっていることから、一層深い愛情を抱かれた。帝が御笛を手に取らせると、そのお姿は神々しく、また美しいとご覧になった。

藤原道長について書かれている歴史物語

1. 栄花物語

  • 概要
    藤原道長を中心に、藤原氏の繁栄を讃える視点から描かれた歴史物語。藤原道長の栄華や、彼が摂政や関白として築いた絶大な権力を肯定的に描写しています。

  • 特徴
    道長が「この世をば我が世とぞ思ふ…」と詠んだ和歌や、彼の政治的成功、娘たちを天皇の后に送り込むことで権力基盤を強固にした様子などが詳述されています。


2. 大鏡

  • 概要
    栄花物語と同じく藤原道長の時代を扱いますが、こちらは批判的・客観的な視点が特徴です。道長の権勢を歴史的事件と絡めて描きつつ、その繁栄を冷静に振り返っています。

  • 特徴
    老人たちの対話形式で進行し、道長の専横ぶりや、彼がいかにして藤原氏の権力を拡大させたかを詳細に記述しています。時には皮肉も交えつつ、彼の人物像を描いています。


3. 今昔物語集

  • 概要
    『今昔物語集』には、藤原道長や彼に関係する逸話が含まれています。具体的には、彼の権勢や政治的手腕、当時の社会的出来事について語られた話が収録されています。

  • 特徴
    道長が人々からどのように見られていたかや、彼の行動のエピソードが説話的に描かれています。


4.その他

  • 『御堂関白記』
    藤原道長自身の日記。道長がどのように権力を行使したか、どのように日常生活を送っていたかを知る貴重な史料です。物語というよりは一次資料ですが、彼を理解するうえで重要です。


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