見出し画像

最近、なぜか猫派生活

 「犬派? 猫派?」と尋ねられると、迷いもなく「犬派」と答えていました。子どもの頃、実家にやってきた小型犬(ビションフリーゼ)は20年近くも長生きし、その子どももいつも家の中心でした。田舎だったこともあり、周囲に猫を飼育する家庭もそう多くはなかったので、猫をそんなに意識することはありませんでした。
 こんにちはド・ローカルです。久々の投稿となります。犬派を自称する私が最近、猫まみれの生活を送っています。
 神戸新聞のデータベースで「猫」を検索すると、この10年で5000件以上がヒットします。その数字を裏付けるように2017年に国内の飼育数は犬を上回り、約1000万匹に迫る勢いだそうです。

ペットフード協会調べ

 猫まみれと申し上げましたが、実際に猫をペットとして飼育し始めたのではありません。神戸新聞社で2022年にスタートした創作童話「かなしきデブ猫ちゃん」がきっかけなんです。小説家の早見和真さんと、絵本作家のかのうかりんさんが手がける作品で、弊社では昨年、兵庫編第1シリーズ「マルのはじまりの鐘」、今年4月からは兵庫編第2シリーズ「マルの真夏のプレゼント」を掲載中です。

かなしきデブ猫ちゃんの1stの絵本

 かなしきデブ猫ちゃんの主人公・マル(3歳雄)はハチワレの保護猫です。兵庫県内を冒険するストーリーで、そのプロモーションを展開する中で、さまざまな町を訪れ、150を超えるイベントを行い、これまで見たことがない「猫好き」に会ってきました。あるイベント会場で、猫の譲渡会があり、以下がその場面を記事にしたものです。

猫と人間 #譲渡会 猫にも人にも優しく 99匹 新たな飼い主に

NPO法人「たんばコミュニティハブ」の岩間里美理事長=丹波市

 ケージの中で身を寄せ合い、じっとこちらを見つめている猫。「わあ、目が合った。私を選んでくれたのかな」。来場者の若い女性の声が自然と高くなる。
 丹波市氷上町本郷の商業施設「ゆめタウン」前で毎月1回、仮設のテントを張って開かれる「保護猫譲渡会」。生後3カ月~2歳の猫17匹は、新たな飼い主との出会いを待っていた。
 主催は丹波市のNPO法人「たんばコミュニティハブ」。猫たちは、丹波地域や近隣市で同団体が保護した捨て猫や野良猫だ。
 会場のスタッフの中に、代表の岩間里美さんがいた。「猫に優しい社会は、人にも優しい社会」が持論。「ただの猫好きが、まさかここまでやることになるとは。どんどん深みにはまっています」と笑う。
 猫の保護に取り組み始めたのは2019年。最初は知人ボランティアの手伝いだったが、行政との連携などの面で個人の活動に限界を感じ、20年4月に自ら法人を設立した。
 以来、猫好きの夫や息子、スタッフと184匹を保護、99匹を新しい家族の元に送った。丹波市環境課の職員は「熱心に組織的に活動している。譲渡会の認知度は高い」とたたえる。
 譲渡は高いハードルを設け、時間をかけて行う。希望者はまず、申し込みで仕事や生活状況を申告。後日、岩間さんらの面談、審査を経て初めて猫と「お見合い」する。長くて1カ月のお試し飼育の後、誓約書を書き、やっと譲渡となる。
 慎重なのは、猫の置かれた過酷な環境を目にしているから。その最たる例が「多頭飼育崩壊」という。
     ■
 22年末、北播地域の独居高齢者が自宅で亡くなった。「猫が置き去りになっている」。1月、親族の許可を得て駆け付けた先は「ごみ屋敷」だった。
 住み着いていたのは、出入り自由な状態の飼い猫14匹。袋の破れたキャットフードをあさり、生きながらえていた。かごわななどで2カ月かけて捕まえるまで、誰も正確な数を知らなかった。
 環境省によると、18年度、多頭飼育で苦情があった世帯は全国2149件で、その6割が猫だった。丹波地域とその周辺でも珍しくなく、岩間さんも年に複数件に携わる。「困っているのは猫だけじゃない。飼い主も助けを求められずにいるんです」と話す。
 同省は21年に示したガイドラインで、多頭飼育問題について「背景に生活困窮や社会的孤立などがあり、社会福祉的支援の必要な飼い主が多い」とし、官民の連携が不可欠と指摘した。
 悪臭やごみを巡り関係が悪化した当事者と地域住民、行政の間に飛び込むのが、岩間さんらボランティア。いがみ合う人たちも、第三者には耳を傾ける。猫の環境へのてこ入れが、飼い主の生活の立て直しにつながることもある。猫の幸せそうな顔を見て、人に感謝されると、「意味のあることをしている」と思える。
 自宅兼事務所のシェルターには、まだ譲渡が決まっていない猫が78匹。つい眠る時間や自由な時間も削って世話してしまう。手元でこれ以上の数の飼育は難しく、負担の分散は今後の課題だが、世話は苦ではない。「猫を助けているけど、私も猫に助けられているんです」

(2023年4月22日神戸新聞)
たんばコミュニティハブが保護し、飼い主を募集している猫=丹波市

▼課題は子猫増の抑止

 法規制の強化やボランティア活動により、行政に引き取られ、殺処分される猫の数は年々減っている。環境省によると、2004年度には23万8929匹だった殺処分数は、21年度には1万1718匹にまで減った。県内(政令市、中核市除く)でも17年の1147匹が、21年には495匹になった。
 反対に新たな飼い主に譲渡される数は増えている。21年度、全国の行政に引き取られた猫の総数は3万4805匹。飼い主への返還・譲渡は2万3112匹に上った。改善の理由は、販売業者らへの規制を強化し、返還・譲渡を自治体の努力義務にした12年の動物愛護法改正や、ボランティア団体の活動とみられる。
 課題は子猫の増加の抑止だ。21年度の殺処分の63%は子猫。ほとんどは離乳すらしていない。大半が所有者不明で、野良猫や捨て猫以外に、外出した飼い猫が産むケースもあるという。
 環境省動物愛護管理室の担当者は「未熟な子猫は持ち込み時点で助からないほど弱り、殺処分せざるをえない場合が多い」。同省は屋内飼育の徹底や、地域で暮らす猫の不妊去勢手術を呼びかける。

(2023年4月22日神戸新聞)

 このシリーズ。こんな続きもあるんです。

猫と人間 #地域で飼う 住民の協力の輪広がる 「猫捨て山」劇的に改善

地域猫のため屋外に置かれた猫用の小屋=丹波市

 この場所は数年前まで「猫捨て山」だった。丹波市柏原町上小倉の「鐘ケ坂公園」周辺。丹波市と丹波篠山市の市境の峠に位置し、桜の名所として知られる。峠を貫く国道176号の騒がしさとは対照的に、公園へ続く脇道に人や車の影はない。
 「夜は真っ暗。人けがないから、いろんな所から人が来て捨てていたみたい。子猫が多かった」。猫の保護活動に取り組むNPO法人「たんばコミュニティハブ」(丹波市)理事長の岩間里美さんが言う。車で数分の距離に、自宅兼団体事務所を構える。
 同団体が公園周辺の夜間のパトロールや動物虐待防止ポスターの掲示などを続け、最近は捨て猫を見かけなくなった。だが団体を立ち上げたばかりの3年前には、捨て猫たちが峠の麓にある柏原町上小倉地区の人里へ下り、繁殖して住民を悩ませていた。
 田畑に残ったふん尿、生ごみあさり、発情期の深夜の鳴き声…。小さな集落内で十数匹にまで増え、人がいる民家の網戸を開けて上がり込むこともあった。国道に飛び出し、交通事故につながりかねなかった。
 猫の繁殖力は驚異的だ。1組のペアが3年後に2千匹になるとの計算もある。放置すれば猫は他の地域に広がり、野良猫の増加は殺処分の増加を意味する。岩間さんは猫の捕獲に乗り出した。
 子猫を含む12匹を捕まえ、全てに不妊去勢手術を施した。次はこの猫たちの行き先をどうするか。ボランティアが保護できる猫の数には限界がある。数匹は「地域猫」にすることになった。
     ■
 地域猫とは、特定の飼い主がいない猫のこと。野良猫を捕まえて手術した後、元いた場所で地域のボランティアが餌やふんの世話をする。活動は、捕獲、不妊・去勢、返還の英語の頭文字を取ってTNRと呼ばれる。繁殖によるトラブルや殺処分を減らす有効な手段で、世界中で導入されている。
 実践には、住民たちの理解は欠かせない。最初は「団体で全部引き取ってくれ」との声もあった。「世話や金銭的な負担を警戒し、最初は嫌がる人も多い」と岩間さん。それでも、住民説明会を開き「猫だけでなく人間の住環境の問題」と説得、自治会の総会で世話に必要な資金の寄付を呼びかけた。
 上小倉地区では現在、地域猫の数は2、3匹で抑えられ、岩間さんも見かけるのは週に数えるほど。地元自治会の飯谷寛二総代(69)は「本当に野良猫が減った。岩間さんの働きが大きい」と話す。一帯は桜の季節には鐘ケ坂公園への通り道で、今春にはドッグランを備えた里山ホテルもオープンした。「地域の外から来る人の印象も良くなったと思う」
 数が減ると、猫はトラブルの種から愛すべき存在になった。住民が「新しい猫が現れた」と教えてくれ、早期の不妊手術につながったり、ボランティア活動の手伝いを申し出る人が現れたり。岩間さんは協力の輪の広がりを感じている。
 「私一人がものすごく頑張るより、住民一人一人が今より少し猫を気にかける方が、よっぽど効果的」
 裾野を広げるため、岩間さんは丹波地域などで地域猫の普及活動や猫カフェと連携した飼い主募集などに力を入れる。「猫に優しい社会は人にも優しい社会のはず」。実現に向け一歩一歩、成果を積み上げている。

(2023年5月1日神戸新聞)
たんばコミュニティハブの招いた獣医師が猫の不妊去勢を行う簡易の手術室=丹波市
不妊去勢手術を受けたと分かるよう耳をV字にカットされた猫=丹波市

▼不妊去勢手術 資金確保が課題

 殺処分を減らすにはまず猫の繁殖を抑える必要がある。たんばコミュニティハブは、保護した猫や地域猫にする野良猫の不妊と去勢に取り組む。2020年4月の発足以来、789匹に手術を施した。
 同団体は月に2回、集団で手術を受けさせる日を設け、うち1回は神戸の獣医師を丹波に招いて柏原自治会館に手術室を設営。もう1回は神戸へと猫を連れて行く。耳の先端をV字にカットするのが「手術済み」の証しだ。形から「さくら猫」とも呼ばれる。
 手術の費用は雄1匹5500円、雌1匹7500円。費用は動物愛護団体や丹波市の助成でまかなうが、団体の持ち出しが生じることも多い。ほかにも保護した猫の餌代や交通費など出費はかさむ。
 代表の岩間里美さんは「自宅を事務所にし、募金や餌の寄付も合わせてやっと赤字がでないかどうか」と話す。資金面の改善に向け、物販の強化などを検討しているという。同団体への寄付はTEL090・3052・3296

(2023年5月1日神戸新聞)

神戸 保護猫への理解 楽しんで深めて 「ネコ市ネコ座」ファン集う マルも登場

 「楽しみながらネコ助け」をテーマにした全国最大級の猫イベント「ネコ市ネコ座」が11月18、19日、神戸市中央区小野浜町のデザイン・クリエイティブセンター神戸(KIITO)であった。保護猫カフェやシェルターなどを運営する「ネコリパブリック」(東京)の主催。全国から出店者が集まり、売上金の一部は保護猫活動の資金に充てられる。
 猫関連の雑貨や飲食店などが並ぶ「ネコ市」には国内各地から約90のブースが出店。ここでしか手に入らない猫グッズを買い求める多くの猫ファンでにぎわった。神戸新聞で連載中の創作童話「かなしきデブ猫ちゃん」のブースも設けられ、主人公のマルが店頭で記念撮影などに応じていた。
 ステージで行われた「ネコ座」では、保護猫活動を学ぶ「猫塾」や、獣医師よる「猫の病気・栄養学セミナー」、モデル・俳優で、保護猫と暮らす敦士さんのトークショーもあった。
      

(2023年11月23日神戸新聞)

 保護猫、地域猫のイベントなんですが、丹波地域とは違い、規模がとても大きいんです。この11月にデブ猫ちゃんもオファーを受け、会場に出展しました。とにかくすごいんです。メディアでほとんど告知もしてないのに、全国の猫好きが2000人も集結するんです。売っているものも、買う人も。猫一色でした!

 これまで猫についてほとんど理解していませんでしたが、デブ猫のマルちゃんを通じて、ずいぶん学びました。世に愛猫家がいかに多いかも知りました。愛猫家の解剖学者・養老孟司さんが飼っていた猫の名前が「マル」だったので、何冊か本を読んだことがあります。その中で気に入った言葉があるので、最後に記しておきます。猫に学んだことを問われた養老さんはこう答えています。
 「なまけること、手を抜くこと、欲を出しすぎないこと」―。ニャるほど!

<ド・ローカル>
 1993年入社。マルと兵庫県内を旅する中で、いろんな猫イベントに出演させてもらっています。今年の2月22日の猫の日には、神戸・北野異人館の萌黄の館であった「猫を愛する芸術家の仲間達展」に。同じ日には、神戸・新開地の喜楽館で、大の猫好きのはなしたちが集まる「猫LOVEウイーク」に行きました。猫(マル)がつなぐ縁で、出会いが広がっています。