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【更新】パリ五輪開幕!連覇目指す柔道・阿部兄妹の軌跡と進化

こんにちは、早くも夏バテ気味のぶらっくまです。皆さんお元気ですか。酷暑がまだまだ続きますが、こちらの〝熱い夏〟は楽しみです。26日(日本時間27日未明)開幕のパリ五輪です。

兵庫県ゆかりの日本代表選手は11競技36人。多彩な顔ぶれがそろいました。

中でも大会序盤の注目は、2大会連続で兄妹きょうだいによる同日金メダルを狙う柔道男子66キロ級の阿部選手(パーク24、神港学園高出身)、女子52キロ級の阿部うた選手(パーク24、夙川高出身)です。東京五輪と同様、パリ五輪でも同じ日(日本時間28日午後)にそろって登場します。

3年前の東京五輪での歓喜は、まだ記憶に新しい人もおられるでしょう。男女のきょうだいが同じ日に金メダルを獲得するのは、五輪史上初めてでした。

東京五輪での号外(一部を切り抜き)

2人の地元・神戸の市民らも今から声援を送っています。

校舎の壁面に描かれた阿部一二三選手=神戸市中央区山本通4、神港学園高校
ビルの壁面に描かれた阿部詩選手=神戸市灘区水道筋5

 パリ五輪で連覇を狙う柔道日本代表、阿部一二三選手と妹の詩選手(いずれも神戸市兵庫区出身)を描いた巨大なミューラルアート(壁画)が、神戸にお目見えした。
 両選手が契約を結ぶアディダスジャパン(東京)が企画。壁画アーティストとして活躍する兵庫県宝塚市のKAC(ケエシ)さんと那覇市のRISE(ライズ)さんが手がけた。
 一二三選手の母校・神港学園高(神戸市中央区)では、西側の校舎壁面に高さ約10メートル、幅約15メートルにわたって無地のシートが貼られ、スプレー缶で鮮やかに着色。道着の編み目や陰影が細かく描かれ、躍動感あふれる姿に仕上がった。同校3年で女子柔道部の山本花純さん(18)は「一本で金メダルを取ってほしい」と期待を寄せた。
 水道筋商店街(同市灘区)北側では、5階建てビルの壁面に高さ約10メートル、幅約8メートルの詩選手が登場。相手を見やる眼光は鋭く、手にできたタコなど努力の形跡がうかがえる。行き交う住民は足を止め「詩ちゃんか? 頑張ってほしいね」とエールを口にした。

2024年7月26日 「神戸新聞NEXT」配信記事より抜粋

神戸新聞も2人が子どもの頃から、成長と活躍を追いかけ、応援してきました。兄の一二三選手が写真入りで初めて掲載されたのは13年前、中学2年生の時でした。

2011年8月26日付 神戸新聞朝刊記事

中学3年生の時には既に、取材に「五輪で金メダル」という目標を語っていました。

2012年9月7日付 神戸新聞朝刊記事

高校進学以降も、一二三選手は目標に向かって飛躍を続けます。上の記事にある「オール一本(勝ち)」の見出しは、その後もたびたび登場することになります。

2014年1月26日付 神戸新聞朝刊記事
2014年8月4日付 神戸新聞朝刊記事
2014年8月18日付 神戸新聞朝刊記事
2015年6月7日付 神戸新聞朝刊記事
2015年8月10日付 神戸新聞朝刊記事
2017年4月2日付 神戸新聞朝刊記事

並べると壮観、圧巻ですね(これ以外にもまだまだあります)。当然ながら、こうした活躍に至るまでには、月並みな表現ですが、血のにじむような努力の日々があったのでしょう。

そして、兄の大きな背中を見ながら、妹の詩選手も頭角を現していきます。

2013年7月30日付 神戸新聞朝刊記事
2014年12月8日付 神戸新聞朝刊記事
2015年8月4日付 神戸新聞朝刊記事
2017年3月20日付 神戸新聞朝刊記事
2017年11月13日付 神戸新聞朝刊記事

兄妹が一緒に紙面を飾る機会も増えていきます。

2017年12月3日付 神戸新聞朝刊記事
2018年9月22日付 神戸新聞朝刊記事
2020年2月22日付 神戸新聞朝刊記事
2023年5月9日付 神戸新聞夕刊記事

試合以外の場でも、さまざまな形で地元紙に登場してくれています。

高校の卒業証書を手にする阿部詩選手=2019年3月、神戸市中央区
地元の神社に初詣に訪れた阿部兄妹=2020年1月、神戸市兵庫区
東京五輪の金メダルを手に神戸新聞社を訪れた阿部詩選手=2021年11月、神戸市中央区
新型コロナ禍のため延期になっていた成人式に出席した阿部詩選手=2021年12月、神戸市兵庫区のノエビアスタジアム神戸
パリ五輪に向けた地元での壮行会で、目指す2連覇を手で示す阿部兄妹=2024年4月、神戸市中央区

兄に通じる、詩選手の「一本を取る柔道」の原点を、かつての恩師に取材した2019年の記事を紹介します。

「一本取る柔道」うたの原点/真っ向勝負 褒め伸ばす/「お兄ちゃんがするなら詩もする」

世界選手権女子52キロ級で2連覇し、金メダルを手に笑顔を見せる阿部詩選手=2019年8月、東京・日本武道館

 8月26日に行われた柔道の世界選手権女子52キロ級で2連覇を飾り、来夏の東京五輪出場に大きく近づいた阿部うた(19)=神戸市兵庫区出身。兄で男子66キロ級銅メダルの阿部(22)とともに地元の柔道クラブで、監督の高田幸博さん(55)=同区=に「一本を取る柔道」を教えられた。

 「これが阿部詩だという柔道を見せたい」
 大会前にそう宣言していた通り、攻めの柔道を貫いて頂点に立った。
 兵庫署内の柔道場を拠点とする「兵庫少年こだま会」に、一二三を追って入会したのは5歳の時。当初、道場内でよく泣いていたという兄とは対照的に、「お兄ちゃんがするなら詩もする」といつも強気をのぞかせていた。
 「やると決めたら譲らない精神、こだわりは他の子と違った」と高田さんは懐かしむ。同会のレクリエーションで参加したボウリングや水泳でも、一度関心を持ったら小さな体でやり抜いた。
 その性格は競技にも通じ、兄が新たな技を覚えると、自分も稽古を重ね、いち早くものにする。常に兄の背中を見続けた。
 高田さんが教えたのは「ポイント稼ぎではなく、一本を取りにいく柔道」だった。試合では、大柄な相手に真っ向勝負を挑んでつぶされても「正面から行って負けたのなら、あっぱれ」と責めず、しんに取り組む姿勢を評価した。「その場しのぎでなく、正々堂々と戦うことが、今後生きていくために必要だから」

2019年8月27日付 神戸新聞朝刊記事より抜粋

兄妹の強さの裏には、家族のサポートもあります。下は、東京五輪で金メダルに輝いた直後の記事です。

 戦っているのは兄妹2人だけではなかった。7月25日の東京五輪柔道でともに金メダルに輝いた男子66キロ級の阿部(23)と女子52キロ級の阿部うた(21)を、家族は力の限り支えた。父は子どもと一緒にトレーニングをして世界一への夢を語り、母は食事や精神面でサポート。強い絆で結ばれた「チーム阿部」の晴れ舞台だった。激戦を終えた詩は言った。「やっと2人で少し恩返しができた。感謝の気持ちしかない」

 神戸市兵庫区の下町、和田岬に生まれ育った一二三と詩。父の浩二さん(51)はかつて国体にも出場した元競泳選手だが「体が小さい僕ら夫婦から生まれる子どもたちには、相手と同じ土俵で戦える体重別競技がいい」と柔道を勧めた。
 一二三は6歳の時、地元の兵庫少年こだま会で稽古を始めた。「投げられて投げられて。泣きながら通っていた」と母の愛さん(49)は懐かしむ。あまりに泣きやまないので、長兄の勇一朗さん(25)が見守り役で入会したほどだった。
 消防士の浩二さんは当時、一二三とともにトレーニングに汗を流した。よく訪れたのは近所の御崎公園。走って心肺能力を高め、重いボールを投げ合っては体幹を鍛えてきた。
 やがて国際舞台で頭角を現した兄を追うように、詩も夙川高3年で世界選手権を制し「怪物になりたい」と大胆不敵に言い放った。だが、神戸の親元を離れて日体大に進学した時には、1人暮らしの寂しさに押しつぶされそうになった。
 「だいぶメンタルをやられていた」(浩二さん)という娘が競技に専念できるよう、愛さんが上京して同居をスタート。温かいご飯を用意し、たわいもない話に耳を傾け、世界女王の不安と重圧を和らげた。
 新型コロナウイルス禍に襲われた2020年は「総力戦」だった。浩二さんは定期的に上京。畳の上で組み合う稽古ができない息子や娘と一緒に200段以上の階段ダッシュに挑んだ。神戸に戻っても毎日10キロを走破。「自分もしんどいことをして、プレッシャーを共有したかった」と話す父に、一二三は「一番大きな存在」と信頼を寄せた。
 自国五輪の看板選手に育った息子と娘に「僕らは毎日、幸せをもらっている。感謝しかない」と浩二さん。コロナ禍で無観客となった五輪は家族でさえ会場に入ることができず、両親と勇一朗さんは東京都内でテレビ観戦した。五輪の東京開催が決まった13年、「兄妹2人で出られたら最高やなあ」と家族で描いた未来図は、日本史上初となる男女のきょうだい同日金メダルという最上の形で現実となった。

2021年7月26日付 神戸新聞朝刊記事

パリ五輪を前に、父の浩二さんが東京五輪後の2人の「進化」を語ってくれました。

阿部一二三、詩への思いを語る父の浩二さん=神戸市兵庫区

 神戸が世界に誇る男子66キロ級の阿部一二三(26)=パーク24、神港学園高出身=と、妹で女子52キロ級の阿部詩(24)=パーク24、夙川高出身=が同日2連覇の偉業に挑む。順当なら決勝は日本時間29日未明。父浩二さん(54)は「(2人とも)精神的に一つも、二つも上がっている」。その語りから東京五輪を経た進化の姿が浮かび上がる。

 ■女子MVP
 まずは詩。前回は準決勝で7分、決勝で8分を超える延長戦を制したが、両肩は大会後に手術を余儀なくされたほどの状態だった。
 「あんまり良くないと聞いていたが、そこまでとは思わなかった」と浩二さん。引っ張られ方によっては肩が外れる。そうなれば負けていた。担当医からは「『とにかく抜けるのだけはやめてくれ』と祈っていた」と聞いた。東京五輪前、医師と練習パートナーは不安を与えないように詩にも伝えずにいたが、父にすれば「そんなつらい状態でよう勝ったな」と感心するしかなかった。
 手術後のリハビリにも時間を要し、詩は半年間も畳から離れることになった。トップアスリートにとって影響は大きいはずだが、「復帰するのが楽しみだった」と詩は言い切る。万全な体を取り戻して強さに磨きがかかり、昨年まで2年連続で国際柔道連盟の女子最優秀選手に輝いた。

 ■命懸け
 一二三は東京前の道のりが険しすぎた。語りぐさになっている丸山城志郎(30)=ミキハウス=との死闘。6試合分に相当する24分間の日本代表決定戦を制し、2年以上の争いに終止符を打った。当時を思い返す浩二さんの言葉には今も切迫感が残る。
 「みんながデリケートになっていた。負けたら終わりのプレッシャー。もしアカン(敗戦)かったら24時間、誰かが付いておかないといけないと思った」
 極限の闘いは無双への足掛かりになった。一二三は「プレッシャーに押しつぶされそうな日もあった。気持ちの強さは誰にも負けない」。鋼の心が圧倒的な力を引き出し、ここ5年は負けなしだ。

 ■遠距離エール
 母の愛さん(52)は詩を支えるために上京。消防士の浩二さんだけが神戸に残るが、試合前には必ず2人の稽古に顔を出す。「張り切ってくれる」と、ひそかな喜びにしている。
 父なりにエールも送っている。自らの「戦い」として毎日10キロを走り、インスタグラムに「今日も勝ちました!」と動画を投稿する。詩は「インスタを始めてとは言っていない」と苦笑いするが、事あるごとに「一番戦ってくれているのは父」と口にする。
 東京五輪は新型コロナウイルス禍による無観客で、肉親ですら会場に入れなかった。だが、今回は違う。浩二さんは「見る時はドキドキでしかない。しかも同じ日に2人。一つ勝ったと思ったら次が出てくる。ぜいたくな悩みですけどね」。パリの会場で、輝く息子と娘を見届ける。

2024年7月26日 「神戸新聞NEXT」配信記事より抜粋

再び迎える五輪の舞台。神戸から精いっぱいの声援を送りたいと思います。頑張れ!阿部きょうだい!!