プロダクトデザインの実践と小林さんの総括【大洋真珠・藤原化工・ヤノ技研・神戸熔工】
2021年度の参加企業ととりくみについて、最後はプロダクトデザインチームの4社です。岩野さん担当・組織デザインチームの4社、星加さん担当・ブランドデザインの4社は下記から。
<プロダクトデザイン①>ブランド生かし、若い世代に向け新商品を開発したい:大洋真珠株式会社
大洋真珠は、これまでメインの取引先である百貨店を通じて販売してきましたが、販路拡大のため特に若年層をターゲットにした小売の強化を目指し、新商品を開発しようと考えています。それにあたって20年前に真珠ネックレスの糸替えのブランドとして立ち上げた「パールクリニック」ブランドをあらためて再構築することを決めました。具体的にターゲットを「神戸に住む社会人3年目、25歳女子」と定め、SDGsやエコの観点も加え現代風にアレンジすることを考えています
ブランディングのためにまず世界観を作ることから始め、海の自然環境に優しいブランドとし、HPには色味をジュエリーと人肌のみに限定することでシンプルなイメージを打ち出し、材質についても淡水パールと無垢のシルバー925を使うほか、モデルや音楽も決めました。また、エコの観点からアップサイクルのサービスとしてリペア(修理)だけでなく、リフォーム(作り替え)、リユース(素材として利用)のメニューもそろえました。
担当メンターの小林氏は「パールクリニックというブランドの価値を掘り下げ、社外のデザイナーに対してこういう商品を作ってほしいと明確に伝えられるレベルまでブランドイメージを固めることができたのではないかと思います」と述べました。
<プロダクトデザイン②>ブランドを再構築し、新商品を開発したい:藤原化工株式会社
婦人靴製造販売の藤原化工は、軽量、純国産にこだわった50、60代向けの「アシオト」というオリジナルブランドで商品を展開しています。ただ、認知度が低く、ブランドカラーもないため平場の売り場で埋もれてしまっていることが問題となっていました。そこでネット販売を考え、ネットユーザーである若い世代にアプローチできるブランドとし、ブランドカラーを含めブランドを再構築することにしました。
ターゲット年齢は35~40歳の美意識が高く身につけるものにこだわりのある層とし、価格帯は靴で3万円、ショートブーツで4万円を想定しています。また仮のロゴとしてツバメのデザインを採用するほか靴の中の色もブルーにすることで軽く、親しみやすいイメージを打ち出すことにしています。売り場のデザインについても、ダンボールの木に、枝を束ねた鳥の巣状のオブジェを載せ、そこに靴を置くことを考えています。今後は、ブランド名なども決めたうえで、インフルエンサーなどを活用して認知度を高めていくことにしています。
担当メンターの小林氏は「中間報告会では靴のまま履けるスリッパの商品化を進めてこうとしていましたが、まずはどのようなブランドにするかしっかりとイメージを決めることからまず始めることにしました」と、ブランド再構築の取り組みについて語っています。
<プロダクトデザイン③>蓄熱材の技術を医療分野に展開したい:株式会社ヤノ技研
ヤノ技研では、-21℃から87℃の範囲で一定温度にコントロールできる蓄熱材の技術を用い様々な製品にしています。主力商品はビニールハウス内温度を一定に保つ「省エネ用蓄熱カプセル」ですがコロナ禍による温室農業の低迷が直撃し、売上高が20%に減少してしまったとのこと。そこでこれを打開するため、蓄熱材の新たな用途として、検体(尿、唾液など)の分析精度向上のため低温輸送ニーズが拡大していることに着目。試料用簡易低温輸送装置を開発しました。
担当メンターの小林氏から紹介された検査会社が興味を示し、検体容器を簡易宅配便に収められること、一定温度で決められた日数保冷できること、100回以上再利用できることを条件に開発に着手。保冷容器のデザインも小林氏が行いました。開発の財源として事業再構築補助金には採択されたものの、実際に補助金が下りるまでのつなぎ資金の確保が目下の課題とのこと。今後は試作品を製作し、実験を行ったうえで、今後需要の拡大が見込めるがん検査など向けに採用先を拡大していく計画です。
メンターの小林氏は「ミスが許されない業界向けだけに、誰が使っても使いやすくミスが起きないデザインにすることが一番求められます。トータルでデザインを考え、ぜひ採用に結び付けていってほしい」と事業化への期待を込めて語っています。
<プロダクトデザイン④>鉄スクラップを使ってワクワクするものづくりがしたい:神戸熔工チーム
神戸溶工チームは神戸市機械金属工業会の青年経営研究会で共に学ぶ機械加工業2社、製缶板金業1社、製鋼原料卸業1社の若手経営者4人で構成するものづくりプロジェクトチームです。4社の持つ資源、技術を生かし「UPCYCLING-無駄を楽しむ」をビジョンに、一度役目を終えた鉄スクラップを生かし、グループメンバーの技術力を生かすことのできる製品づくりを考えました。仲間同士キャンプに出掛けることが多いことをヒントに今回製品化したのが「焚き火台(スモクレス)」です。
煙の出にくい焚き火台は薪を放り込むと2次燃焼しそのまま炭ができる構造になっており、その上で調理ができるよう鉄板もセットにしました。30代以上の道具にこだわりのあるDIY好きのグループキャンパーやグランピング施設をターゲットとし、想定価格等も検討しています。今後は鉄板に取っ手や油受けを設けるなど改良を加えるほか、収納ケースなどのオプション用品の充実も図る予定です。そして、さらにコンセプトやデザインを固め2023年春開催のギフトショーへの出展を目標にしています。
担当メンターの小林氏は「炭を作ることができ焚き火台にもなる道具はありそうでなかった。卓上型やサイズ違いなど横展開も可能で、知財を押さえ世界市場も狙えるのでは」と期待を込めて可能性を語っています。
プロダクトデザイン担当メンター 小林氏による総括
組織が大きくなるとどうしても物事を合理的に考えなければならなくなりその過程で抜け落ちてくるものが出てきてしまいます。その時にデザイン経営の視点は会社のあり方をとらえなおす良い機会になるのではと感じています。そして課題の多くは組織のコミュニケーションに原因があり、それを円滑にすることで課題の多くは解消されるような気がしています。本プログラムがデザイン経営を体感する良い機会になったでしょうし、卒業後もメンバー同士成長を確かめ合える交流の機会を設けても良いのではと思っています。
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