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シン・長田を彩るプレイヤー~人と人をつなぐ、ミャンマー料理店主~(後編)


今回のインタビューは長田でミャンマー料理店、TeTeを営む登美子さん。

前編では、服飾関係のお仕事を辞め、ミャンマーと出会った経緯、そして日本へ帰国し、長田でお店を開くに至るまでをお聞かせいただきました。

前編で明かされた、「TeTeは旦那さんがされるはずのお店だった」という衝撃の事実。
登美子さんはなぜ長田でお店を続けることができたのでしょうか。

この後編では、登美子さんからみた「長田」をお伺いしていきます。

長田ではなんでも借りられる

-記者-
長田でお店を開くことには、不安はなかったですか?

-登美子さん-
長田がどんなところかはなんにも知らなかったんですよ。

実際に来てみて、垣根がなくてすごい東南アジアっぽくて、そこが良いなって感じですね。楽ですし。

長田ではなんでも周りの人に借りられるんですよ。
卵とか、油とか、ごはん貸して~とか。

ミャンマーでもそうだったんですよ。それをここでは許してもらえる。

-記者-
確かにそういうの日本では珍しいですね。

日本はどちらかというと、ギブアンドテイクというか、やってもらったら、ちゃんとお返しするみたいな感じですよね。

-登美子さん-
やってもらったことを、その人に返さなくても、どこかで誰かに返せたらいいと思います。

-記者-
たまたま来た長田が、登美子さんの肌に合ってたんですね。

-登美子さん-
長田じゃないところでやってたら、もう辞めていると思いますね。


-記者-
丸五市場以外の長田の方とも交流はあるんですか?

-登美子さん-
今はコロナであまり交流がありませんが、以前はイベントもあったので、いろんなお店の方と交流して友達はたくさんできました。

みんな気さくで喋りやすいんで、1人で暇やなってときに落ち込むこともないですね。

「みんな暇やん!どこも暇やで!」とか言ってますね。

-記者-
長田はお店の方も本当に気さくな方が多いですよね。
「めっちゃ話しかけてくるやん」みたいな。
三宮とかとは全然違いますね。

-登美子さん-
みんな話すん好きなんでね~(笑)
立ち話したら止まらないんです。
暇なときはみんな集まって喋ってる。

長田に来るとほっとして居心地がいいんですよ。
同じ神戸市内でも、住んでる北区はまたちょっと違いますね。

長田の人は〇〇がない

-記者-
TeTeを長田で開かれて、苦労されたことを教えてください。

-登美子さん-
ミャンマーのカレーって日本のカレーと違うから、最初は「なんなん、これ」みたいなことをよく言われました。

長田の方って食べ物に関しては意外と保守的なんです。
長田には安くておいしいものがいっぱいありますし、長田の方は長田の食べ物が一番なので、ミャンマー料理なんか…みたいなところはありました。

でも頑張ってたら、何回か食べに来てくれて「ありやな」って褒めてもらえるようになりました。
あとは、「どっかいいお店ない?って聞かれたから、TeTeさん勧めといたよ!」って言ってもらえたり。

-記者-
だんだんと長田に馴染んできたんですね。

-登美子さん-
長田の人はとにかく素で裏表がないので楽ですね
、変に見栄張らんでいいし。

-記者-
そこもちょっとミャンマーと似てるんでしょうか。

-登美子さん-
そうですね、面白いですね。

心を豊かにする「人」との出会い

-記者-
お店をされるうえで、特に大事にしていることはありますか?

-登美子さん-
やっぱりここで出会った人っていうのはすごく大きい存在ですね。
TeTeをやってなかったら出会わなかった人が多いですから。

TeTeでお客さんと色んな話をしたり、悩みをちょっとでも聞くと、その人のことがずっと気になります。
またその人が何年かしてふらっと来てくれたら凄い嬉しいから・・・。
そういうのがあるともう辞められない!また来てくれるかもしれないと思うと。

人の出会いっていうのは、自分の心に蓄積されて、豊かになりますし、そういう想いは大事にしたいので・・・まあ頑張ろうかなって(笑)

今日もこうやってね、TeTeを開いてなかったら、こんなに私のことを聞いてくれる若い方なんていないので、それだけでも嬉しいですよね。
こんな機会ないですよ(笑)

-記者-
TeTeは登美子さんにとっても、素敵な出会いの場所なんですね。

-記者-
今後の展望は何かお考えですか?

-登美子さん-
実は、10年以上前に田舎暮らしにも憧れて。
無謀にも京都に古民家を買ってしまったんですよ!

しばらくそのまま放ったらかしにしてたんですが、去年の春から久しぶりにまた手を入れて。
いずれはそこで、何かしたいなと思って。

何になるか分からないんですけど、キャンプ場にしようかなとか、カフェにしようかなとか色々考えてます。

-記者-
まだまだやりたいことがいっぱいあるんですね。
完成時期は未定ということですか?

-登美子さん-
まだまだですね~5年くらいはかかりますね。
全部自分たちでやってますし、しかも月に2回くらいしか行けないので(笑)

でも、去年は向かいの焼酎居酒屋の店主さんや、お客さんの若い子たちも手伝ってくれたおかげでかなりはかどりました。

-記者-
長田で築き上げた人間関係がどんどん広がってるんですね。
素敵です。
完成しても楽しいし、完成するまでもみんなで楽しいですね。

-登美子さん-
そこで仲良くなっていく人もいっぱいいますね。

つながりが生まれる場所

-記者-
最後に、登美子さんにとってTeTeとはなんでしょうか?

-登美子さん-
TeTeとは私の居場所ですね。
人とつながる場所です。

なんか、料理屋さんやのに全然料理屋さんっぽくないんですよね。
自分で言うのはおかしいんですけど(笑)

ご飯を食べてもらって、美味しいって思ってもらって、そこから話ができるっていうのが大事なんで。

食べてもらったときに、「ちょっと喋りたいな」と思ってもらえるような料理を作らないといけないと思ってます。

-記者-
TeTeはみんなのつながりを作っていく、そんな場所なんですね。

お話を聞いてても、そういう場所なんだろうなっていうのがすごく伝わってきました。
今日はお時間いただき本当にありがとうございました!

取材後、長田のお気に入りのものや場所ってありますか?と尋ねたところ、

「前に雲の写真を撮っていた時があって、夏に雲がめっちゃきれいに見れるところがあるんですよ、そこ!」と教えてくださりました。

場所のヒントです。(一つの場所です)
・コンテナの見える、見晴らしのいい場所
・六間道を駒ヶ林とは反対側に、東側に行ったところの開けた土地
・川を越えたところの釣具屋さん付近


長田を散歩するときには登美子さんお気に入りの空を探してみてくださいね。

登美子さんが撮影した雲


ちなみに登美子さんは、お子さんが夏休みの宿題に雲調べをしていた際に家の周りの雲の写真を撮っていたらご自身がハマってしまったそうです。

「自転車であちこちうろうろしてたら、その場所がベストポジションでしたね。夏だと入道雲がもくもくもくってしてますね」

いつでも行動的な登美子さんに思わず笑みがこぼれました。

初めてのことに挑むときも恐怖は全くなく「面白そう!」と思われる登美子さん。
インタビュー後は、何か新しいことを始めよう!と思わず決意してしまうような晴れやかな気持ちでした。

前後編の2回ではとても収まりきらない楽しいお話たち。

またお店を訪れた際には、世界一のサモサをいただきながら、たくさんのお話を聞いて、私の話も聞いてもらいたいなあと思います。

(編集:神原・みっちゃん)