〈そばめし〉第7回 長田の“冷麺”といえば、やっぱり…
今回は、西代駅近くのおでん屋さん「酒処よしや」にて、初代店主の今井弘子さん、娘で2代目の由美さん、その息子の直人さんに話をお聞きしました。
弘子さんの夫が3代目店主をつとめていたお隣の酒屋さんから派生して、1967年に開店。「周辺にはケミカル靴関連の工場、隣には山陽電車の車庫と宿舎があったから、一升瓶3本分が売り切れるほど、毎日にぎやかなお店でした」と弘子さん。
“おでんの命”である出汁の作り方を受け継ぎ、由美さんが店主になったのは2010年頃。昆布と鰹で丁寧に基本の出汁をとり、塩と砂糖のみで味付け。醤油は使いません。やさしい味わいのおでんを食べに来る常連はご近所のシニアが多く、「18時がピークで、19時になったらみんな帰る」と直人さん。由美さんが絶妙な距離感で話を聞いてくれるから、私には一人飲みに最適。
ところで、由美さんの“長田の一番のごちそう”とは?
「『平壌冷麺』さんの冷麺」と由美さんが答えれば、「中華冷麺とは違うよ」と弘子さんが教えてくれる。「元祖 平壌冷麺」は、1939年に創業し、あの透明でつるっとした食感の “平壌冷麺”を日本ではじめて出したという、言わずと知れた名店です。「物心ついた時から食べているから、私にとっては平壌冷麺が “冷麺”のスタンダード。親子3世代に渡り、これでもかというくらい、お酢をたっぷりかけていただきます」。
ちなみに、直人さんは、隣の旧酒屋を活用して中高生の居場所「はなれ」を運営しています。まちや人を大事にする姿勢や行動力は、おじいさんの代から受け継がれてきたマインドなのだとか。その話は、またの機会に。