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シン・長田を彩るプレイヤー ~神戸・長田からデザイン・アートの循環経済をつくる~(後編)

本記事では「神戸市のアーティスト・クリエイティブ業界の現状」と「岩本さんの仕事のこだわり」についてお伺いします。

岩本順平さん
長田区でCreative unit DORを運営しながら、写真家を主軸に、印刷物やウェブサイトのデザイン、宣伝写真、映像制作、企画など幅広く活動されています。

クリエイティブな仕事の経済循環を作りたい

-記者-
岩本さんはデザインやアートの地産地消をキーワードにDORを運営していると思いますが、設立のきっかけはなんですか。

-岩本さん-
「DOR」を設立したきっかけは、神戸市内のクリエイターが市内のクリエイティブな仕事をしていることが少ないな、と感じたからです。
2015年から下町芸術祭をやり始めて、神戸にアーティストとかクリエイターが増えてきたけど、一方で仕事がないがために、地域外に出ていってしまうということがあったんです。
それがすごくもったいないなあって。

-記者-
たしかに仕事がないからという理由で出ていくのは凄くもったいないですよね。

-岩本さん-
そうなんです。
同時に、神戸市や兵庫県の方たちと、市外や県外からの移住促進のPRをしていたこともあって、移住促進してるのに、僕の周りでは流出していく、というすごく逆のことが起きているなあと感じていました。
だったら仕事をもっと作ろう、今ある仕事をもっと受けられるような環境を整えようということで、「DOR」を設立しました。

-記者-
先ほど「市内の案件を担っているクリエイターが少ない」っておっしゃったんですけども、そもそもクリエイティブな仕事の需要は神戸にあるが、それが回ってこないということですか?

-岩本さん-
そうです。
僕の感覚ですが、2015,16年あたりって神戸の地域の仕事なのに大阪の会社にもよく振られていたし、少し大きい案件やったら東京の代理店が出てきて、なぜか東京からカメラマン連れてくるとか。
やっぱそれやと面白くないなと思って。

-記者-
そこの経済循環みたいなものをDORで作りたいということですか?

-岩本さん-
そうですね。
当然市外に振った方が良い案件があるのは理解しつつ、そこまで理由もないのであれば市外の事業者を使う必要はない。
中のクリエイターを使っても良いんじゃないかって。
先ほどのような状況があったので、神戸市のクリエイターを活用していくために長期的に環境を整えてきました。
DORで直接受けることもあれば、パートナー企業に外注することもあります。
その結果もあって、大分良い状況になってきているかな。

断るのが苦手

-記者-
事前アンケートに「信頼できる方からの依頼ならなんでもやる」と書いてあったんですが、なぜそう思うんですか?

-岩本さん-
声かけられて断るのがめっちゃ苦手なんですよ(笑)
別にやりたいかどうかより依頼相手の相談に乗っていたら面白くなってきて、一緒に考えてるだけです。
正直、「えー、そんなんせなあかんのー」みたいなこともあります(笑)
例えば、「お店の人が照明変えたいって言ってるねんけど、相談乗ったってくれへん?」みたいな。
そういう事務所ちゃうけどな…と思いながら、できることはやってますね。
他にも、六甲山の間伐材を使ったベンチをつくったりもしてます。

-記者-
そんなこともされてるんですね(笑)

-岩本さん-
六甲山の間伐材を使ったベンチは毎回オーダーメイドで作るんですけど、DORは別に六甲山間伐材を取り扱ってるわけでもないのに「間伐材使ったベンチを作ってほしい」って言われるんです。
だから他のクリエイターの方と協力して、資材調達・運搬を手配して色々とやって組み立てるみたいな。
あ、これほとんど僕じゃなくて合田さんがやってるんですけどね(笑)

※合田さんは新長田で活動する建築家です。過去記事(「新長田を彩るプレイヤー 〜木を愛し、新長田を愛する建築家〜」で紹介しています。
(前編)https://note.com/kobe_nagata_ward/n/ncbe0ddd9ff06
(後編)https://note.com/kobe_nagata_ward/n/n93b2960644f1

-記者-
すごいですね!

-岩本さん-
まあ、断るのが苦手なだけだと思います(笑)

好きなことをやって貢献する

-記者-
地域貢献とか街の活性化のところで、シタマチコウベを運営していると新聞記事で知ったんですけど。

※「シタマチコウベ」https://shitamachikobe.jp/

-岩本さん-
まあ、地域貢献もそうなんですけど、好きだからやってるんです。

-記者-
その結果が、地域の活性化につながったと?

-岩本さん-
つながってるんですかねー笑
結果がどうなってるかは、まだわかりません。
ただ、仲良くなった人がたまたま漁師で、その人から「今困ってて」って相談を受けると、じゃあ何かする?みたいなことがあります。
例えば、駒ヶ林の魚を売るイベント「海と、魚と、」を企画したりとか。

※参照:https://www.city.kobe.lg.jp/a67688/press/20220218_fish.html
写真:岩本 順平

-記者-
フィッシャーマンズマーケットですか?
大盛況でしたね。

-岩本さん-
そうなんですよ。
それとか、たまたま先輩のクリエイターから誘われて、神戸市の北区と市街地を繋ぐために、食の生産地と消費地を繋ぐっていうプロジェクトをやったり、出会った農家と仲良くなって、そこでも相談受けるうちに「Urban Farming」に関わってたりとか。

-記者-
すごいですね、どんどん繋がっていくっていうのは。

-岩本さん-
そうですね。
今は瀬戸内のクリエイティブネットワークである「瀬戸内経済文化圏」のプロジェクトにも参加しています。たまたま、すごく尊敬する大阪のデザイン事務所の大先輩と色々と活動している中で、そんな動きに加わることができました。そうしていたら、神戸から瀬戸内の島々をめぐるアイランドホッピングのツアーを開発しようという流れになって。どんどん瀬戸内とのつながりが深くなってきました。
実際、もうちょっと神戸市外に活動を広げようと思っています。広がることで、僕自身のレベルアップにもつながると思ってて。
ただDORは兵庫県内の案件を地元のクリエイターと連携し制作することが良さなので、DORで外の地域の案件を受けるのもちょっと違和感があって、そこの棲み分けを今後やろうとしています。


編集後記
岩本さんの神戸への思い、人との向き合い方がつまったインタビューでした。
特に「依頼相手の相談に乗ってたら面白くなってきて、一緒に考えてるだけです。」というエピソードが、岩本さんの断れない性格や楽しんで仕事をしていることを感じとれるもので、すごく素敵だと思いました。
(編集者:aoi)