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《ファルスタッフ》ができるまで その3 “タイトルロール”は黒田博さん

森岡めぐみ
 さて、ときは2021年年末、神戸文化ホール開館50周年記念のオペラに、ヴェルディの傑作《ファルスタッフ》を上演しよう!と盛り上がりました。盛り上がったのはいいのですが、すぐさま直面したのは「主役は誰にお願いするか?」です。主役“ファルスタッフ”を歌ってくれる歌手、これは重要です。
 《ファルスタッフ》のように、主役の名前が作品タイトルになっているオペラはいくつかあります。たとえば《カルメン》、《トスカ》、ほかにも《ローエングリン》(名前がネタバレになっていないか??)、《ヘンゼルとグレーテル》(まんま、ですね)…題名役(タイトルロール)は作品を牽引する存在、上演の要です。今回の神戸のプロダクションは、合唱団主体のアンサンブル・オペラをつくるというもくろみではありますが、タイトルロールに関しては、ここぞという素晴らしいゲストをお迎えしたいところです。
 そのとき、打ち合わせの場にいた皆の頭にすぐさま浮かんだファルスタッフ役は、バリトン歌手の黒田博さんでした。日本を代表するオペラ歌手として活躍されている黒田博さんは、その年7月の二期会創立70周年記念公演《ファルスタッフ》でタイトルロールを歌って評判となったばかりでした。佐藤正浩音楽監督、演出の岩田達宗さんと同世代で、彼らとも気心が知れた名歌手です。京都ご出身で、関西とも縁が深い。「黒田さんが引き受けてくれるなら・・・このオペラは成立できる!」、メンバーの総意はこうでした。
 明けて2022年初頭、まずは黒田博さんのマネージャーさんと面会の約束を取り付けました。黒田博さんは、わたしにとっては憧れの存在。これまで《フィガロの結婚》の伯爵役、《ドン・ジョバンニ》のドン・ジョバンニ役(これもタイトルロール役ですね)でご一緒したこともあり、女性にはモテモテの役柄がぴったりでした。そんなすてきな黒田さんに、太って、お金に汚くて、女性に言い寄って嫌われる老騎士ファルスタッフ役をお願いする!?黒田ファンとして複雑な想いを抱えながらマネージャーさんにご相談したところ、明るくご快諾!!いただいたのでした。
 さて、黒田さん、どんな思いでこの役を引き受けてくださったのでしょうか。
8月の神戸での音楽稽古のときに、ご本人のコメントをいただきました。※皆様、どうぞご覧ください。黒田さんらしいユーモア、最高ですね。人生の悲哀も漂わせる、魅力的なファルスタッフ出現の予感・・がします。(音楽稽古でも、それはそれはすばらしかったですよ)
 雑誌『音楽の友』11月号でも今回の公演についてのインタビュー(取材・文:室田尚子氏)に答えてくださり

『音楽の友』11月号

二期会でのファルスタッフ役を「とにかく演じていて楽しかった」と振り返っておられます。その昔、神戸文化ホールでのオペラ公演に合唱の一員として参加したのがご自身のオペラデビューだったと、同記事で語る黒田さん、同じホールで「ヴェルディの最高傑作である《ファルスタッフ》を演じるという巡り合わせに、いま、とてもワクワクしています」と語ってくださっています。はい、わたしたちも、ワクワクしています!(つづく)

公演情報

ヴェルディ:オペラ ファルスタッフ
全3幕〈イタリア語上演・日本語字幕付き〉
[作曲]ジュゼッペ・ヴェルディ
[台本]アッリーゴ・ボーイト
[原作]ウィリアム・シェイクスピア『ウィンザーの陽気な女房たち』『ヘンリー四世』『ヘンリー五世』

2024年12月21日(土)14:00 開演(13:15開場)
神戸文化ホール 大ホール

[指揮]佐藤正浩 [演出]岩田達宗
[合唱]神戸市混声合唱団 [管弦楽]神戸市室内管弦楽団
キャスト
ファルスタッフ:黒田 博 フォード:西尾岳史
フェントン:小堀勇介 カイウス:谷口文敏
バルドルフォ:福西 仁 ピストーラ:松森 治
アリーチェ:老田裕子 クイックリー夫人:福原寿美枝
ナンネッタ:内藤里美 メグ:山田愛子

公演詳細はこちらから

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