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修学旅行 【30秒で読める怪談】

Kさんが高校の頃、修学旅行での話。
京都の有名な寺社仏閣を巡る、二泊三日の旅程だったそうだ。

市内をバスで移動し、目的地ではあらかじめ決めた4,5人の班で行動する。
男子校の気軽さに加えてKさんの班は普段から仲の良いメンバーが揃っていたこともあり、皆わいわいと楽しく過ごしていた。

「あ、あれ委員長じゃん?」
見るとKさんたちのクラスの委員長と数人がグループで歩いている。
するとA君が妙な事を言う。

「あのあばさん誰?」
「おばさん?」
K君は何のことか分からない。
「あれだよ、委員長の後ろにいるおばさん」
「え?どこに?」
K君だけではない。他の者も「どの人?誰もいないけど」と口を揃えた。
「いるじゃん!委員長のうしろを歩いてるじゃん!」
熱くなるA君。
委員長の後ろを中年の女性がぴったり張り付く様に歩いているのだという。

いる、いないと押し問答をしていると向こうから担任の先生が走ってきた。
どうしたのかと思っていると「お前ら。委員長しらないか」と言う。
あそこにいますよ、と言い終わるが早いか先生はそちらに駆け寄って何やら慌てた様子で委員長と話したかと思うと、そのまま委員長を連れてどこかに行ってしまった。
後で他のクラスメイトに聞いたところ、タクシーが呼ばれて担任と委員長はそれに乗ってどこかへ行ったという。

夜になり宿泊先のホテルに帰ってきた先生が説明したところによると、今日の昼間、委員長のお母さんが交通事故で亡くなったとの事だった。
そのため委員長は修学旅行を切り上げて帰宅したとの事だった。

K君はA君が昼間言っていたおばさんのことが頭に浮かんだ。

あれはもしかしたら委員長のお母さんだったのだろうか。
Kくんは何とも言えない複雑な気持ちになったそうだ。






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