信長シリーズのオススメ? 「信長の野望 創造 戦国立志伝」でどうだい?(レビュー)
学生さん、光栄の歴史SLGは好きかい? はぁ、今はコーエテクモゲームスっていうのかい。ずいぶん長い名前になっちまってまぁ…。
どうなんでしょうか、コーエーの「信長の野望」や「三國志」シリーズって? ゲームの内容がどうこう以前に、まずお値段がド高いですよね。セールならそこそこ安く買えるとはいえ、これ、若い人の選択肢に入るんでしょうか?
私は、結婚して子供が生まれる前――かれこれ20年近く前? まではけっこうコーエー歴史SLGを遊んでいて、十数年ぶりにSteamを見てみると知らないシリーズ作品がズラッとあって…「信長の野望 蒼天録」とか「三國志Ⅶ」ぐらいまでは見覚えあったかも? ぐらいの状況でした。
そして、久しぶりに何か遊んでみようと調べてみて、気になったのが、この「信長の野望・創造 戦国立志伝」です。
「信長」シリーズではめずらしい武将プレイが可能
信長の野望シリーズは、基本的に君主または勢力全体を管理するプレイが主で、武将視点でプレイできるのは別途「太閤立志伝」シリーズがあり、棲み分けされていました(一方で三國志シリーズは、勢力プレイと武将プレイのシリーズ作品がそれなりの数ずつある感じ)。ところが、この「戦国立志伝」は、武将プレイもできるのがユニークなところです。私は「太閤立志伝」シリーズもけっこう好きでした。
レビューは酷評のド嵐! その理由は…?
ほほぅいいじゃない、と思ってレビューを見ると、Steamでもほかでも、ちょっと驚くレベルの酷評が並んでいます。コーエーSLGはコアプレイヤー層にうるさがたが多いせいか、毎度あっちを直したらこっちがヘンみたいなゲームデザインになっているためか、常に悪評が目立つ感じではありますが、それにしても「いつものコーエー」の数倍はひどい感じです。
どうも、このゲームは「信長の野望・創造」に武将プレイもできる要素を付け足して作られたもので、しかも発売当初は未完成と言ってもいいレベルの内容を出し、何度もアップデートを繰り返して現在に至っているみたいですね。リアルタイムに体験したら大変だっただろうなあ。「殿様商売」「客を客と思わない」など、よく批判されるダメなコーエー全開だったという感じでしょうか。
しかし、今ならひととおり修正されていて、きっと十分に遊べるでしょう。こういう経緯なんだよと説明された記事も読み、まあ大丈夫だろう、と思って買ってみました。
下級武士から大名まで、立場で視座も大きく変わるのがいい
結論から言うと、私としては結構面白く、おすすめできるレベルのゲームになっていると思いました。ただし、手放しでおすすめという感じでもないので、それはそれで後述しますが。
一番面白いと思ったのは、「足軽頭」レベルの下級武士から大大名まで、自分の立場が変わるごとに、視座が異なり、管理するべき対象というか、手を入れるリソースの粒度が変わっていくところです。
コーエー歴史SLGは常に「序盤は面白いけど中盤以降がダルい」という共通の問題を抱えている印象があります。自勢力が小規模なうちは細かくリソースを管理して徐々に拡大していくのが面白いですが、ある程度強くなっても同レベルの細かい管理を広い勢力圏に対してやらなければならず、結果的に作業量が増えてダルくなってしまう、という感じです。
この「戦国立志伝」の場合、下級武士では小さな領地の一区画ごとに何の施設を建て、少ない金や兵糧を工面し、と細かくリソースを管理していきますが、「城主」の身分になれば施設も金や兵糧もある程度大雑把な管理で進行できます。さらに、大勢力を抱える大名になったら有能な武将を「軍団長」に任命して適当に人を割り振っておけば、内政などは直接見なくても支障なく進行できるようになります。
この、だんだんソース管理の粒度が大くなり、視座も変わっていく感じが、ある意味リアルで、ダルさもないし、とてもいいな! と思いました。
「都を支配したい!」と思わせるシステムもいい
また、都を含む一定以上の国を支配したら、隅々まで支配しなくても「 惣無事令」を発してゲームクリアにできるのも面白いです。これによって、シリーズ作品でよくある「隅っこが有利」ということがなく、戦国時代に大名が中央を支配したがる理由が分かるようになっていますし、秀吉のように伊達と島津を服従させていっちょ上がりにする体験もできます。
ちなみに、管理の手間を軽減する「委任」機能は昔からありました。しかし、基本的にはCPUの委任時の操作が信用ならないので積極的には使えない、本作の場合もたいしてアテにはならないがダメってほどでもない、内政をある程度やってから任せるなどお膳立てしてやれば大丈夫、ぐらいの認識です。
このように、ちょっとした要素でリアルな戦国気分を味わえるのが、なかなかにいい感じの作品となっています。
人材&物量で勝負が決まりすぎる!
このゲームのもう1つの特徴として、人材(武将の数)と、金や兵糧や兵といった物量が勝負を決める要素として重要で、かつ、その差がかなり大きく開いていることが挙げられます。この点は良し悪し両面と言えるかなあ、という印象です。
基本的に武将の数だけコマンドを実行できるシステム(全体の行動力の総量みたいなの設定されていて、ある程度の限度はある)なので、武将が多い勢力ほど有利に、登場武将が少ないと不利になり、その差は時間が経過するほど開いていきます。
また、動員できる兵数が人口に比例し、関東・近畿・中京といった地域に比べて裏日本あたりは総じて人口が少ないため、地域的な有利不利の差も大きくなっています。
さらに、拠点となる城ごとに内政や軍備が行われますが、関東などの広い平野があるエリアは城の密度が高いうえにどこも人口が多い(攻めるにも守るにも兵力を集中させて動かしやすい)、反対に山地や僻地は城の密度が低いうえに人口が少なく、さらに開発できる場所も少ないという三重苦で、地域ごとのパワーの差がかなり大きいです。
結果として、「本能寺の変」が起きない状態で、ある程度拡大した織田家に他勢力で対抗するのが難しすぎる! といった状態になります。
このあたりは、リアリティがあって面白いとも捉えられるのですが、厳しすぎんかね…というのが率直な感想でもあります。
かつての信長シリーズなら、大勢力でも隣接する国の兵が減っている瞬間を狙えば勝てる、みたいなことがありました。が、本作では全体が一枚のマップになっていて、大勢力は隣接する城だけでない全域から援軍を繰り出してくるので、兵力差が露骨に出るのに加えて補給力差もあって、わりと絶望的に勝てないんですよね。
策略を仕掛けようにも武将数差で不利をひっくり返せず、大勢力に臣従しながら拡大しようとしても、大勢力の拡大が速すぎて囲まれる…といった感じになりかねません。オワタ。
まあ、大勢力で安定プレイをしてもいいですし、本能寺の変発生前提でプレイするとか、戦国時代初期のまだ大きな勢力差がない時代のシナリオをプレイするとかすれば、小勢力でも何とかなります。謀反プレイもできるので、大勢力下で謀反の機を窺うのも一興でしょう。
アバウトなシステムの穴を突いた攻略法が必須に
こういったゲームデザインと、システムの謎な仕様が組み合わさり、不自然なプレイが必勝法になっているところが、あちこちにあります。この点がゲームだからそんなもんといえばそんなもんかもしれないけど、あまりよろしくないとも思います。
顕著な例が武将の確保方法で、有利になるために武将を増やすには「大名家を滅ぼして全員取り立てる」が最も手っ取り早く、他の方法は非効率すぎます。結果的に、序盤のうちに周囲の小大名を取り込めるか否かで、以降の進行スピードが大きく変わります。
反対に、大勢力に囲まれた小勢力は切り崩しが難しすぎて、わりとどうにもなりません。このあたり、まあ小勢力を併呑して大勢力に挑むのは普通の流れではあるけど、小勢力を自分がいかに早く潰せるかというレースになりがちなのは、どうかと思わんこともありません。
また、ゲーム開始時に一定以下の階級にある武将だけに与えられる「領地」の有無により、序盤の安定度が大きく変わる点もかなり謎です。
プレイ開始時点で城持ちの場合、ほぼ未開発の城下の収益だけでプレイしなければならないけど、領地を開発してから城持ちに昇格すると、同じく持っている城は1つでも、開発しまくった領地からの収益および兵士があって、圧倒的に潤沢なリソースを持つことができます。
領地の開発には時間がかかるし、中盤以降ならその差は誤差程度とはいえ、序盤の一番ヒリヒリする時期の難易度が大きく変わるので、個人的には城持ちスタートのプレイが苦痛に感じました。
「姫武将」は微妙だけどまあいいか?
マイナー大名の「武将少なくて不利問題」を解消できる要素として「姫武将」というシステムがあり、ランダムに生まれる「姫」を架空の武将として使えます。これ自体はまあいいと思うんですが、これをやると史実上の有名な女性、例えばお市(信長の妹)や帰蝶(信長の奥さん)も武将として登場し、やたらと能力が高いのも謎といえば謎です。まあ、信長が倒れても帰蝶に有能な信長ブレーンが付けばそんなもん? と考えれば納得できるかもしれませんが。
ちなみに、架空の男児が生まれるシステムもあるんですが、生まれてすぐ武将として起用できる姫武将(正確には、髪結いの儀式が終わりましたと言われる。12歳ぐらい)に対し、男児は生まれてから元服を待たないと起用できず(1歳のときに生まれた報告をされ、15年?ぐらい待つ)、アテにならないしだいたい存在を忘るという、なんでそうなっているのかよく分からないシステムになっています。男児も元服しましたって体裁でいいのに。
大名の立場がある意味でリアルすぎて辛い!
もう1つ、困った要素として、武将の立身出世システムがあるため、大名でプレイしたときに「お気に入りの武将をずっと手元に置いておく」ということができません。
勲功が貯まった武将は相応の地位につけないと不満を溜めて忠誠度が下がるので、「軍団長」として独立させてやることになります。無視して手元にずっと置いておくこともできなくはありませんが、忠誠度低下の対策をやり続けないといけないし、武将の情報を見に行くと「何に不満を持っているか」が明確に可視化されていて、プレイヤーの心をえぐります。おいおいこんなシステムよく考えたな…。
また、軍団長として独立させたらさせたで、彼らは別の意味でストレス源になります。軍団長は大名に対して時々「提案」をしてくるようになるんですが、やれ人をよこせ、金や兵糧を出せと、突き上げが激しいし遠慮がないし、何度却下してもしつこく同じことを言ってくる。個人的には、本作での大名の立場でのプレイは、リーダーという立場の嫌な面がリアルに再現されすぎていて、おすすめできません。
ほどよいマイナー武将プレイが楽しい!
そんな感じで、本作は、クセの強さが気になる点もあるものの、いい意味でのリアリティが感じられる意欲作だなと思いました。
大名でなく、開始時点で城持ちでもない、ほどほどなマイナー武将で大名を支えながらのプレイがちょうどよく、ほかのゲームでは味わえない楽しみのあるゲームかなと思いました。いろいろな視点で信長シリーズをプレイしてみたかった人に、特におすすめです。