「自己責任」につぶされないために

 6月も早いものでもう終わろうとしていますね。GWのある5月とは一転、6月は休みがない月ということで、お疲れの方も多いのではないでしょうか。5月病、6月病で仕事のモチベーションが保てなくなったり、病んでしまう方も多い時期ではないかと思います。特にコロナ以降は、まさかあの人が?と思うような方がメンタルバランスを崩されることも多く、自分のメンタルに気を配るセルフケアの重要性をひしひしと感じます。

 私は13年間社会人生活を送ってくる中で、幸いなことにメンタルバランスを崩すことなく、概ねポジティブに仕事が出来てきました。ただ、これは無意識でポジティブになれたわけではなく、自分でも危ないと思った際に、心のバランスをとるための考え方や思想等を勉強してとりいれつつ、なんとかポジティブな状態が維持できている、という感じです。今回は、書籍紹介は一旦お休みして(といいつつ書籍も少し紹介しますが)、私の中で、心のセルフケアに効果があった考え方を少しだけ紹介したいと思います。

①自己責任ではなく、自己始任と考える

 他者を責める他責ではなく、自分で責任を持つ自責であるべし、というのは良く言われることです。私も昔はこういった考え方をしていましたが、社会人経験が長くなるにつれて、この考え方をずっとしていると、(人によってはですが)メンタル面に悪い影響を与えることがあると思うようになりました。
 「自己責任」のどこが良くないか?まず、自己責任に含まれる「責」という言葉がよくない。責という言葉には、「とがめる、せめる」といったネガティブな意味がくっついているからです。真面目な人ほど、自分がなんとかしないと、と思って自分をせめて、追い込んでしまう、すべてを自分でしょいこんでしまう。「責」という言葉にはそんなネガティブな印象がつきまとうと思っています。責は「つとめ」、任は「まかせる」ということなので、自己責任は「自分にまかせられたつとめ/役割」と捉えれば、決してネガティブなものではないと思うのですが「責」の印象から「責める」に繋がりがちだと思います。言葉遊びのようですが、言葉の使い方は案外重要です。
 
 また、「自己責任」は、「自分で全ての責を負わないと」と、自分の責任以上のことを背負ってしまう危険性もあります。仕事では、自分が全ての責を負えることはほとんどないのが現実ですが、全てが自分の責任であるかのように考えてしまう。責任を持つことは非常に重要ですが、自分の責務を超えた範囲までは負う必要はないんです。
 この話に関連して印象的なエピソードとして、数年前、某大手企業の業績が悪化した際、有名な広告クリエーターの方が「自分が業績悪化の責任を感じる」といった趣旨の発言をして、プチ炎上したことがありました。企業活動は様々な要素が絡んでいる中で、「広告」という一部分だけしか担当していないクリエーターが「業績悪化に責任を感じる」なんて何様だ、思い上がりだ、売名行為だ、といった批判が出てきたんです。自分にもっと何かできたのではないか、そう思うことは素晴らしいことだと思いますが、この思考は、自分のつとめを超えた範囲までまるで自分の責任かのように余計な重荷を背負ってしまう、自分を否定して自分自身を追い詰めてしまう、といった危険性もはらんでいます。 
 ではどんな風に考えたらよいのか?いろいろな方の意見をききながら、「自己責任」にかわる新しい考え方を自分なりに考えてみたのですが、今のところ「自己始任」という言葉がしっくりきています。
 「自己責任」ではなく、「自己始任」。「始めるのは自分の役目。人任せにするのではなく、自分から動くことで、ものごとや人も変わる。」という意味をこめました。
「自己責任」も「自己始任」も「目標や与えられた役割を達成するために、自発的に自分から動く」という行動は同じです。ただ、「自己始任」で考えた方が「責める」思考から「始める」思考に変わり、仕事を前向きに捉えやすくなるのではと思っています。私は少なくともこの考え方に転換してから、よりポジティブに仕事と向き合えるようになったので、ネガティブな思考に支配されそうな時は、一度試してみてもらえればと思います。「自己責任」の場合は「何故自分は出来ないのか」と責める思考になりがちなのですが、「自己始任」で考えると「次に自分はどう動くべくか」という未来の行動について考え始めます。たかが漢字一文字違いで捉え方を少し変えただけですが、この違いがメンタルバランスに与える影響は、なかなか馬鹿にできないものだと思っています。
 ちなみに、「自己始任」とセットで「自己反省」もしてもらえるとより自分のためになるのではと思っています。自己始任だけだと、成長にはつながりづらく、自分の仕事を改めて振り返ることは大事なことですが、そんな時も、自分を責めるのではなく、自分を省みるという意識でポジティブに振り返りが出来るときっと気持ちに余裕が生まれるのではないでしょうか。

②自分がいかに恵まれているかを認識する

 1つ目の考え方紹介がかなり長くなってしまったので、2つ目は、短く簡単に紹介できればと思います。「自分がいかに恵まれているかを認識する」こういった考え方は色々な書籍の中で同じようなものが紹介されていますが、私が覚えている中で最も印象的な書籍は、デール・カーネギー『道は開ける』です。非常に有名なこの書籍を始めて私が読んだのは社会人7年目の頃。当時の自分はメンタルバランスを崩す一歩手前まできており、不安や悩みを抱えた人向けの名著として名高いこの本に、手を伸ばしたのを覚えています。寝れない夜が当時は増えていたので、よくそんな夜に読んでいたのですが、当時の自分にとっては、この本の中で紹介されるエピソードが、救いになっていました。家族を事故で失った女性のお話等、自分の不安や悩みよりも重たいエピソードがたくさん出てくるので、それと比べて自分がいかに恵まれているかを感じることが、セラピーのような効果を発揮していたと思います。
 他にも同じようなカテゴリで印象的な言葉としては、映画化もされたスコット・フィッツジェラルドの名著「グレートギャッツビー(野崎孝さん訳)」の中の1節『この世の中の人がみんなおまえと同じように恵まれているわけではないということを、ちょっと思いだしてみるのだ』といったものもありますね。(このセリフが出てくる文脈としては、「人を批判したくなった時は」という文脈で使われているので、自分のメンタルケアの話とは少し違いうのですが。)
 他には、「生きてるだけで丸儲け」も方向性としては近い言葉ですかね。こういった言葉はこれ以外にもいくらでもあるものですが、ありふれた言葉が、弱っているときには案外自分を助けてくれるものです。

このnoteの終わりに

 今回は少し趣向を変えて、メンタルケアの考え方を、少しだけ紹介しました。心のケアや休み方も、勉強することで上達するスキルやマインドだと思っています。休むために勉強する、というのも一見矛盾するようですが、学ぶことで楽になることもきっとあると思いますので、今回紹介した考え方に限らず、自分なりのメンタルケアの方法や思考を、勉強して、探してみてもらえればと思います。


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