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冬晴れを待つ、1月の便り。
相変わらず、寒い日が続いている。灰色の日をつらく感じて、「明日は晴れるかな」と思うたび、自分は欲深いなと思う。本当は、どんな天気も同じように愛せるようになりたいのに。
欲深い目で辺りを見ていると、分厚い雲に覆われた空の下、雪の積もる木はどこか寂しげに見える。
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でもこの木々は、べつに寂しくなんかないだろう。ただ環境にあわせて、姿を変えているだけのこと。鮮やかな葉をつけるときと、細くなり静かに立っているとき、どちらも同じ木だ。動物たちも冬眠したり、冬毛になったり、うまく季節に順応している。
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春に向けてしっかり準備をしているんだな。
近ごろ、「去年の冬を元気に過ごせなかったと感じた人は何千万人」というフレーズからはじまるCMを見ることがあるけれど、どんなときも同じ姿や生産性を保ちたいと望む、人間らしい発想だなと思う。木でいうと、鮮やかな葉をつけている夏の姿を、本来の姿だと設定しているようなもの。
冬の人間は、どう過ごすべきかなと迷う。
季節にあわせて変わるのは自然なことだ。夏のように溌剌と動けなかったとしても、その変化を不調と捉えずに受け入れられるライフスタイルを模索している。
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欲張らず、たまの晴れ間を満喫しよう。
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喫茶 憩いでガイドのあきこさんと出会う。
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◇
冬の過ごし方を模索する中で、今年はじめたことがふたつある。
ひとつめは、刺し子をはじめとするお裁縫に親しむこと。
もともと、農作業ができない冬季に農業に従事する人々が副業として工芸に取り組んだと聞く。地域により特色があって、このあたりでは「こぎん刺し」や「南部裂織」などが有名。
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近くで見ると、その分厚さから、寒い冬を生き抜く知恵だとわかる。
農家の方だけでなく、とわだこのような観光地でも、時間の使い方として適しているみたい。身近には、夏はキャンプ場で働き、冬は制作活動をする人もいる。北国の冬の過ごし方として、暖かい室内で手仕事をするのはひとつの正解なのでは?と、先人たちに倣い自分のペースで始めてみようと思い立った。
初心者向けの刺し子の布巾を3枚仕上げてみて、改めて感じたのは、手縫いは自由なペースでできてたのしいということだった。針と糸と布だけなら場所をとらないし、ミシンと違ってかんたんに持ち運べるのもいい。無心になれるので、精神面にも良い影響がある気がした。これは続けていけそうだ。
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◇
今年はじめたふたつめは、お菓子づくり。
何かが足りないとき、それを不足と感じるのではなく、好機と捉えられるようになりたい。冬のとわだこにお菓子やパンを購入できる場所がない、というのは以前にも書いたけれど、今年は「ないならつくればいいじゃない」と思える強さを育みたいと考え、はじめてみることにした。
まずは、プリンやガトーショコラなど、これまでにつくった経験があるものからおさらいしている。いくつかつくってみると、自分や家族の「甘み」に対する好みが見えてくる。塩味についての好みは日々のごはんづくりでなんとなく把握していたけれど、「甘み」についてはこれまでずいぶんと無頓着だったことに気づく。
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味はよかったけれど、質感は焼きプリンの方が好みかも。
甜菜糖でカラメルはつくれないことを知った。
一度で満足いくものが出来上がることはほとんどなく、配合を変え、試行することの繰り返し。どのくらい甘くするのが適切か、なにで甘さをつけるのがすきか、といったようなことと向き合うきっかけになっている。
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あとから甘みを足す必要がないことに気づいたり。
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やどかりさんのクッキーは理想的で
お菓子づくりが上手な方へのリスペクトが増すばかり。
寒くて雪の多い1月。外に出ることが少なかったので、何もしていないような感覚があったけれど、こうして書いてみると、たのしく、非常に前向きに日々と向き合えていたことがわかった。
もしかすると、天候に気持ちを左右されていたのは、もう何年も「すこしでも時間があれば写真を撮りに出かけたい」と思って過ごしてきたからなのかもしれない。もっと身近なことに目を向けて、灰色の日も愛していく。
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