小林 廉

東京学芸大学附属国際中等教育学校を経て現職。博士(教育学)。自サイト"Learning Mathematics Through Inquiry"の背景や科研”「数学的な見方・考え方」の育成を軸とする高等学校数学科の授業デザインと教育課程”のための論文等について記録しています。

小林 廉

東京学芸大学附属国際中等教育学校を経て現職。博士(教育学)。自サイト"Learning Mathematics Through Inquiry"の背景や科研”「数学的な見方・考え方」の育成を軸とする高等学校数学科の授業デザインと教育課程”のための論文等について記録しています。

最近の記事

「主体的に学習に取り組む態度」についての議論

1.はじめに 2024年4月26日(金),「今後の教育課程、学習指導及び学習評価等の在り方に関する有識者検討会」の第11回が開催されました。今回の議題は「学習評価」で,その中で「主体的に学習に取り組む態度」についての議論がありました。この議論は今後の学習評価の在り方を考える上で,また自分の理解のためにも外化しておいた方がよいと考えられるものでしたので,以下に取り急ぎの整理をしておきたいと思います。なお,あくまで私が反応したところの整理になるので網羅的ではないことにご留意くださ

    • 数学の探究ベースの教授・学習に向けて

      1.はじめに 「探究的な学び」がより本格的に重視され始めています。私自身,高等学校数学科における「探究的な学び」のデザインというテーマで連載させていただいていますし,自分の科研サイトの名前も「探究を通して数学を学ぶ」としているところです。  このように,数学の授業における「探究的な学び」を志向するとき,その理論的背景や先行の取組を踏まえておくことが欠かせません。そうした取組の一つがEUで展開された「フィボナッチ・プロジェクト」です。現時点で10年以上前の取組ですが,いわば「

      • OECDラーニング・コンパスにおける「知識」:算数・数学の場合

        1.はじめに OECDのEducation2030プロジェクトにおいて策定された「ラーニング・コンパス」では,コンピテンシーの構成要素の一つに「知識」が位置付けられており,その類型の一つに「エピステミック(認識論的)な知識」がある。この「エピステミックな知識」について,白井(2020)は,「『見方・考え方』と,内容的にほぼ重なるものと言ってよいだろう」とし,今後のカリキュラムを考えていくうえでは,「見方・考え方」の整理の在り方について柔軟に見直していくことも考えられるとしてい

        • 学習指導要領における「見方・考え方」登場の経緯:特に「数学的な見方・考え方」についての議論を踏まえて

          はじめに  本記事では,次の2点についての事実を整理する。 (※今回は事実を整理するだけで解釈しませんので,「見方・考え方」についての基礎資料としてお使いいただければ幸いです) 平成29年・30年告示学習指導要領(以下CS)で強調されている「見方・考え方」は,CS改訂の議論においてどのように登場し,実際どのように議論され,本CSに反映されるに至ったのか。 特に,「数学的な見方・考え方」はどのように議論されたのか。  事実整理のために参照するのは,あくまで文部科学省のW

        • 「主体的に学習に取り組む態度」についての議論

        • 数学の探究ベースの教授・学習に向けて

        • OECDラーニング・コンパスにおける「知識」:算数・数学の場合

        • 学習指導要領における「見方・考え方」登場の経緯:特に「数学的な見方・考え方」についての議論を踏まえて

          数学の問題を解決しようとする個人の成否を決定する重要な要因は何か?

          はじめに 本記事は,Alan H.SchoenfeldによるWhy Are Learning And Teaching Mathematics So Difficultのpart1の要約です。ちなみにAlan先生は数学教育学界では知らない人はいない大研究者ですが,あるつながりで私の授業を観ていただいたことがあります。そのとき"like a lecture"というコメントをいただいたこと(当時の自分としてはそんな授業をしたつもりは全くなかった)が,自分の授業を本気で見直すきっか

          数学の問題を解決しようとする個人の成否を決定する重要な要因は何か?

          数学の指導方法におけるプロセスベースvsコンテンツベース

          はじめに 数学の指導方法をプロセスベース(オープンエンドでプロジェクトベース)とするかコンテンツベース(クローズドな伝統的教科書ベース)とするかで,「生徒が新しい状況や不慣れな状況において数学の知識を使えるようになるかどうか」は変わってくるのでしょうか。  本記事では,Jo Boaler(1998).Open and Closed Mathematics: Student Experiences and Understandings. Journal for Research

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