バッグにはいつもちゅ〜る
小学生の頃、スイミングスクールの帰り。自分は送迎バスに乗らずに歩いて帰ることがあった。30分程度の帰路、夜を闊歩する瞬間が大人みたいで好きだった
自動販売機で微糖の缶コーヒーを買って、ちびちび飲みながら疲れた身体に夜風を浴びせるのがカッコいいと思ってたし、眠れなくなることもお構いなしに飲む甘いコーヒーも好きだった
ある時、薄暗がりの路地を通って帰っていたら一匹の猫が近づいてきた。昔おばあちゃん家に3匹の猫がいて、すぐ逃げるもんだから遠くから眺めて可愛がっていた。どこからともなく現れた猫は人懐っこくて撫でても逃げない子で、寝転がったり足元にすり寄ったりとにかく可愛かった
でも徒歩で帰っていたせいで帰宅時間が大幅に遅くなっているから親に心配されることを危惧して帰ろうとした。その子との別れを惜しみながら歩き始めると、てくてくと後ろを付いてきた
当時住んでた家ではペットは買えなかったから持って帰る選択肢もなく、向こうの気が変わるのを期待しながら背を向けて歩いた
それでもてくてく付いてくる。自分はなんだか怖くなって走ってしまった。時々振り向いて付いてきてないか確認した。少ししたら猫はいなくなっていて、胸を撫で下ろす時にはもう家の前だった
それから月日は流れ、自分は社会人になった。人付き合いで色んな場所に赴くようになった。そこでも度々猫はやってくる。愛想が良かったりそっけなかったり、近づいてくる子には目一杯撫でてあげるようにしている
その度に、昔置き去りにしたあの子を思い出す。街頭に照らされキラキラ光る毛並みのあの子。今バッタリ会ったら飼ってあげられるかなと考える。費用だったり家を空ける時間が多いから難しいのかなとか色々よぎる、多分今も飼えそうにない
でもまた会えたらお詫びにお菓子くらいはあげたい。素直に謝って許してくれるだろうか
今日も出かける、あの時の路地とはまた違うけどまた猫が近づいてくれたら愛でる準備はいつでもできている。なぜならバッグにはいつもちゅ〜るがあるから