金曜日のショートストーリー14たまご

雪が降るのではないかと思わせるほどの寒さの季節。街のクリスマスムードは、独り身の心をより一層と冷えさせる。
そんな中、何かの抽選で当たった卵が送られてきた。
「クリスマスプレゼント企画! 不思議な卵が当たる!」
と確かに抽選の説明に書かれていたので、てっきりお菓子の類かと思っていた。
菓子好きとしては応募しない手はないと思っていた。
特に楽しみにしていたわけでもないので、忘れた頃に届いた。よくある話だ。
だが、ダチョウの卵ほどの大きさでイースターエッグのようなカラフルさで、なおかつ
「この子は産まれていなくとも命です。大切に暖め、あなた色に育てて下さい」
と意味深な事が書かれた紙だけが入っていることは、よくある話と受け入れられない。
そもそも、あなた色と言われても七色の迷彩柄を纏った卵に色をつけることなど、おこがましいのではないかと思う。
とはいえ、暖めて欲しいと言われると、なんだか寒そうにしている気がしてくるものだ。
着なくなったセーターやマフラーを適当に巻き付けやった。
服の重みで、手を離したすきに少し傾いた。
動かないことを確かめて、そのままタンスの横に立てかけて置いた。
湯気の立つココアをマグカップに注ぎ、離れたところから、雑に洋服を巻かれた卵を見やる。奇妙な七色迷彩が少し頭を覗かせている。ジッと見つめていると、殺風景な景色に心なしか馴染んでくる。雪だるまの置物が首を傾げるような感覚に陥る。そいつに向かって今日の出来事を話してやっていると、冬の物悲しさがどこかに溶けていた。

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