百物語 第二十三夜

今29歳の私は、中学生のころ、祖父のお下がりのテープレコーダー(ラジカセ?)を使っていた。もう15年以上も前のことになる。

6つ上の姉が春に大学に行くまでにはよく使っていたこともあり(当時まだCDの録音は主にカセットテープにしていたw)、私は勉強しながら、姉が残していったカセットテープを聴いたり、ラジオを聴いたりしていた。

難点と言えば、本当に古いものなので、スイッチが重く、カセットテープが終わると、バツンッと、ものすごい音をたてること(夜中に使っていたのでこれはちょっと困った)と、録音時には再生ボタンと録音ボタンを同時に押さなければならないのだが、ラジオなどで曲が流れた時に、ただでさえ重いそのボタンをふたつ同時押ししなければならず、イントロが途切れてしまうこともよくあった。

それでも、レトロというか、アナログな感じをすごく気に入っており、時々遊びに来た友人と、自分達の声を録音して驚いてみたりしていた(今の若い子は携帯で手軽に動画を撮れるので、自分の声に驚くなんてこともなさそうだが)。

まぁ、ラジオを聴きながら勉強していた時点でお察しの通り、私は自室の机に向かってもあまり真剣な勉強家ではなかったので、その時も、携帯にかかってきた友人からの電話に、夜中こそこそと応答していた。

当時は今と違い、無料通話分がものすごく少なかった。私も彼女も、「夜中に電話する」というスリルが味わいたかっただけで、電話はすぐに切るのがいつものパターンだ。だから私は、かかっていたラジオの電源は切らず、音量だけをミュートにしていた。

それでもその時はいつもより少しだけ長く、話に夢中になっていた。なぜなら、私の好きな男の子が携帯を持ち始めたことを、友人が教えてくれたからだ。私達は、明日彼の電話番号やメアドを聞き出す方法をあれこれ考えて熱中していた。もしかしたら彼とも、こんな風に夜中電話したりすることがこれから出来るのかも…、私は急に恥ずかしいような気持ちになって、友人に聞いた。

「もし断られたらどうしよう…」

そう私が発言した次の瞬間だった。

カセットテープを入れていないはずのラジカセが急に、ギュルギュルギュルギュル…と巻き始め、

『だだだだだだだだ大丈夫だよ!』

バツンッッ!!!

と、大音量で低い男の声を発して突如切れた。

ふと気づくと、電話は既に切れていた。
それどころか、確かに受けて喋ったはずの、友人からの着信は、どう探してもその日の履歴には入っていなかった。

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