靴は靴底で選ぶのが最も重要だと思う理由を靴屋歴10年以上の人が3300文字で詳しく解説

お久しぶりです
こば@kobakutsuです。

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靴を選ぶとき、本当に大切なポイントとは?

みなさん、靴を評価するとき、何を基準に良し悪しを考えますか?

おそらく多くの人は、

  • 軽さ

  • 幅の広さ

  • デザインの好み

で決めると思います。そうですよね?

でも、義肢装具士という医療系国家資格を持ち、10年以上足の健康に関わってきた靴屋としての私の見解はちょっと違います。


私が靴を評価するときの基準は、こうです:

  • 靴底の形、硬さ 60%

  • かかと周りの形、硬さ 30%

  • アッパーの幅など 5%

  • その他 5%

そう、靴底が全体の60%を占めるほど大事だと思っています。靴底は動きやすさ、姿勢、安定感など、すべてに繋がります。正直、ここさえ良ければ何とかなるくらいに思っています。




「この基準、ちょっと変じゃない?」と思われたかもしれませんね。なので、今回はこの基準についてざっくりと解説します!


ポイントは大きく2つ!

  1. 変えられない要素の優先度は高く、変えられるものは優先度が低い

  2. 歩きやすさ、安定感に影響するほど優先度が高い

これを聞いて、「でも、幅って変えられないし、歩きやすさに影響するんじゃないの?」と思うかもしれません。でも実は、ちょっと違うんです。


実は、幅って結構なんとかなるんです!

本当に4Eの靴が必要な足の人ももちろんいます。
そういう方は例外かもしれません

でも、多くの場合、靴の幅って調整可能でこれをするだけで何とかなります。今まで履けないと思ってた靴が履けるようになるのって結構あるあるなのです!

幅という言葉で語られがちですが、実際に重要なのは靴の中の容積です。

例えば、付属のインソールを厚いものや薄いものに変えるだけで、靴の中の広さを調整できます。これだけでフィット感は大きく変わります。



ちなみに、薄手のインソールでおすすめは

re:geta(リゲッタ) ルーペインソールフル

踵の高さが変わらないので靴擦れなども起きにくい。



また、部分的に当たる場合は、靴ひもの通し方を変えるだけで履けるようになる靴も多いんです。革靴であれば、気になるところを伸ばせば気にならなくなる方もたくさんいます。

特に多いのが、「私は外反母趾だから4Eの靴じゃないとダメ」というケース。

でも、実際には、

  • 足のアーチの変化によって部分的に当たりやすくなっている

  • 幅が広いのは外反母趾の部分だけで、他は細い

という方が多いんです。


こういった場合、足のアーチをサポートするインソールに変えることで、外反母趾部分の当たりが変わります。

外反母趾の人に多いのは、下の画像で言う内傾きの足です。足が内側に傾くことで親指側に負担がかかりやすくなっていることが多い。これをインソールで足の内側からぐっと起こすのです。

さらに、外反母趾の部分だけ当たりにくくする対策(靴ひもの通し方を変える、革を伸ばすなど)をすると、普通の幅の靴でも履けることが多いんです。


靴底が厚くクッション性があれば、十分なクッションは担保されていますので、インソールを薄いものに変えたり削ったりして、靴の中の容積を増やすこともできます。

こういった工夫をすることで、実は普通幅の靴でも履ける方って多いんですよ。


文字にすると難しそうに感じるかもしれませんが、慣れた店員さんなら両足5分もかからず対処できます。


このメリットは、靴の選択肢が増えることもそうですね! 4Eしか履けないと思っていた方も、2EやEなど履ける範囲が広がるので、靴選びももっと楽しくなります。


靴底の形・硬さが60%を占めるほど重要な理由


それは、歩きやすさ・安定感に最も直結するから!

わかりやすい例が、ハイヒールや竹馬です。

ハイヒールを履くと足元が不安定ですよね。グラグラします。想像しにくい人は、竹馬に乗ったときを思い出してください。めちゃめちゃ不安定で、立っているのも大変でしたよね?


なぜあのように不安定になるかというと、**「支持基底面が狭い+重心位置が高い」**という、不安定になる要素が揃っているからです。これは重力下という、地球上で生活していたら絶対に避けられない法則です。


支持基底面とは、物体が地面に触れている面積の総和です。物体は、重心が支持基底面の中心に近いほど、また低い位置にあるほど安定します。

画像はカンゴルー様より引用


例えば、両足で立っているより、仰向けで寝ているほうが安定しますよね。

立っているときは、接地しているのが足裏だけで、身長の約55-56%の高さに重心があります。身長170cmの人であれば、足元から約95cmの位置(だいたい腰あたり)に重心があるんです。

寝ているときは、頭から背中、かかとまで接地しているので、支持基底面も広く、重心位置も床からそう離れていない低い位置です。


ハイヒールや竹馬は、地面に点で接しているようなもの。逆三角形のように下は狭いけれど上は広い物を立たせるのって難しいですよね?


「インソールがあると安定感が増すんじゃない?」と思うかもしれませんが、そうではありません。竹馬の足を乗る部分を広くしたり、そこにアーチサポートをつけることを想像してみてください。安定感ってほとんど変わらないと思います。


つまり、安定感は地面とどのように接しており、その上に乗っかっているものがどの位置にあるかで決まるんです。


ハイヒールという極端な例を出しましたが、靴底の形状は実は身体に大きく影響します。

例えば、三平方の定理って習いましたよね?
サイン・コサイン・タンジェントのあれです。

あれで計算すると、身長150cmの人の足元を1度傾けると、頭の位置は約2.6cm変わります。

頭の重さは体重の約10%なので、約5-6kgの重さが頭という高い位置にあるんです。この傾斜による力って、結構身体に影響を与えますよ!


背筋を真っすぐにした状態と、軽くおじぎした状態で歩き比べてみてください。推進力って全く違うと思います。

そして、靴底の傾斜は、最近のランニングシューズなどを見ても振り幅が非常に大きいです。これによって推進力というのは大きく変わります。

さらに、厚底で幅広な靴もここ数年非常に人気ですね!クッション性が良いものも多いです。

「クッション性が良い=良い靴」と思われがちですが、必ずしもそうではないんです。

例えば、横にふらつきやすい人がクッション性が高い靴を履くと、もっと横にふらつくことがあります。柔らかいクッションによって、横にふらついた際に沈み込み、より傾斜がつくからです。


HOKA ボンダイ 8

はその辺りの調整が上手い。

厚く広いけれど柔らかすぎないクッションにすることで安定感を担保しつつ、それなりの靴底の傾斜で進みやすくしているし、軽い。バランスが高い位置でとれている良い靴。

ただ、若干かかとの浅さは感じるのでここは人によって相性は分かれる



このように、姿勢や歩き方に直結しやすい靴底ですが、簡単に変えることはできません。 インソールのように取り外したりできないからです。

圧着された靴底や縫われたものを剥がし、別の形状の靴底に変えるなんて、ほとんどやったことないですよね?

これらの理由から、交換しにくいけれど身体に影響しやすい靴底の形や硬さは非常に重要だと思うのです。


最後に

靴底や靴のかかと周りの形状のように変えられないものは対策が難しいので、ここを優先的に選ぶべきだと思います。

でも、インソールを変える、靴ひもの通し方を変える、革を伸ばす、タンパッドを貼る、靴ひもを別の色に変えてデザインを変えるなど、変えられる要素で対策できるものは何とかなることが多いので、優先度は低いです。

総じて言えることは、売り物の靴=完成品と捉えずに、自分に合った工夫をするともっと履きやすくなるし、靴の選択肢も増えるということ!

私の足は、簡単なインソール調整+タンパッドはマストです。


靴選びは奥が深いですよね。ぜひ、次に靴を選ぶときは、靴底の形や硬さ、かかと周りの形などにも注目してみてください!きっと新しい発見があるはずです。


あなたの靴選びの参考になれば幸いです!次回の靴選びがもっと楽しくなりますように。

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こば@足の悩みを靴・インソールで解決したい義肢装具士
カラダに関する情報を国内外問わず分かりやすい形に直してどんどん発信していきます。頂いたサポートは次の文献購入費用に宛てております。 もし、よろしければ文献購入費用のお手伝いをして頂きますと幸いです。よろしくお願い致します。