28.趣味の話⑯ 読書(11)
はじめに
はい、こぼば野史です。
ここ最近、あいさつが思いつかない。
2021年9月7日(火)の日テレ系「News ZERO」を見ていたら、某ウイルスのワクチンに関するデマ報道研究のニュースを見た。日テレのニュースサイトを見たが、記事になってはいなかった。
このニュースを見聞きして、ふとこのことわざを思い出した。
悪貨は良貨を駆逐する。
――グレシャム(イギリスの政治家、1519‐1579)――
「グレシャムの法則」というものもあるらしい。
前回の「趣味の話 読書」の投稿は以下。
社会派な込み入った前口上になってしまった。以下、本編である。
1.今回紹介する図書
今回、読了した図書は、似鳥鶏『彼女の色に届くまで』(KADOKAWA、2017年、文庫本2020年)である。
似鳥鶏さんの作品、やはり面白い。
似鳥鶏さんの作品は、そこそこ読んでいる。
以上2つの投稿が似鳥鶏さんの作品について触れている。
2.『彼女の色に届くまで』とは
KADOKAWAのサイトに載るあらすじ(含目次)を引用しよう。
彼女は、天才画家にして名探偵――。青春×アートミステリの決定版!
◎本格ミステリ大賞、日本推理作家協会短編賞候補作◎
◎単行本時は王様のブランチでの特集で話題沸騰◎
注目のミステリ作家が贈る青春ミステリの新たな決定版、待望の文庫化!
掌編仕立て(!?)の文庫版あとがきは、書き下ろし!
彼女は、天才画家にして名探偵。
天才少女と画商の息子は、絵画で謎を解き明かす――!
画廊の息子で幼い頃から画家を目指している緑川礼こと僕は、期待外れな高校生活を送っていた。友人は筋肉マニアの変わり者一人。美術展の公募にも落選続きで、画家としての一歩も踏み出せず、冴えない毎日だった。だが高校生活も半ばを過ぎた頃、僕は学校の絵画損壊事件の犯人にされそうになる。その窮地を救ってくれたのは、無口で謎めいた同学年の美少女、千坂桜だった。千坂は有名絵画をヒントに事件の真相を解き明かし、それから僕の日々は一変する。僕は高校・芸大・社会人と、天才的な美術センスを持つ千坂と共に、絵画にまつわる事件に巻き込まれていくことになり……。
ルネ・マグリット『光の帝国』、ジャクソン・ポロック『カット・アウト』、パウル・クレー『グラス・ファサード』など有名絵画が多数登場!【カラー口絵付き】
絵画をヒントに、美術にまつわる事件の謎を解け。「才能」をめぐる、ほろ苦く切ない青春×アートミステリ!
第一章 雨の日、光の帝国で
第二章 極彩色を越えて
第三章 持たざる密室
第四章 嘘の真実と真実の嘘
終 章 いつか彼女を描くまで
文庫版あとがき
1章がそこそこ長いので、1章につき2日ほどで読んでいた。
3‐1.感想(ネタバレなし)
やはり面白い作品だった。
1章は主人公とタイトルの彼女、千坂桜の出会いから描き、一気に引き込まれた。
相変わらず脚注の詳細さには驚愕する。とても勉強になる。
ミステリーなので、所謂伏線の回収が素晴らしい。事件を解き明かす場面では「考えてみればそうだよな」と思う節がほとんどである。
人の欲望であったりエゴ、天才故の衝動など、現実的なものまで利用した、想像しやすい物語である。
3‐2.感想(ネタバレあり)
『きみのために青く光る』同様、ボーイミーツガールが発端である。
1章は、学校の話で、創作だろうが、学校の闇がガッツリ見えて不快になるが、事件を解き明かす時には、その反動でとても爽快な気分になった。
絵画トリックや、ふと考えれば腑に落ちるトリックがあって、やはり良い。
1章に1つ、1頁割いて実際の絵画を載せてくれるので、絵画の勉強にもなる。
例えば、1章では、ルネ・マグリットの「光の帝国」を紹介し、それが謎を解き明かすヒントになっていた。
また、詳細すぎるほど詳細な脚注では日本の絵画のみならず、西洋絵画、さらには絵画に纏わる人名や用語――簡単なもの、人名ではラッセン、用語ではルネサンスなど、あまり聞きなれないものでは森村泰昌、ジャクソン・ポロック「カットアウト」、「水浴するバテシバ」など――も多く盛り込んで、読者をひきつけている。
重要なカギを握る(というより、事件を謎を解き明かす)のは千坂桜であるが、性格に難ありということで、周囲への説明、無論証明は、主人公である緑川礼が行っており、ほどよい関係性がクスっと笑える。
似鳥鶏さんは、主人公を振り回すのがお好きなようである。
いや、もしかしたら文学作品というのは、そうでないと始まらないか。
もう1人、高校生にして190cm弱の長身、筋骨隆々の体躯を持つ、風戸という緑川の友人も、いぶし銀、名脇役として光っており、当に緑川から見たら水を得た魚というもののように思える。
最後も最後、終章では、主人公の推理がはたらき、驚くべき事実が発覚したのも衝撃だった。
登場人物ほぼ全員が、関係性を持っていたとは。
アガサ・クリスティー『オリエント急行殺人事件』並みの衝撃である(映画しか見てないから、詳らかにはわからぬが)。
おわりに
「はじめに」を書いたのは9月7日だが、こちらを書いているのは、11日である。昨日の真夜中に読了したので、直後に書く気が起きなかった。
そして、先ほどコロナウイルスのワクチン接種、1回目を終えた。今日の夜には副反応が出て、明日は確実にダウンするのだろう。
実験体にさせられている気分である。
まあ、それでも読書はできる。
卒業論文の準備も曲がりなりにも進みつつある。
今回はこれにて。
頓首頓首。