ある男
少し前に見た映画
「ある男」
継続的な「私」という存在は本当に存在するのか。
自分が認識する自分、他者が認識する自分。
その違いは確認しようがなく、他者の数だけ「私」は存在する。
誰にでもあるのではないだろうか「あなたらしくない」と言われたこと。
それはあなたの意見ですよねと言いたくなるセリフだが他者の中にも私が存在する証左ともいえる言葉ではないか。
平野啓一郎さんが考案した分人主義をミステリーをベースとしつつ表現するとこのような話になるという物語が「ある男」の骨格だ。
他者の中にある自分を浮かび上がらせつつ、人間のアイデンティティとは、をこの映画はテーマとしている。
様々な登場人物が自分の存在とは何かを自問自答しながらも人生を歩んでいる。
石川慶監督の演出が見事だと思うのは今作の原作は長編小説なので、ある程度物語を端折りながら進める必要があるが時間をジャンプさせるときの納得感のある演出が見事。
ある人物と、ある人物が時間をジャンプした後では信頼しあっている。その前にちょっとしたシーンを挟むことで2人が信頼に至るきっかけが理解できる。
そういった人間の感情を機微を映画にするのが上手い。
石川監督は現代では少なくなったいわゆる社会派ミステリーを題材にした映画作りに挑んでいる。
点と線、砂の器、飢餓海峡などなど。
この映画が見事な完成度であるのは愚行録でもコンビを組んだ向井康介の脚本によるところも大きい。
セリフにその人間が宿り、素晴らしい役者の演技と相まって映画の質を上げている。
原作を生かしつつ見事な構成だった。
あと好きな役者さんばかりで楽しかった。
眞島秀和さん最近好きで愚行録もいい役だったけど、今回も憎たらしくてよかったな。
#ある男
#aman
#日本映画
#石川慶
#向井康介
#妻夫木
#今年もよろしくお願いします