あそどっぐインタビュー7日目 その3 「阿曽太一があそどっぐになるまで・・・!」
あかほし(以下「ほし」): あそさんが、高校でたあとって、相方さんとお笑いやっとったんですか?
あそどっぐ(以下「あそ」): お笑いやっとったってかんじではないねえ。
ほし: あ、そうなの。
あそ: まあ、ネタをかいて、見せて、ああだこうだ言って・・・っていうのはあったけど。だから、人前でやったのは卒業後1回ぐらいじゃないかな。
ほし: どこでやったの?
あそ: 福岡で重い障害持った人たちの、レクレーションキャンプみたいなのがあって、そこで、やったのかな。(注1:文末参照)
ほし: それが何歳ぐらいのとき?
あそ: 20なったかなあ?20なる前か?19とかだね。
ほし: お〜、まだピチピチだね。
あそ: そうだねえ。
ほし: 相方さんが亡くなる前後は、どんなかんじだったんでしょう?
あそ: う〜ん、けっこう弱ってはいたね。しゃべるのもちょっと、長い間しゃべるのはキツいかんじだったかなあ。
ほし: ああ。
あそ: やっぱ呼吸がね、弱くなっていく障害でもあるからね。ぜんぶなんもかんも弱くなっていくんだけど、うん。
ほし: そうかあ。でもしょっちゅうは会いにいけないから・・・
あそ: うん。
ほし: 電話・・・かなんかで連絡とってたり?
あそ: 電話はしないんだよね。
ほし: おう。
あそ: あの〜、当時まだ携帯とかもね、あんま・・・PHSってしってる?(注2)
ほし: ああ、うん、ギリギリわかる。
あそ: ・・・を、ちょっと、みんな持ち出したぐらいだから。
ほし: ほえ〜。
あそ: で、むこうは病院にいるからそんなね、自由に電話できる環境でもないんだよね。
ほし: そうか。
あそ: だから連絡はもう、会うとき以外はとらないよね。
ほし: あ、そうなんだ。
あそ: だから2〜3ヶ月に1回、会うぐらい。
ほし: そうかあ。今日、あそさんにこれは聞きたいなっておもってたのが・・・
あそ: うん。
ほし: 相方さんが亡くなって、お笑い芸人またはじめるまで、どんなふうに過ごしてたんだろうなって。デイトレやってたとか、そういうことは聞いたけど。
あそ: デイトレやってたね。そうね、うん。ホントただ、そればっかりだね。あとはまあ、友達と呑んだり、遊んだりはしてたかなあ。
《あそ: 肩左に、まえ》(注3)
あそ: そうやね、だからお笑いはぜんぜんやってないね。
ほし: そうか。ネタ書くのをやめたってこと?
あそ: そうだね、ネタはまあ、もちろん書かないねえ。バラエティもほとんど見てなかったかな、そのころは。うん。
ほし: 相方さんのお葬式は、行ったの?
あそ: あ、お葬式は行ったよ。
ほし: ああ、そっか。
あそ: うん、でもお葬式あんま好きじゃないんだよね。なんかね。
ほし: そうか・・・
あそ: うんうん。まあでも、いちおう行ったは行った。
ほし: 好きじゃないっていうのは、だれのお葬式でも好きじゃない?
あそ: そうだねえ・・・なんか、まあ寿命まで長生きして、もういいんじゃないかなっていうようなかんじの、大往生で死んだ人のお葬式とかはね、べつにいいけど。早く死んだ人のお葬式は、あんま好きじゃないなあ。
ほし: ああ、そうっすね。
あそ: うん。
ほし: そうかあ。あの、わたしが中学生のとき。友人のお父さんが亡くなったんですよね。そういえば私も、あのときのお葬式がいちばん印象にのこってるなあ。
あそ: なんで亡くなったの、病気?
ほし: ガン。その子とはかなり親しかったので「父親が血便したんだよね」っていうのを、私も耳にしてたんですよね。それもおそらく・・・リアルタイムで。聞いてはいたけど、ものすごい病院嫌いで、頑固なお父さんらしいというのもあり「なんかヤバそうだけど、う〜ん・・・」と思っていたら、あっという間に亡くなってしまって。だから、見つけるのがおそかったんですよね。
あそ: あ〜うんうん。
ほし: なんか、そのお父さんのお葬式は・・・その〜、90いくつの老衰でなくなった祖父のとは、ぜんぜんちがいましたね。
あそ: そうだよね、やっぱね。うん。まだ若くて悔やまれる時期はね。うん、なんか、ちがうもんだね。
ほし: あそさんは当時は・・・どんな気持ちだったの?
あそ: 相方が死んだとき?
ほし: うん。
あそ: 相方が死んだときやっぱなんか、くやしさばっかりだったね。悲しいっていうのは、もう、ほんと、何年もたってからだね。
ほし: あ〜、そうかあ。
あそ: うん、悲しさがでたのは・・・ホントそうだね、うん。7回忌以降ぐらい・・・まではくやしさばっかりだったな。
ほし: あ〜、それが前にその〜、「やりたいって言ってたことあったのになあ」って言ってた・・・
あそ: そうね。それで、まあなんも・・・見てるだけしかできんかった、っていうのはすごくくやしかったねえ、だからまあ、お葬式いくときもまあ、くやしいかんじがもう・・・すごい腹立たしいかんじばっかりが湧き出てくるから、なんか、途中で退席しそうになるのをずっとガマンして、終わった瞬間いそいで帰る、っていうかんじやったかなあ。
ほし: そうかあ。
あそ: うん。
ほし:そのあと、お笑いやめちゃったんですね。
あそ: うん、やっぱりなんか相方の存在がね、すごいぼくにはデカかったからね。
ほし: うん。
あそ: だから、「2人じゃないとやれない」っていうふうに思い込んだのがひとつと、あとはやっぱしなんか、好きなことを自分だけやっていくのは・・・
ほし: ああ・・・
あそ: だから当時なんかやっぱ、自分が見殺しにしちゃったみたいな、ふうに、思ってたから、ずっと。だから自分だけ好きなことをやってたら、なんも、いけないかんじがして。
ほし: うん。
あそ: ・・・かねえ。とにかく自分が見殺しにしたってばかり、思ってた・・・なあ。
ほし: ああ・・・それはキツいな。
あそ: うん、そうだね。そうだね・・・だからまあ全くちがうことをやってた。
ほし: ああ、デイトレとかね。あそさんがまえお酒のみまくった時期に障害が進行したって話、してたじゃないですか?
あそ: うん。
ほし: それって、相方さんが亡くなったあと?
あそ: それはそうだね。でも、相方が亡くなったから、悲しくて呑みまくったっていうんじゃ、ない・・・とは思うけど。まあでもよく呑んでたね(笑)
ほし: 相方さんとはどんな日常会話してたんすか?
あそ: う〜ん、そうだねえ。お笑いの話は多かったね。
ほし: あ〜。
あそ: あとはまあ、向こうは音楽もやってたから、音楽の話。
ほし: うん。
あそ: と、まああとは女の子の話。
ほし: うんうん。
あそ: う〜ん・・・だね。あとは将来の話とか。まあ大体はたわいもない話だよ。
ほし: へえ〜・・・なんかティーンですね、非常にティーンですねえ。
あそ: そうだよ。そこらへんは内容はあんま変わんないんじゃない?
ほし: うんうん。とはいえ私、男子高校生同士がなにしゃべってたかぜんぜん知らんからな・・・
あそ: たぶんそんなもんだと思うよ。
ほし: そのお笑いの話は、自分たちのコントの話してたの?
あそ: まあでもあの、ダウンタウンさんの話がおおかったね。当時はやってたしね。
ほし: あ〜そうなんだ、うんうん。
あそ: 当時、毎週日曜「ごっつええ感じ」っていうダウンタウンさんのコント番組があったんだけど。
ほし: うん。
あそ: 月曜の朝はかならず「昨日見たか?」っていうのからはじまって。
ほし: へえ〜そうかあ。将来の話は、どんな話しとったの?
あそ: 将来はねえ、そうだねえ。「ひとり暮らししようかなあ」とか。
ほし: うん。
あそ: うん、そうだねえ・・・まあ相方はバンドがすこし、高校のときに軌道にのりかけたから。
ほし: うん。
あそ: 「もうホントに自分たちでライブハウスかりてライブやったらいいんじゃないか」とか、そんな話してたかなあ。
ほし: わかわかしい。
あそ: うん、そう。そうだよねホントね。
ほし: そっかあ。ふーむじゃあ、あそさんが相方さんの思い出じゃないけど・・・
あそ: うん。
ほし: 持ってるアイテムって・・・なにかある?
あそ: 相方のことでもってる思い出?
ほし: うん、なんかアイテム・・・?
あそ: アイテム。写真と、そのDVDと、あとはなんかなあ〜・・・形見分けでもらった、なんかのCD。
ほし: ああ〜。
あそ: むこうのお母さんから、「奥田(相方さん)がさいきんよくきいてたCD」ってもらったんだけど。
ほし: へえ〜。
あそ: 結局あけることができずに、そのまま・・・うん、たぶんどっかあるわ。
ほし: あ〜そうなんや。
あそ: うんうん。あとはなんかあるかなあ・・・?そんなもんじゃないの?
ほし: ひゃあ。そっかあ。
あそ: うんうん。
ほし: でも時代が時代だもんな。
あそ: そうだねえ。
ほし: そんなにバラバラバラバラ残らんもんね。JKならプリクラとか残るけど。
あそ: うん、まあお互いでプレゼントとかもしないしね(笑)
ほし: だいぶん変わった男子高校生ですよね。
あそ: そんなもんだよなホントな。
ほし: へえ〜。
あそ: あとCDがあるわ。バンドやってたころに2枚だけCDつくってんのよ。
ほし: へえ〜。
あそ: うん、だからCDはあるな。
ほし: あ〜そうなんだ。聞いてみたいな、それ。
《あそ: ちょっと右耳を・・・》
あそ: うん、それぐらいだね。
ほし: ふ〜〜うんうんうん。
《あそ: ひだりのまくらちかづけて》
ほし: そうかあ、じゃあ、相方さんが亡くなって。
あそ: うん。
ほし: デイトレとかはじめて。
あそ: うんうん。
ほし: で、まあ呑んだりなんだりしながらちょっと体調悪化し、で、例のうんち先生にかかって・・・(「怒りのホスピタル(修正版)」)
あそ: うん。
ほし: 1年半ひきこもってた。(「あそどっぐと阿曽太一のあいだで」)
あそ: そうそうそうそう。
ほし: あ〜そっか。
あそ: うん。
ほし: で、またお笑いやろうかなって思ったのって・・・?
あそ: わ、え〜っと・・・相方が死んで10年ぐらいたったのかな。うん、ちょうどなんかもう、心の整理もようやくついたんだろうね。でそんとき、ちょうどニコニコ動画が流行ってて。
ほし: うんうん。
あそ: ぼくパソコンのことうとかったから、ぜんぜん知らなくて。
ほし: うん。
あそ:で、うちにきてるヘルパーさんに「なんかふつうの女の子が、自宅から放送してるから、出会いのチャンスになるよ」って言われて。
ほし: へっへっへ(笑)うん。
あそ: で、「じゃあ見てみるわ」って、見てみたらあの〜、ホントふつうの人が放送を簡単にやってて。
ほし: うん。
あそ: で、まあ・・・たまたまそんときね、見た子があんまかわいくなかったのよ。
ほし: (笑)
あそ: かわいかったら、出会いのことばっかりで、余計なこと考えなかったかもしれないけど、たまたま可愛くない子を見ちゃって「あ、こんな可愛くない子でも、放送して何人も見てもらえるなら、ぼくのネタも見てもらえるんじゃないか」って。
ほし: おまえ。(笑)
あそ: (笑)
ほし: 想像以上にゲスゲスしかった。
あそ: (笑)
ほし: そうなんや。
あそ: うん、そんなかんじやね、うん。
ほし: へえ〜、その「女の子おるで〜」って言ったヘルパーさんは、今もいる人なの?
あそ:うん、いる。今もね、動画てつだってくれてるよ。
ほし: あっ、そうなんだ(笑)
あそ: 今もYouTubeの動画で主に。手がでるのは・・・
ほし: もしや「神の手」さん?
あそ: うん、「神の手」メインでやってるのはその人だね。
ほし: あ、そうなんだ、神の手さんだったんだ!
あそ: うん。
ほし: へえ〜。そこつながるんだ。おもしろいな。
あそ: うん、ギャオでティファニーの話(注4)をさいしょにカメラの前でふりだしたのも、その人だね。
ほし: (笑)顔は映ってなかったよね?
あそ: うん、「顔はうつさないで」って言われてんだよね。
ほし: あ、そうなんだ、そっか。じゃああれか・・・さいごの飲み会のシーンのヘルパーさんもその人かな?
あそ: そうそうそう。
ほし: あ〜ホント。なんか仲よさそうっすね、あそさんとね。
あそ: ああもう長いからね。もう10年以上きてもらってる。10年っていわんね、14年ぐらいきてもらってるかもしんないね。
ほし: すげ〜。そんとき、わたし14歳よ(笑) すげ〜。へえ〜神の手さんだったんだ。
あそ: その人が、神の手さんだったね、いちばん最初の。
ほし: 知らないんだろう、あそどっぐファンはこれ。
あそ: うん、だれがだれかは知らないと思うよ。
注1:前記事で「あそどっぐを待つ」と言ってくれたサークルとは、またべつのグループ。
注2:PHSとは、携帯電話の始祖鳥みたいな通信機器のことです。
注3:あそどっぐはヘルパーさんに声かけして、体勢を微調整している。
注4:あそどっぐ、聖夜の勝負所で神の手さんから「女の子を口説くならティファニーっす!」と鼓舞され奮発するも、恋実らず。なぜかティファニーだけは受け取ってもらえました・・・というお話。数年前にGYAOであそどっぐのドキュメンタリー番組が公開されたが、現在は視聴できない。
次回、「あそどっぐにとっての、自分の身体とことば」
前回、「あそどっぐと阿曽太一のあいだで」
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