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映画「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」
目玉のおやじかっこよすぎました。
映画見てから、2頭身すがたにもときめいてしまうからだになっちゃったぞ。
は、さておき。
いま読んでる本に「日本人の"空気読んでついつい自重しちゃうやさしい性質"」みたいな文言ありましたが、わたしはそれに「はみ出たヤツを殺す気合い及び残虐性」とルビをふって読みました。
まあ、そういうのがテーマです「ゲゲゲの謎」。
和をもって貴いとか言ってていいのかしら、な人間ホラーサスペンス(妖怪じゃないのがポイント)。
なので「福田村事件」ととても食い合わせがいいです。
しらないオッサンの名前、しらない単語を羅列するような、しんだ歴史を教わって「ふーん、なんなんだろーな」と忘れるぐらいなら(私です)、「福田村事件」と「ゲゲゲの謎」みる方が、「過去と地続きな現在を理解し、サバイブしていくための歴史学習」の入り口としては、適当な気がする。
〜 以下、あかほしの水木愛放出コーナー 〜
「水木しげる自身が、水木しげるの最高傑作」
という言葉は、荒俣さんがいってたのかな?方々でそう言われてるみたいだけど、わたしもそう思います。
漫画より本人の方が圧倒的におもしろい。
水木サンがようやくブレイクしたころ、低迷していた手塚治虫は水木しげるをみるなり「おまえの漫画はおれにも描ける」とケンカ売ったらしい(初対面)。
漫画の神さまから、だしぬけにハードな嫉妬をぶつけられたのに対し、水木サンは怒るでもビビるでもなく「ふ〜ん」と受け流した。
(手塚治虫は自身の描写力の低さをずっとコンプレックスに思っていたため、水木漫画の背景の精緻さにものすごく嫉妬していたとか・・・この「おれにも描ける」で産まれたのが「どろろ」ってのが、またすごいけど)
私はたしか、ウィキでこのエピソードをしったはずですが、あらためて調べると見当たらない。なので私の創作かもしれないし、ウィキだからそもそもが本当かすら不明です。
まあともかく、私はこのエピソードで「いやんかっこいい♡」となり、数年彼のエッセイやらをむさぼりよみ、はては水木サンと親交のある荒俣宏のトークにまで行き(おもしろかった)、水木サンの生前にフライング墓参りまでしてました。今で言う"推し活"かな。
わたしの推測ですが・・・戦争を経て、「人間が『これが正しい』」ということのバカらしさを心底かんじていて、だからこそ手塚治虫の偉大さ(および周囲の圧倒的な評価)にいっさい気圧されることがなかったのかなあ、と勝手に想像してます。ぜんぜん、人間のものさしを信じてない。
とはいえ、戦争へ行くまえから、「死」への興味が昂じすぎて、幼少期に弟を本気で殺そうとしたりしてるんで(当時を振り返ってもナチュラルにわるびれない。スげぇ〜・・・)、もともと「人間のこしらえた価値観」に関心がうすい人なんじゃないかとは思うけど。
生来のこのノリに、戦争でブーストかかってのあの境地なんだろうなあ・・・とよく想像します。
(水木サンのこの部分を、劇中のゆうれい族である「ゲゲ郎(目玉おやじ)」が体現してる)
こんなふうにネジの飛んだ一面が「おばけにゃ会社も仕事もなんにもない♪」を作詞させたんだろうと思います。
が、その一方で戦争から生還した水木サンは、今度は仕事に忙殺されているんですよね(おそらくこの部分を、劇中の帰還兵である”水木”というキャラに託してる)。
その揺れ幅のひろさ、おおきな矛盾をかかえる強さ、バイタリティーみたいなのも、また魅力的。こまやかで神経質な理性によるツッコミに、ぜんぜん動じない。というか、恐れていない。
そういう意味で、未知な大いなるものを信じてゆったり生きるっていいな〜。こころのよりどころがあると、落ち着くだろうなあ。うらやましいや、なんてよく思います。
ふつうだったら神さまとか、敬われてて、すでに権威や定評があるものを信じそうなところを、下火になりつつあった妖怪をじぶんのコアーにすえるあたりも、またロックンロールで、我が道をいってる。
ときおり男尊女卑が香るので、心理的に距離をとることもあるけど、やっぱカッコいいとこはカッコいいんだよな。これ書いててやっぱわたしは水木サンがすきだなーとあらためて再確認できました。その人のかがやく部分には、「うわ〜光ってる〜」って感じ入るしかない。
「水木しげる」というおもしろい人を、いくつものキャラに分割し、ストーリーのなかで水木しげるのさまざまな想いを昇華させてる。
・・・かどうかは本人に聞かないとわからないけど、制作陣が水木サンにむけた愛が伝わるぜえ、と思ってうれしかったしたのしかったです。おもしろかったな〜
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