11月の読書
画像はみんなのフォトギャラリーからお借りしました。
寒い日が増えました。今月は芥川賞受賞作を2冊読みました。
最近、韓流文学が流行っているようで、次月は一冊読んでみたい。
また、小学館から発行された紙の小説雑誌「GOAT」が気になっています。
裏庭
王道ファンタジーではあるが、難解な作品でもあると思う。
読んでいても、これは何の暗示なのだろうと感じるような思わせぶりな部分が多くて少し気になったが、ストーリー自体は、先が気になってどんどん読むことができた。
主人公の困難は、外的な要因(父と母と主人公との関係)が大きいのかと思えたが、それを自身の内面の弱さとともに前向きにとらえて、受け入れ、はねのけていく様は読む人に勇気を与えるものだと思う。
ただ、裏庭のすべてのものが、現実と裏表をなすようなものであると思うと少し息苦しい。もう少し遊び感があった方が個人的には好みではある。
夜果つるところ
先月読んだ「鈍色幻視行」に出てきた作中作品。
「飯合梓」著の奥付もあり、少し凝った本のつくりになっている。
墜月荘という謎の多い建物に住む、これまた謎の多い主人公の身の回りで起こる話。
時代は2.26事件の少し前・・・といったところか。
前半、謎が多く、また墜月荘も薄暗いような幻想的なような、独特の世界観を醸し出していて、それが、後半ぱっと彩られる。
成程、映像化にはピッタリかもしれない。そうだったのかーというオチもあり、どちらかというと「鈍色幻視行」よりはこちらの方が好みだったかもしれない。
「学び」がわからなくなったときに読む本
大人になってからの学びかと思っていたが、大半は子供への教育の話だった。実際に現場に立っている先生との対談が中心で、興味深く読んだ。
先生は子供への愛情を持ちながら、教育の可能性も追及しているのだと気づかされる内容だった。
ここ数年、教員不足、急速なIT機器の普及もあり、教育の現場も迷走している部分があるのではないだろうか?親も学びというものをもう一度考え直す必要がありそうだ。
サンショウウオの四十九日
芥川賞受賞作品なので、あちこちでどういう話かというのはサラッと書かれているので、ある程度まではネタバレ前提で。
主人公は、結合双生児だ。冒頭、あまりにも普通の女性の暮らしが書かれ、途中で結合双生児だということが明かされるのだが、その暮らしは、帯にあるように「驚きに満ちた普通の人生」である。
四十九日とは、叔父の四十九日なのだが、叔父さんと主人公たちの父との関係は?そして二人の今後は?
二人の考えが特殊なようでいて、しかし結局は、結合双生児ではない人たちとあまり変わらないのではないかと思えて、二人の思考をなぞっていく作業は苦ではなかった。自分とは?意識とは?心は脳にあるのか?子供の時に疑問に思ったことをまた考えてしまい、自分とはいったいなんなのだろうかと考えながら、でも日常はすぎていく。そんな話。
バリ山行
面白かったけれど、この本が芥川賞受賞作だということは少し意外だった。とにかく、そう思えるくらいに、読みやすい。
「バリ」は読む前には地名かと思っていたのだが、違っていて、山岳用語というのかな?とにかく、主人公が「バリ」にのめり込んでいく話だ。
六甲山というすぐそこにある山なのに(ケーブルでも車でも行けるしハイキング登山もできる。もちろん本格的登山もできるけれど)、山とはこんなに懐の深いものだと思わせる描写がすばらしい。
山に人生を重ね合わせる小説かと思ったが、違う、これは主人公が山に憑りつかれていく話なのだと思った。
本心
舞台は近未来の日本。貧富の差が広がり、少子高齢化が加速して自由死が認められている未来。IT技術はより進化し、個人のヴァーチャルフィギュア(VF)を作ることさえ可能な未来だ。
しかし、この未来、既に今の日本では半分現実になっているようで(単行本発行は2021年)、ほとんど現在の話として読めてしまう。
繰り返されるのは、社会的弱者の物語だ。生まれながらにして貧困で充分な教育が受けられず、受け継がれていく貧しさや格差。弱者である主人公の運命はどうなってしまうのか?そんな話だ。
思ったより社会派な話だった。ラストはネタバレになってしまうので書かないが、希望が持てるラストでよかった。
以上です。
11月は本屋で気ままに選んだ本を読みました。
だいたいいつも書評や、読書メーターで気になる本を探して読むことが多いのですが、やはり本屋は楽しいです。
「学び・・・」の本は、本屋「Title」から購入しました。新着情報から「これ」と思うものを購入したのが二回目です。購入したものは、どれも読みごたえがありました。ぶらっと選ぶのも、選書されたものから選ぶのもどちらも楽しい。