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文章読解能力とは何か?
togetterで実験をしています。このまとめを今丁度2000人くらいがPVしたところですが、いくつもの仕掛けに誰も気が付きません。
まず元記事をちゃんと読めている人がいないので、ここで言われている「日本人」が「カナダのバンクーバーのシェアハウスに興味のあるらしい日本人」であり、単なる「でかい主語」でないことを補足してみましたが、相変わらずの脊髄反射的短文コメントがつきます。
ちなみに元記事を東大松尾研究所のELYZADIGESTで三行に要約してみるとカオスになりました。
教養ある人は、言われたことだけに答える、あるいは言われたことも満足に答えられない。自分の声で相手に言いたいことを発信できない方が大変増えているという。ネットでは、言葉並べに絵文字で感情表現が当たり前になりつつある。
人間がまとめると、
近頃の日本人からの問い合わせが小学生並みだ。私の想像では20年後は文章読解能力などなくなっているような気がする。発信力も落ちている。情報を正しく受け止めるためには教養が大切だ。
でしょうか。まず「コミュニケーション能力が驚くほど貧弱」で驚いたというところから書かれている訳ですが、その対象が「カナダ留学希望者」であれば、日本人として危惧する感覚は上から目線とか、「でかい主語」という話ではなくなりますよね。コミュニケーション能力から文章読解能力に話が転じるのは、よくあることです。昨今のSNS上のトラブルでよく見かけるのですが、コミュニケーションが取れないことを一方的に相手の文章読解能力の所為にして、人格攻撃に走るというパターンがあります。自分の言っていることは正しいのに意味が通じないのはお前の文章読解能力が低いからだという決めつけです。
元記事の人の場合、そうではなくて最近頻発する謎の問い合わせに心配して、前向きに教養の必要性に論理展開する訳ですね。
しかし「情報を正しく受け止める」というのは難しいですね。
これは多分アゴラのひっかけテストです。「カナダのバンクーバーのシェアハウスに興味のあるらしい日本人」がという前提があって、かみ合わない単語の会話をしてくる、謎のメールを送ってくる、という事例とその後の論理展開、タイトルと小見出しが不整合です。この文章から読み取れるのは、「え?そんな人がカナダのシェアハウスで暮らしていける?」「この社長は一億円も教養も持っていないの?」ということでしょう。色々おかしい、引っかかる記事が読まれやすいからでしょう。
こんなことにも気が付かず、タイトルと小見出しだけで悲嘆したり同意する人はもうマインドコントロールされてしまっている訳です。
そして
中島敦「山月記」という小説を思い出しました。官吏に就こうと猛勉強しましたが、虎に化身してしまった、その嘆きの遠吠えが聞こえるというお話です。自分にもそんな処がないか。優しい性格で自分にできる事や経験値が多くあるのではないかと思います。そんな処があると知るだけで違うと私は思います。
— ANGLE-사진-♪.net (@LUCANUST) June 18, 2022
こんな罠にも気が付きません。「官吏に就こうと猛勉強しましたが、虎に化身してしまった、その嘆きの遠吠えが聞こえるというお話です」って、そんな話でしたっけ?
こころ読了
— 読書とカメラが好きたかひろ (@takahiro_3731) June 18, 2022
なるほど、こんな後味の悪いおはなしだったんですね。#夏目漱石#こころ pic.twitter.com/z50uF7psiV
このように『こころ』を暗い話にしてしまうのは典型的な誤読ですね。繰り返しますが、先生は話者によって全肯定されています。
そういえば夏目漱石のこころ、百合小説っていう言説があったな
— onebrack (@onebrack) June 26, 2022
いや言説っていうほどちゃんとしたあれじゃなかったけど
BLじゃなくて百合という話は初耳です。
例えば夏目漱石「こころ」の高校的正当読解は「恋愛と友情に板ばさみされた葛藤」としての物語だけど、「こころ」=「先生が最初から友人Kを殺すつもりの物語」としてしか読めない或る意味捻くれた学生もいるし、そもそもどうして先生がKに遠慮するのかわからない学生もいる筈。多様な読解を潰すな。
— copywriting (@Copy___Writing_) June 26, 2022
これは又極端。この人はSNSでトラブりそうですね。ひねくれた解釈は飽くまでひねくれた解釈だと思います。
いずれにせよ、情報を正しく受け止めるための文章読解能力は今のtogetter民にはなさそうです。