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BtoCからBtoBマーケティングへの転換:課題と学び
たまたま新卒でマーケティング担当に配属された私ですが、紆余曲折ありつつも、9年目の今もマーケティングの役割を担っています。
「マーケティング」という職種の名前は同じとはいえ、BtoCからBtoBへシフトし、自身の企業も大企業からスタートアップへ、扱う商材もアプリからSaaSへと変わり、全く違う環境に身を置いています。
その中で、色々と壁にぶちあたりつつも、得た学びは多いので、今日は簡単にこれまでの振り返りをしつつ、私的に難しかったポイントを書き留めておこうと思います。
これから、BtoC→BtoBへの転換や、他職種からマーケティングへの挑戦を考えている方がいらしたら、1つでも何か参考になれば幸いです。
前提:
1年目〜5年目 大企業のBtoCヘルスケアサービス(キャリア後半はアプリマーケティングが主)アプリは1,000万DL以上
5年目〜6年目 創業4年目ベンチャーのCS(カスタマーサクセス)→PMM(プロダクトマーケティングマネージャー) ※本記事では経緯省略
7年目〜現在 新規事業のBtoBマーケティング責任者
BtoCマーケティング:消費者の関心を繋ぎ止められるか
BtoCマーケティングを行っていた際の最大の課題は、消費者の関心の短さでした。特に最近の消費者は(私もそうですが)、SNSやWEB広告を見て次々に新しい商品やサービスに触れ、すぐに関心が他のものに移ってしまいます。そのため、いかにして消費者の関心を引き留め、継続的に商品やサービスを使用してもらうかが重要です。
よく、"可処分時間"のうち、何分を使ってもらえるかを考えていました。(サービスの性質上、30秒か長くて5分かな…とか)
例えば、私が担当していたヘルスケア系のアプリでは、ユーザーがアプリを開かなくなると(当たり前ですが)アンインストールされたり解約されやすいという状況でした。そのため、プッシュ通知やインセンティブ設計を工夫し、いかに毎日アプリを開いてもらえるか、休眠ユーザーをどうすれば復活させられるかを重点的に施策を実行しました。
※ここはアプリで提供しているサービスの内容や性質によって大きく変わると思います
プッシュ通知では、休眠ユーザーに新しいキャンペーンの訴求をいかに魅力的にシンプルに伝えられるかを意識して送りました。
文字数は限られているので、プッシュの文言とCTRをもとにPDCAを回していました。インセンティブ設計では、特典を「◯月◯日までにアクションを完了すると獲得できる」という期限を設けることで、ユーザーがそのインセンティブを受け取り損ねたくはないという意識を高め、アプリを開く習慣が生みました。
もちろん他にも色々な体験設計は用意
これらの施策は、ユーザーの行動データや定性的なフィードバックを基に設計し、DAUやMAUなどのモニタリング指標を追い続けました。SNSの口コミやアプリレビューも重要なデータ源として活用し、ユーザーの反応を把握して施策を最適化しました。
(データ分析も初めてやって苦戦しました…特に最初はデータを見るのが面白くて時間を溶かしてしまうということも。このあたりも失敗談として色々書けそうです)
BtoBマーケティング:意思決定プロセスと営業連携の重要性
BtoCでは比較的短期間で関心を引き、マインドシェアをとりにいき、契約や購入に繋げることができますが、BtoBではそのプロセスが非常に長く、意思決定に時間がかかるという点が大きな課題です。
特にBtoBでは、複数のステークホルダーが関与するため、購入に至るまでには多くの問題がクリアされる必要があります。
そのため、営業とマーケティングの連携が非常に重要です。営業が得た「生の声」をマーケティングにフィードバックし、それを元に広告メッセージや訴求内容を微調整することが求められます。BtoCではマーケティングが主導し、消費者と直接的に接触することが多かったのに対し、BtoBでは営業と密接に連携し、商談の進行をサポートしていく必要があります。
もちろん、自分自身が商談に同席したり、自分が商談を行ったりということもしますが、それでは本来すべきマーケティングの施策実行に手が回らなくなってしまうので、バランスが重要です。
また、BtoBではターゲット層へのアプローチ方法も(商材によりますが)BtoCとは大きく異なり、WEB広告だけではリーチが難しいため、オフラインの展示会やイベント、セミナー、お電話したり手紙を送ったりなどあらゆる手段を駆使する必要があります。
企業が抱える課題を必要なタイミングでキャッチし、より的確にアプローチし、商談を進めていきます。
施策が全然違う:BtoCとBtoBのマーケティング戦略の違い
BtoCとBtoBでは、マーケティングの根本的な考え方は同じ部分もありますが、施策や手段は全く異なります。例えば、BtoCでは消費者の関心を引くための感情的な訴求や、すぐに試してもらうための簡便さが重要ですが、BtoBでは意思決定者に対する論理的な説明や信頼の構築が重視されます。
BtoCでは、短期間で関心を引き、消費者が購入に至るまでの流れをスムーズにすることが求められます。
一方、BtoBでは、商談が進むにつれて多くの関係者を巻き込んでいくため、時間をかけて信頼を築き、購買プロセスの中で課題を解決する提案をし続ける必要があります。
さらに、もはや商談前にある程度の情報収集が終わっている、という状況にもなってきている現状において、いかに前のフェーズから接触ができるか、という点も重要です。
手段として、セミナーやホワイトペーパー、事例コンテンツの作成など多岐にたります。そしてこれは私の場合、BtoCではほとんどやってきませんでした。
これに加えて、認知獲得のアプローチや広報の役割も異なります。BtoCにいた頃は、大企業という甘えもあり広報についてはほとんど意識をしてきませんでした。
しかし、ベンチャーに転職し、ほとんどの企業の方からすると知らない会社であるという状況を考えると、広報の重要性をひしひしと感じます。
(ここで、無名である→有名になる必要がある→テレビ広告だ!みたいな考え方はやめた方が良いです)
まとめ
BtoCとBtoBのマーケティングには、それぞれの特性に応じたアプローチが求められます。
BtoC(無形商材・アプリなど)では消費者の関心を引き留め、継続的な利用に繋げる工夫や、ブランディングなど世界観が特に必要ですが、BtoBでは商談の長期化に対応するため、営業との密接な連携や商談前などお客様が明確に見えていない状態においていかに有益な自社しか発信できないコンテンツを充実させ接触できているかが重要です。
※注)継続利用やブランディングなどはどちらも重要ですが、特に重要だと思ったという意味で記載しています。
さらに、BtoBでは独特の、ABM(アカウントベースドマーケティング)やカスタマーマーケティングといった手法・役割もあります。フェーズや事業内容によって変わるとは思いますが、今何が重要なのかを考え、その時々の最善の手法を取る必要があります。
BtoCもBtoBも、結局は「人」なので根底は変わりませんが、BtoCマーケティングをやってきたから、BtoBもいけるだろう、と思うと意外に何も役に立たないという状況になりかねません。
マーケティングに限った話ではありませんが、部署が変わる・会社が変わると言った場合には、一度アンラーンをして、まっさらな状態で吸収することをオススメします。
「前うまくいったから」という過信は、本当に通用しません。
BtoB/BtoCのいずれにしても、自分が最高だと思っているサービス・プロダクトを、一人でも多くの人に知っていただき、良いと思ったら使って購入・契約していただき、習慣が変わる・仕事の仕方が変わる、それによってその人の生活が豊かになる、というサイクルの一番最初のきっかけに携われるマーケティングという役割は、自分にとっては非常に大好きな役割だなと思い、日々過ごしています。
今回は、手段の違いに関する話が多くなってしまいましたが…、
BtoCもBtoBもどちらも面白いので、マーケティングというものをより深めていけたらなと思います。