留学生との会話

10月から研究室に留学生が来た。
上海の大学からやってきた、いかにも生真面目そうで、裕福に暮らしてきたのだろうとうかがい知れる感じの学生である。
彼は、日本語のリスニングはほとんど完璧にこなしている。
たまに知らない単語や言い回しがあると、「なにそれ?どういう意味?」と聞いてくる。
しかし、スピーキングはかなり苦戦しており、より自信のある英語 (?) で話しかけてくる。
僕は、英語はそこそこわかるし話せるが、留学生の彼は日本語を覚えた方がいいという指導教員の方針もあり、あえて日本語で話している。
その結果、英語に対して日本語で返すという、変なラリーが続いている。
とはいっても、僕の日本語も彼にわかりやすくするため、英語混じりの日本語だったり、日本語混じりの英語だったりする。
ルー大柴みたいなものだ。

日本語を話せるように努力しようと伝えたのだが、彼は自分の日本語のスピーキングスキルの低さに恥ずかしさを覚えているらしい。
こういう時に、僕は客観的な事実しか述べられない。
「母国語じゃない言語どうしで (英語で) コミュニケーションをしても、絶対にどこかで齟齬が生じる。これからの研究活動や日常生活を考えても、日本語を頑張って話せるようになった方がいいと思う。」
と、教科書的なコメントしかできない。
とりあえず、お昼時はみんな研究室の1室でご飯を食べているから、ぜひ一緒にお昼を食べて、一緒に話そうとだけ伝えた。
生真面目な彼のことだから、すぐに実践してくれると信じている。

昨日は彼と雑談していたら、夜中の1時を回っていた。
彼は非常にお話好きのようだ。
最初は自転車が壊れたから、修理できるところを教えてくれと言われただけだったが。

僕はかねてから、なぜ彼がこの研究室に留学しにきたのか疑問だった。
指導教員が昔面倒を見ていた学生が、彼の大学でお偉いさんになって、そのツテでうちに来るということ。
彼の学部時代の研究テーマは、研究室のトピックからするとお門違いだということ。
そのくらいしか、事前情報がなかった。
深夜の雑談で聞いてみた。

「雪が見てみたいから」
「サッポロビールが好きだから」
続けて、「研究をしにきたというよりは、経験をしにきた」と述べていた。
なんとも印象的で香ばしい。

しかし、その言葉が本心とは信じられないほど、彼は真面目に研究に取り組んでいる。
まだ第一印象から抜け出せないステップであることは間違いないだろうが、こんな人がいるんだなあと思った。

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