林長先生との会話
昨晩、林長先生とお話しさせていただいた。
彼はいつも通り缶ビール片手であった。
どんなことを言われるのかと思っていたが、基本的には僕の意見を支持してくれた。
彼は一度就職したのち、職場の環境にウンザリして院進したんだとか。
もともと、学部生の頃は自分は院に行くようなタマじゃないと思っていたそうだ。
側から見たら信じられない。
学振がきっかけで色々思い悩んだだろうけど、学振の評価なんか気にするなとのことだった。
でも、僕の悩みがそこにないことも理解していた。
曰く、今の時代、就職なんて選ばなければどこでも行けるとのこと。
ただし、一度就職したら多分博士行こうなんてもう思わない。
それでも進学するヤツは決意が違うとのこと。
そしてしきりに、君は賢いんだと言ってきた。
曰く、先生が最近になってようやく気づいたこと、業界への不信感をすでにわずかながらも気付いていたことが、事の真意らしい。
アクティビティとして楽しめる盲目さ、名を挙げてやるんだという野心を持っているか、ただの天才でもない限り、博士に行っても同じようになやむだろうとおっしゃった。
そして、てっきり僕は博士に行くとしたら理論系の研究室、数理生物学の研究室に行こうと思っていたが、先生はむしろ、探索的な研究をするよう勧めてきた。
それは、地道に当たりの宝くじを見つけるまで、ひたすら自然を観察するという事らしい。
いわば、ナチュラルヒストリー (自然史) 的な研究が向いているのではないかとのこと。
それは、理論研究に進んでも、先生と僕が共有する行き詰まり感から逃れるられないのではないか、という理由からだった。
そして、関わった1週間での僕の振る舞いを見ていて、そっちの方が向いていそうと思ったという事らしい。
今、先生の研究室では大きなプロジェクトが動いている。
今度、その調査にぜひ参加してはどうかと言われた。
二つ返事で行きますと答えた。
どうせ暇だろうし、自然を感じることは好きだから。