救急科研修中のギモンに答えてみた!【1~3】
CQ. 1 高カリウム血症の治療はどうするか?
Ans. 1 原因の除去(特に薬剤性)を行ったうえで、治療開始基準に該当すれば、3つの機序を意識して治療する!
高K血症をきたす薬剤:ACE阻害薬、ARB、スピロノラクトン、NSAIDs、ST合剤など
治療開始基準:K>6.5mEq/L もしくは 心電図変化あり(T波の増高、P波の平坦化・消失、PQ時間の延長)
3つの機序に対応した治療法:
心筋細胞膜電位安定化(グルコン酸カルシウム…カルチコール®️)
細胞内シフト(GI療法…50%Glu40mL+insulin 4U 緩徐にiv or 10%Glu 500mL + Insulin 10U div ※血糖測定を行う)
K排泄促進(ロケルマ®️、フロセミド、透析)
モニタリング:心電図モニター、血中K(静脈血ガスでも評価可能)、血糖値(GI療法)
CQ. 2 くも膜下出血を見逃さずに診断するには?
Ans. 2 幅広い臨床像があることを理解し、Ottawa SAH ルールを参考に除外できなければ、頭部CT評価を行う!
幅広い臨床像:若年でも否定できない、walk-inで受診することもある、頸部痛を呈することもある、一過性意識消失を伴う場合もある、2~8週前に同様の頭痛を経験することがある(sentinel bleeding)
交感神経緊張による心肺合併症:致死的心室性不整脈、たこつぼ心筋症、神経原性肺水腫
Ottawa SAH ルール:
〈前提〉1時間以内に痛みのピークを迎えた頭痛があるが、 神経障害は認めない成人患者
〈内容〉以下6項目のいずれかに当てはまる場合、 頭痛はSAHの可能性があると判定される…40歳以上 頸部痛や項部硬直 意識消失 労作時に発症 雷鳴頭痛 頸部屈曲制限
〈感度・特異度〉感度100%、特異度15.3%
頭部CT評価:頭痛発症から6時間以内の頭部CTは感度ほぼ100%、ただし読影のスキルがあることが条件、発症から時間が経過すると偽陰性が増える→必要に応じてMRI評価もしくは腰椎穿刺の追加を検討する
くも膜下出血と診断したときの初期対応:
降圧(目標:収縮期血圧160未満、ただし頭蓋内圧亢進時の過降圧は脳虚血のリスクになる、ニカルジピン+生食div)
鎮痛・鎮静…アセトアミノフェン、ジアゼパム(セルシン®️)
CQ. 3 急性膵炎の初期対応は?
Ans. 3 重症度判定、補液、鎮痛の3点を意識して対応する!
診断基準:急性の上部腹部痛、膵酵素上昇、画像所見(超音波、CT、MRI)のうち2項目以上をみたし、他疾患を除外したものを急性膵炎と診断する。
重症度判定:ガイドラインでは、入院時・24時間以内・24~48時間以内に行うことが推奨されている。バイタルサイン、血液ガス分析、血液検査(BUN、Cre、LDH、血小板数、Ca、CRP、白血球数)、年齢、造影CTで評価する。急性膵炎の患者を入院させるときには、翌日の検査オーダーも忘れずに行う。
造影CT Grade:炎症の膵外進展度(前腎傍腔、結腸間膜根部、腎下極以遠)、膵臓の造影不領域(膵体部の定義は上腸間膜静脈の左側縁~腹部大動脈の左側縁)で評価する。言い換えれば、炎症の広がりと膵壊死の有無を評価する。
胆石性膵炎:早期のERCPが推奨されている
輸液療法:脱水・循環不全の予防目的で、乳酸リンゲルなどの緩衝液による積極的輸液療法を実施する。緩衝液は、高クロール性の代謝性アシドーシスを招きにくい点で生理食塩水よりも優れる。
鎮痛:アセトアミノフェン、NSAIDs、ペンタゾシンなど。不十分ならオピオイドも考慮する。
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