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花好きのじいちゃん
小学生のとき、家に庭があることは密かな自慢だった。
この庭はいつもじいちゃんが手入れしていて、会社が休みの日には決まって庭へ出て、雑草を抜いたり、花を植え替えたりと楽しそうにしていたのを覚えている。
なかでも私は、じいちゃんに花の名前を教えてもらう時間が好きだった。
「これは?」
「パンジー」
「これは?」
「ボタン」
「これは?」
と矢継ぎ早に聞くものだから、きっと呆れることもあったと思う。でも嫌な顔ひとつせず、にこにこしながら答えてくれたことを残像のように覚えている。
じいちゃんのおかげで、花の名前にほんの少し詳しい自分がうれしかった。誰かに披露することもなく、ただただ自分のなかで「ふふんっ☺️」と思っているだけなんだけれど。それでも、どことなく自分に自信がなかった私にとって、背中を支えてもらっているような存在が心強かった。
晩年は病に倒れ、1年くらい病院での闘病生活が続いた。庭いじりができなくなったじいちゃんは、植物が書いてある塗り絵の本を買っていき、色鉛筆でひたすら塗っていくという趣味を見つけていた。「暇なんよ」と言いつつも、次々と完成していくそれに、子どもながら驚きを隠せない。そんな才能もあったのか、と。
あまりに早く描くものだから、母たちが買い足してお見舞いのときに持っていくほど。「塗り絵」ひとつとっても、じいちゃんは植物を選んでいた。
来月、じいちゃんがこの世を去って17年になる。たぶんとしか言えないけれど、私が自然が好きなのも、いつもおだやかでいたいと思うのも、じいちゃんの姿から受け継いでいる気がする。
なんで花が好きだったのかはもうわからない。あのおだやかさはどこから来ていたのかわからない。それでも、私の中にじいちゃんが息づいていると思うとなんだか力が湧いてくるのです。いつもありがとう。