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再生不良性人間 act3

亢進

3年生になり半年も過ぎると、クラスメイト達同士は勿論のことだが、iともお互いの事をなんとなく理解できるくらいにはなっていた。
少なくとも私はそう感じていたと思う。

この半年間で私を含めた腕白達とiとの間には様々なドラマがあった。
最も大きな出来事は運動会なのは間違いなかった。

この学校は2年に1度、学芸会が催される。
その影響で、通常時は、体育の日に合わせ10月開催なのだが、7月の挙行が伝統だった。

伝統はまだあった。
運動会では、各学年催し物がある。
6年生は組体操、その他の各学年は趣向を凝らしたダンス、と決まっていた。
1年生時はテントウ虫に扮したお手製のコスチュームを纏い舞い、翌年は象に扮して行進をした。
これは毎年、各学年の担任達の話し合いで決める。
低学年は『可愛さ』が重要視されている構成が多いが、高学年になってくると学年によっては『ネタ』的要素が強いことがある。
それは、笑い然り、時事的な流行り然り、各学年の教職員の趣味嗜好が落とし込まれている。
幼心に、「恥ずかしいから自分の学年では、やりたくないな」と思ったことがある。

そんな私の願望は叶うわけもなく、「自称ピチピチの18歳」とか自己紹介する、クセ増し増しのiからしたら格好の演目だった。

『今年はhitomiさんの、LOVE2000という曲で皆さん踊りましょう!』

最初のオリエンテーションでその曲が流された。アイドルだとかに疎かった私でも、どこかで聞いた覚えのある曲だった。
よく夕飯時4チャンネルを付けていた時に聞いたものだった。

色々と合点が一致した。
その曲はプロ野球のナイター中継のイメージソングだった。
それもiの愛する球団の親会社の。
彼女がhitomiのファンであったかどうかは知らないが、純粋にこの曲が好きだから、という理由ではないだろうと小さい脳味噌でも推測できた。
それを確信させたのは、ダンス時の説明があった時だった。

「オレンジ色のタオルを首から巻いてサビの部分では回しましょう!」

校帽の使用色である学校のイメージカラーは藤色だった。
今年のダンスも、学校の伝統をしっかり継承したものだった。

今年は猛烈な暑さの7月だった。

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