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雨と逃避行

こんな時に、こんな状態でそんなことを思うべきではないのだけれど。
僕は初めて篠崎みゅうという人間を見つめることができた気がした。
だから僕は見つめることができた、自分自身に芽生えたこの感情にも。



みゅう、俺は君とずっといる。約束する。



それでもう、君を離さない、君を見捨てない。
君が嫌いな全部を俺も嫌いでいてあげる。





いつか君は言ったよね。俺が遥ねぇのことを抱えてずっとしんどかった時。
その子が生きてたら助けれた分、君が他の人を助けられるような人間になればいいんだって。あの時の君は何も考えずに行ったのかもしれないけど、あの言葉で僕は救われたんだ。
自分みたいな人間が誰かのために生きていいんだと、教えてくれた君の言葉に。僕は救われたんだ。






今でも夢に見るよ、彼女が死ぬ間際の、ゴム人形のように弾け飛ぶ体、鉄臭い血の匂い、生ぬるくドロドロとした液体が手からするりと流れて行く感覚。


あの日も今日みたいな雨の降る日だった








あのね、しの…篠崎みゅう。僕は君に救われていた。
あの日言ってくれたこと、あの日話してくれたこと。その言葉にずっと救われていたんだ。

きっとこの気持ちだって、本物じゃないのかもしれない、ずっと君に僕は遥ねぇを重ねていた。
君を救うことができれば、この罪悪感に行き場ができる気がしてた。

あの悪夢から逃げるために、僕の罪を君に重ねて正当化していた。


あの頃の僕は君がこんなに小さくて、君がこんなに温かいなんて見ることもしなかった、知らなかった。

今ならケジメがつけられるから。
今度は俺が君を助ける番だ。







俺ときて欲しい、二人で宮崎に。









そうして僕らの短い逃亡劇が始まった。

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