"肩"インピンジメントとは?~基礎的な病態と評価~
みなさんこんにちは.
志水です(@echohuku)
4月の記事は
《肩インピンジメント》についてです!
「肩インピンジメント?」「肩峰下インピンジメントじゃなくて❓」
そう思った方は絶対に読んだほうが良いです。
そして、今回はエコーを用いた
肩峰下インピンジメントの評価方法もご紹介しますので
エコーに興味がある方も楽しめる記事になっていると思います😄
話は戻りますが…
『肩インピンジメント』には次の3つがあると言われています[1]
①肩峰下インピンジメント症候群(Subacromial impingement syndrome:SAIS)
②後上方関節内インピンジメント(Posterosuperior impingement:PSI)
③前上方関節内インピンジメント(Anterosuperior impingement:ASI)
①の肩峰下インピンジメントは言わずもがなですよね?というか、多くの方が「肩のインピンジメントといえばコレ」という認識だと思います。
②後上方関節内インピンジメントいわゆる「インターナルインピンジメント」と同義語として用いられているようです。
③前上方関節内インピンジメント、「プーリーリージョン」や「鳥口下インピンジメント」などがここに含まれます。
ということで
肩においてインピンジメントはこれらの3パターンに大別できると思っていますが、その中でも最もメジャーである(たぶんメジャーですよね?)
肩峰下インピンジメントについて,病態→評価→治療の順で記事を書いていきます!
肩峰下インピンジメント"症候群"。
『症候群』
ってなってますよね?
さっきの『肩インピンジメント』といい
なんか言葉遊びみたいに感じるかもしれませんが…
結構これも重要なんです。
というのも症候群って…
症候群(しょうこうぐん、英: syndrome、シンドローム)とは、同時に起きる一連の症候のこと。原因不明ながら共通の病態(自他覚症状・検査所見・画像所見など)を示す患者が多い場合に、そのような症状の集まりに名をつけ扱いやすくしたものである。
出典:wikipedia
とされており
僕等が普段からかかわるところでは
・胸郭出口症候群
・鼠径部痛症候群
・肘部管症候群
などなど.
他にもいろいろあるかと思いますが、症候群と名のつくものがありますよね。
で、これらの症候群っていうのは
・胸郭出口部分で問題が生じる
・鼠径部周辺に痛みが生じる
・肘部管部分で問題が生じる
結果、"さまざま"な症状がでるので症候群という名がついているわけです。
さきほどの症候群の説明では(wikipediaからの引用ですが)原因不明というような記載がありましたが、上述した症候群の中でもある程度解明され、はっきりとコレが問題だろう❗
となっていてるものもあるかと思いますが…
と、症候群についての説明はこれぐらいにして、本題の肩峰下インピンジメント症候群についてのお話を進めます。
この肩峰下インピンジメント症候群っていうのも
《肩峰下でトラブルが起きた結果、症状(痛み)がでる。》
みたいな曖昧な感じとなってしまうと思います?
この辺りをもう少し理解するためにも肩峰下インピンジメント症候群についてもう少し掘り下げてみましょう.
肩峰下インピンジメント症候群の《病態》?
肩峰下って「肩峰の下」だけと思っているかもしれませんが、
・肩峰
・烏口肩峰靭帯
・烏口突起
これらによって構成される
『鳥口肩峰アーチ』の下であるということを認識してください。
そして肩峰下インピンジメント症候群とは
何らかの原因で肩峰下(鳥口肩峰アーチ)と上腕骨頭と間にある組織が衝突や挟み込みを生じる病態の総称である。
とされています。[2]
またこの肩峰下でのトラブルを引き起こす要因としては大きく2つに分類されます
《構造的な破綻》
・肩峰下骨棘形成
・腱板断裂
・石灰沈着
・上方関節唇損傷
《機能低下など》
・腱板の機能不全
・筋の柔軟性低下、短縮
・肩甲帯の機能不全
・不良姿勢
など
が考えられます。
ここで一度
肩峰下インピンジメント症候群について簡単にまとめると
鳥口肩峰アーチ下にある組織の構造的な問題や肩周辺組織の機能低下などにより肩峰下で組織が挟まるor衝突する症候群
ということです。
ここでわかるように
肩峰下インピンジメントは
特定の病態を示すわけでなく、同じ診断名でも異なる病態が存在、もしくは複数存在することを考慮しなければいけません。
例えば
□腱板断裂+腱板機能不全+骨頭上方化
□関節包の肥厚+不良姿勢+肩甲帯機能不全
このように多くの要素が絡み合って症状が出現していることは
臨床上よくあるといっても過言では無いかと思います。
では次に
《評価》についてです
肩峰下インピンジメント症候群の《評価:整形テスト》
ここで一つ論文を紹介します
ÇALIŞ, らは肩峰下インピンジメント症候群患者における臨床診断検査の診断的価値を検討することを目的に以下のテストを行いました。
・Neer test
・Hawkins-kennedy test
・Horizontal Adduction test
・Painful arc sign
・speed test
・Yergason test
・Drop arm test
その際
感度・特異度・陽性適中率・陰性適中率を算出しましたが、結果は以下です。
Neer test
https://youtu.be/nNyax0iocZo
感度:88.7%
特異度:30.5%
陽性適中率:75.9%
陰性適中率:52.3%
Hawkins-Kennedy test
https://youtu.be/X9YiuvQJVJc
感度:92.1%
特異度:25%
陽性適中率:75.2%
陰性適中率:56.2%
Horizontal Adduction test
https://youtu.be/DKLvt816x6o
感度:82.0%
特異度:27.7%
陽性適中率:73.7%
陰性適中率:38.4%
Painful arc sign
https://youtu.be/engHP9OA92U
感度:82.0%
特異度:27.7%
陽性適中率:73.7%
陰性適中率:38.4%
Speed test
https://youtu.be/gbG_O9Gv8aQ
感度:68.5%
特異度:55.5%
陽性適中率:79.2%
陰性適中率:41.6%
Yergason test
https://www.youtube.com/watch?v=_Cjahul5yuI
感度:37.0%
特異度:86.1%
陽性適中率:86.8%
陰性適中率:35.6%
Drop arm test
https://www.youtube.com/watch?v=JXgRBeqToik&t=25s
感度:7.8%
特異度:97.2%
陽性適中率:87.5%
陰性適中率:29.9%
参考:ÇALIŞ, Mustafa, et al. Diagnostic values of clinical diagnostic tests in subacromial impingement syndrome. Annals of the rheumatic diseases, 2000, 59.1: 44-47.
そして、これを用いて
肩峰下インピンジメント症候群の臨床診断検査の有用を検討しました。
するとこれらの結果が示唆されました。
7項目が陽性
徒手検査全てが陽性となると肩峰下インピンジメントの可能性➯80.0%
6項目が陽性
肩峰下インピンジメント症候群の可能性は➯87.0%
5項目が陽性
肩峰下インピンジメント症候群の可能性は➯87.1.%
4項目が陽性
肩峰下インピンジメント症候群の可能性は➯83.7%
3項目が陽性
肩峰下インピンジメント症候群の可能性は➯78.9%
※ここでは感度を記載しています
これ見て
「3項目以上陽性になると約80%の確率で肩峰下インジメント症候群だ!」
って思って使うと岡先生に怒られます(・ω・)
「え?わけわからん。」
と思った方は、以前の岡先生の記事を何度も読み返してください❗
《肩&肘関節への『臨床精度』の考え方》
《肩&肘関節への『臨床精度』の考え方 続編》
ちなみに僕は熟読しました😆
あくまでもこれはRule Outに適していることになるので、除外診断に有用にはなりそうと考えて下さい。
で、これらの評価はエコーがない状態で有用になるものかと思いますが
エコーを臨床で使っていればさらに一段回上の評価が可能となります。
では、実際の症例を交えてエコー動画を見ていきましょう。
肩峰下インピンジメント症候群の《評価:エコー》
今回は次のパターンのインピンジメントをご紹介します。
プローブの置く位置はこんな感じで、画像はこのように描出されます
で、今回紹介する動画のパターンはこれです👇
①腱板断端部が肩峰下へと挟み込まれる
②大結節(骨頭)が肩峰下へと衝突する
が、その前に
腱板断裂所見に関して簡単に説明させていただきます。
この脂肪層の形状によって腱板断裂の"有無"を判断ができます。
(他にもありますが、ココでは割愛します。)
そして異常なパターンはこちらです👇
こう見ると"一目瞭然"ですよね?
ここから先は
実践!ゼロから学べる肩肘の臨床
本noteマガジンはベテランの肩肘治療のスペシャリスト(理学療法士)4名が肩肘の治療特化した機能解剖・評価・治療などを実践に生きる知識・技…
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