【覚書】【不動産登記】同一性を証する書面
今回は登記に関する覚書です。
司法書士や土地家屋調査士の人以外には参考にならないかもしれません。。。
・同一性を証する書面とは?
同一性を証する書面とは、簡潔に言えば「Aさんが本当にAさんであることを証明する書類」のことです。「なりすましの可能性を除外する書類」と言い換えてもいいかもしれません。
・どんな時に使うの?
イメージしやすいのは所有者の住所変更の登記です。
法務局職員は同姓同名によるなりすましを警戒します。よって、登記簿上の住所がX市とされる氏名Aさんがいたとして、新住所がY市であるという住所変更登記では、「旧住所がX市であったこと」を確認することが原則です。しかし、総務省のせいで住民票や戸籍の附票は保存期間が短いため、原則どおりの処理ができないことが多々あります。そんなときに権利書を添付することで、「『旧住所がX市であったこと』は証明できないけど『私が登記されているAに間違いありませんよ』」という釈明をするのが、「同一性を証する書面」と呼ばれるものです。
・同一性を証する書面をよく使う3パターンと、何を使うか
1.住所移転の登記
住所移転の登記では明確な通達がありますので、
①住民票(無ければ仕方ない) and
②戸籍の附票(無ければ仕方ない) and
③権利書
が同一性を証する書面です。③が紛失している場合には固定資産税の課税通知書を代替とすることが一般的かと思います(勝訴した判例があるため)。従来は不在住証明や上申書を添付することが通例でしたが、住所移転で不在住証明等を求める登記官は私の周りにはいません。
2.相続の登記
相続の登記の被相続人の同一性を証する書面も通達があるのですが、分かりにくい通達のため解釈が分かれています。
考え方A ①住民票 or
②戸籍の附票 or
③権利書
考え方B ①住民票(無ければ仕方ない) and
②戸籍の附票(無ければ仕方ない) and
③権利書
通達を読むとAの解釈で正しいと私は思っているのですが、住所移転の登記と同様に考えてBの考え方を取る人もいます。
なお、③も紛失した場合の代替書類についてですが、住所移転の登記と同様に考えるのは正当では無く、例えばBからAへの相続登記であれば、宛名が「相続人A 様(被相続人B様の相続人)」といった記載がある場合には用いることができ、単に「A 様」と記載された通知書であれば従前どおり不在住証明が必要と考えます。(私は上申書否定派です、登記申請により上申の意思は明らかと考えます。)
3.滅失等の表示の登記
滅失等の登記については実地調査により確認できるため、基準としては最も緩い相続の登記の「考え方A」に基づくのが正当と考えます。ただ、滅失登記の場合は特殊事例があり、というのも、数年前に解体している不動産については、「①②住民票・戸籍の附票廃棄済み、③権利書紛失、③課税通知書送付されず」という事例がわずかながら存在します。この場合にどうするかについては先例がありませんが、登記官から見れば不在住証明を求めたくなる事案なのかと思います。
同一性を証する書面については様々な意見があり、法務局と資格者代理人との間でバトルが勃発することも多くあります。私の周囲の意見を集約したのが本覚書なのですが、他の意見がありましたらお聞かせいただきたいと思います。